2009年01月01日

’09年、変わらない統合階級と変わり始めた大衆との断層

『内田樹の研究室』「100年に一度の危機らしいけど」からの引用。先日も「女たちが消費社会から共認社会への転換を始めた」で引用させていただいたが、内田樹氏の記事は切り口が面白い。
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今年の漢字(というイベントはいつから始まったのかしら)は「変」だそうである。
「変」が「あなた、変よ!」という意味の「変」なら、私も同感である。ただ、「変」が「変化」ということを意味しているとしたら、私はそれにはあまり同感できない。
世間のみなさまは(本邦の総理大臣も)「100年に一度の危機」というような言葉を軽々にお使いになるが、ほんとうに「100年の一度」というような地殻変動的社会構造の崩落現象が起きているとご当人が思っているなら、もう少し「これまでとは違う」対応をされているはずであるし、言葉づかいもずいぶん違ってよいはずである。
でも、私の目には「まったくいつもと同じ」ようにしか見えない。
ボーナスが減りそうだから買い控えをする。売り上げが減ったので非正規労働者を馘首する。貸し剥がしをする。ばらまき財政出動をする。
どれも見慣れた風景である。数年前にも見た覚えがある。
この風景のどこが「100年に一度」なのか、誰か教えていただきたい。

この事実から演繹できる可能性は二つである。
一つは「今起きている変化は『100年に一度の危機』などではなく、『よくある危機』にすぎない」
もう一つは「今起きている変化は『100年に一度の危機』なのであるが、みんなどうしていいかわからないので、『よくある危機』のときと同じようなルーティン的な対応をしている」
前者であれば、別に浮き足立つ必要はない。
後者であれば、いよいよ浮き足だってはならない。
腹を据えて、いったい何が起きているのか。被害はどの程度で、このあとどこまで拡がるのか。使えるリソースは何が残っているのか。それをどのように分配するのか。誰がその「さじ加減」を按分するのか。その適切性とフェアネスはどのように担保されるのか・・・といった一連の問題が考察されなければならないはずである。

しかるに、私が見るところ、そのような仕事はいま我が国要路の人々はどなたもなされていない。
少なくとも、そのような仕事が必要であるということは誰もアナウンスしていない。
総理大臣は解散総選挙もしないし、挙国一致的な救国政権を作る気もなさそうである。
「このまま居座る」というのは「この危機は『いつものルーティン』によって処理するのが最適である」という政治判断をすでに彼が下しているということである。
それは彼が被害評価を「きわめて軽微」と理解しているということを意味している。
しつこく言わせてもらえるけれど、「『100年に一度の危機』なので、いつも通りに処理します」という命題は誰が読んでも論理矛盾をきたしている。
このような論理矛盾を犯して平然としている政治指導者を頂いている国は知的にはかなり危機的な水準にあると判断してよろしいであろう。

というわけで、私は「今起きている変化は『100年に一度の危機』なのであるが、みんなどうしていいかわからないので、『よくある危機』のときと同じようなルーティン的な対応をしている」というふうに現状を理解することにしている。
ほんとうに日本国民のみなさんが「100年に一度の危機」だと思っているなら、同胞諸君は個人金融資産1500兆円の一部なりとも今このときに吐き出して、企業を救い、馘首される労働者たちに雇用を確保すべきではないのか。企業は下請けの切り捨てとか雇用調整というような「いつも通りの対策」とは違う手だてを考え始めるべきではないのか。
そういう「いつもと違うこと」をするのが「変化」ということではないのか。

「100年に一度の危機なのに、どうしていいかわからないのでルーティン的対応をしている」という内田樹氏の指摘は尤もである。
どうしていいかわからないのは、答えがないからである。
『るいネット』「答えがないので、課題捨象」「全てのネックは答えを出せないという一点にある」
今回の金融危機を契機に私権原理が終焉する、つまり過去5000年の文明史を覆す大転換が始まった。私権時代という狭い枠組みの中で獲得されてきた知識や理論では、とうてい突破口は見つけられない。そんな古い理論や思想にしがみついているから政治家も官僚もマスコミも答えが見出せずにどうしていいかわからないのである。
転換期とは定型課題(既知課題)は減る一方で、非定型課題(未明課題)が増える一方ということだ。にもかかわらず、政治家・官僚・マスコミがやっていることは何か?
これまでの定型課題の繰り返しである。

