【日本の活力を再生する】地域自治の未来2 ~集団ネットワーク~
前回の記事(【日本の活力を再生する】地域自治の未来① ~地域自治の源流~ – 日本を守るのに右も左もない (nihon-syakai.net))で、地域自治の源流を遡り、日本人特有の集団意識の形成と共同体性は縄文時代から現代まで引き継がれており、さらに、集団形成においては単一集団の統合ではなく、集団間のネットワークで維持・形成されてきたことが見えてきました。
今回の、この縄文時代から受け継がれてきた「集団ネットワーク」に着目して、現代そして未来の地域自治の実現基盤を探っていきたいと思います。
■地域自治の源流に見る、集団間のネットワーク
縄文時代から形成されてきた、集団ネットワークですが、現代のようなインフラが整備されていなかった時代に、何を目的としどのようにお互いが繋がっていたのでしょうか。
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<縄文人のネットワークとムラの形態(https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=348485)>
■日本列島全域に張り巡らされていた集落間のネットワーク
(中略)縄文時代の遺跡から発掘されるものの中には、その土地では採れない特産物がたくさんあります。たとえば北海道で、(生息していないはずの)イノシシの骨が大量に出土したり、秋田産のアスファルトや岩手産のコハクが青森県の三内丸山遺跡で出土したり、鹿児島本土の土器が沖縄で見つかったり。これは、縄文人が日本列島を縦横無尽に移動し、旅をしていたことの証拠でもあります。
日本列島史上はじめて定住生活を成し遂げた縄文人は、地元への帰属意識とともに、他所の集落との関係性を強固にすることで、どこで暮らしたとしても不便ない生活を送ることができたのです。
(中略)
■お土産文化の起源? 縄文時代の「贈与経済」とは
現在、世界を動かしている経済システムは、「市場経済」といいます。市場経済では、商品が生産者から切り離された市場(しじょう)に出され、同等の対価を支払うことでモノが流通していきます。(中略)
一方、縄文人の採っていたと考えられるシステムは、「贈与経済」といいます。これは、世界の様々な民族に最近まで見られたシステムで、モノが人から人への「贈り物」や「お土産」によって流通するのです。贈与経済において、「商品」の対価として支払われるものは、強いて言えば「仲間意識」です。
(中略)贈与されるものは、ただの「モノ」ではなく、集落間の強固な関係を作っていくための大切な「お土産」であり、人から人への思いやりを形にした「贈り物」なのです。
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縄文時代に醸成されたネットワークの意識は、その後、鎌倉から戦国時代に形成された惣村において「自治」意識を根付かせます。
それまで個人でバラバラだった徴税を村単位で納める方式(村請)としたことで、共同体性を再生し、お上の圧政が続くと惣村同志が有事につながる「与力」の村を作り出しました。
社会が混沌とし、外圧が高まる中で、日本人は縄文時代に築いた集団意識を可能性の基盤に、「自治」集団を形成し集団間の連携を 高めてきたことが見えてきます。
縄文時代に形成された強力で広域に及ぶ集団ネットワークの意識が、現代我々に根付く、「地元」「地域」に感じる「つながり」欠乏の底流を形成しているのではないでしょうか。
そして、何よりこの自治集団を形成していくにあたって、重要な認識が「贈与」という行為。
<黒曜石に始まり、水晶、土器、塩、貴重なものがいくつもの集団を渡って長距離に流れた。縄文時代のネットワークの根底に互いの集団間の緊張圧力、戦争圧力を緩和する贈与というシステムがある。その集団にとって最も貴重なものを贈り合うというのが贈与の始まりだが、それが集団間の技術を高め、曳いては縄文時代の高い土器技術の創造に繋がった。>
(https://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=600&t=6&k=0&m=298772)
自分たちの「余剰の生産物」を流す現代の流通意識とは違い、自分たちにとって大事なものを贈りあうことで、集団間の緊張圧力を緩和し、同時に追求関係を築いてきた社会が縄文時代から形成されてきたことが日本人特有の可能性基盤ともいえます。
現代における、企業間の共創活動や異業種間のイノベーションなども、グローバル経済の中で勝っていくための戦略という視点もありますが、今一度日本人の縄文体質や集団ネットワークの本源に立ち戻って見直すことで、日本人らしい追求関係を築くことができるのではないでしょうか。
行き詰った社会の中で、集団同士の「贈与」の意識を元に、集団と集団が信頼と信認関係を元に、自社(自集団)の強み(持てる技術と認識)を贈りあう(共有する)ことで、新たな「自治意識」を再生する。現代はそんな可能性を秘めた時代だと思います。
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