政治家や官僚は、不況になったら景気対策⇒財政出動であり、マスコミは政治家や官僚批判。これは定型課題そのものではないのか。
未明課題に対して定型課題を繰り返すということは、思考停止そのもの(無能の極み)である。これは日本だけではない。アメリカのオバマ新大統領も「CHANGE」と叫ぶ割には、打ち出す政策はこれまでと何ら変わりがない。
こう考えるしかないだろう。彼ら統合階級は口では「改革」や「CHANGE」と叫びながら、実は変化など望んでいないのだ。それは彼らにとって社会よりも自らの保身が大事だからである。本当に変化しようとすれば、彼らが依拠する旧観念が無効であること、彼ら自身が無能の極みであることを認め、その特権的身分を手放すことになるからだ。
それに対して、国民は「変化」こそ口にはしないが、行動を静かに、かつ急スピードで変化させている。
「小学生の子を持つ親の意識変化~私立中学受験バブルの終焉」
「女たちが消費社会から共認社会への転換を始めた」
口では「変化」を叫びながらその実、保身第一(御身大事)で変化を望まない統合階級と、無言のうちに変異行動を開始した大衆との断層がますます大きくなっていく。これが2009年の意識潮流の基調であろう。
(本郷猛)
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List    投稿者 hongou | 2009-01-01 | Posted in 12.現代意識潮流12 Comments » 

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コメント12件

 ようこそイサオプロダクトワールドへisao-pw | 2009.04.03 23:46

ミサイル迎撃騒動の茶番劇!

★ミサイル迎撃騒動の茶番劇!画像はクリックで拡大します。米軍が有効性を疑う開発途

 のだおじさん | 2009.04.04 20:54

>市場原理に絡め取られてしまうことで、みんなが求めている課題を共認し合う関係(=協働関係)を構築できない
それ以上に、みんなが答えを求め集まっていることに無自覚であり、誰も答えを持っていないことも大きな要因では。
不安だから集まるのは、本能的な行動だから、不安を解消できる答えを求めていることに気付かないまま集まっているだけでも一定の充足があり、そこにとどまってしまっている。

 にっしん | 2009.04.04 22:25

今までにない潮流をいくつか上げるとすると、
“事実収束”と“人収束”
“事実収束”は、例えば、
マスコミの凋落ぶり、特に捏造や偏向報道に対する反感やマスコミ離れから伺える。
Q&Aなども、かなり内容の濃い回答が寄せられていることからも、事実を知りたい=事実を追求・探索している人が増えている。
“人収束”は、例えば、旧いところではメルトモ、少し前(今も健在?)ならプロフ。今流行りなのが、リアル。
傍目からみると殆ど中身の無い会話のように思えるが、盛んに送受信されている。
人との繋がりや反応充足を求めている。
認識収束⇒認識仲間へと顕在化する潮流は高まっている。
しかし、書かれているように“壁”がある。
(この壁は薄いかもしれないし、まだまだ厚いかも知れない。)
いかに、顕在化させられるかが“カギ”になる。
例えば、
欠乏=何を求めているのか、はっきりと言葉化出来ると顕在化するのだが、そこが曖昧。
“共に分かり合いたい、認め合いたいという共認充足を求めている。そしてその可能性は開かれている”と認識できるか否か。
“事実”を知ってどうするか?
「いかに、みんなの役に立てられるか?」という意識に向かうことが出来れば、その為には、断片的な事実だけではダメで、事実を構造化していくことが必要=認識の必要に気付く。若しくは、“答え”=新しい認識が与えられて、役に立ったという実感、充足が感じられるようになると、顕在化しやすくなる。
“答え”の供給が大事になってくる。
そして、“答え”は一人では出せないので、協働者が必要になってくる。

 SuzumotoJin | 2009.04.04 22:48

あなたのおっしゃられることは、よくわかります。
現代、独り者の男性ならば、年収100万円で生活できます。
京都在住の、私の例です。
家賃4万7千500円×12+9万5000円(保証金)=66万5000円
食費他1000円@1日×365=36万5000円
計、103万円。
この他に必要なのは、医療・教育・エンターテイメントです。
この三者を、コミュニティーによって質高く受け取ることができれば、現在の日本では年収100万円で快適に暮らすことができます。
おそらく日本人は、それを見抜いています。
だから、コミュニティーサイトが栄え、貨幣経済が不況なのです。
いったいコミュニティーを、貨幣経済に乗せるべきだろうか?
私は、その展望に未来があるとは、思えません。
しかし、貨幣経済は、必要です。
人間の力を結集してイノベーションを作り出すためには、貨幣経済なしではたぶん無理です。貨幣経済なしでイノベーションを行おうとしたソ連は、第二次大戦前後の野蛮時代ならばうまく行ったが、成熟したブレジネフ時代になって、失墜しました。
だから、人の充足を得る場として安上がりのコミュニティーがあり、他方で貨幣経済を沸き立たせるイノベーションの場が、今後の不況脱出にはあるべきだと思います。
私は、それは東北アジア経済共同体以外にないと、思います。
日韓トンネル。
地域共同通貨。
域内での営業活動の、段階的な自由化。
日本人のコミュニティーの輪が、ぐんと広がることでしょう。その上、経済が活況を呈することは、間違いありません。

 スズムシ | 2009.04.05 1:03

>のだおじだん
>みんなが答えを求め集まっていることに無自覚
確かにみんなが答えを求めているという感覚が無いのが、コミュニティーサイトがネットワークとして認識されていかないことに繋がっていると思います。認識仲間を作るための自発的なネットワーク作りが課題になるのではないかと考えています。

 スズムシ | 2009.04.05 1:20

>にっしんさん
今の社会不全は恒常的にかかる外圧なので、それに対する場も当然常に必要とされている。となると一緒に考える場があれば、みんながそこへ収束していき、課題共認が生まれる。こうなれば認識仲間収束も加速していく。
今、“仲間”と認識するための仕組みが足りないのではないかと考えています。

 スズムシ | 2009.04.05 1:31

>SuzumotoJinさん
東アジアで共通通貨という案を唱えている学者もいるので可能性の一つだと思っています。しかし、一方で今回の金融危機はただの不況という次元を超えていて、単純に経済圏を拡大するという旧い手法では立ち行かないレベルの危機だと考えています。
となると、今みんなが集まるネットコミュニティーを使って、今後の経済政策などよりたくさんの人の手で新しい方向性の模索するのには言いタイミングだと思います。
そんなサイトを立ち上げれば両方の欠乏を充たせる仕組みが作れるのではないでしょうか?

 社員と共に歩む日本型経営 | 2009.04.05 5:33

政治と文化

自分は自分なりに色々な文献を読み、今の日本の政治に関して思う事を書きます。実際私は、麻生支持、政権交代支持という変な人間なので、政権交代支持のブログに行く…

 SuzumotoJin | 2009.04.06 20:15

>スズムシさん
まさに、あなたのおっしゃるとおりです。
私はコメントで経済についてだけ焦点を絞って書きましたが、私が韓国・台湾・香港を回り、その土地の人々との交流を積み重ねて痛感したことは、「この地域の人たちとは、直感的なレベルで分かり合えることが、あまりに多すぎる」というものでした。
ゆえに、東北アジア経済共同体は私の持論なのですが、私が予感しているその効果は、ただに投資活動の活発化だけにとどまることなく、それぞれの地域の住民がヒトの交流を活発化させることを通じて、人間としての品格とでもいうべきメンタリティーを向上させることができるのでないだろうか、ということなのです。
似ているが、違う点のある文化を担った民ともっともっと接触する機会が与えられれば、ヒトはより自分の立場に対して反省する機会を得られるし、自分という民族に対する特殊な点に対する反省と、他方で美徳である点に対する自覚と自信を得られる道に、つながるのでないかと、私は思っているのです。
私は、不特定多数の参加者の意見を結集するようなサイトを作ったことが、いまだありません。
だから、どのようにして今は単なる私の個人的意見にすぎないものを、他人との議論を通じてより広い視野をもった説得力ある主張に変えていくかの戦略は、模索段階です。
とにかく、早急に試みたいと思います。
ありがとうございました。

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