2010年03月27日

潮流1~共認原理と私権原理~

当ブログの目的は、次代の新たな可能性を探り、今何をなすべきかを見定めることにある。今、社会は全面閉塞に陥り、誰もが「出口が見えない」「答えが欲しい」と必死に突破口を探している。つまり、誰もが目標を見失って、答えを探しており、それは、もはや自分だけの課題ではなく、みんなに共通の普遍的な課題になってきている。実際、家庭も、学校も、企業も、国家も、それぞれに深刻な問題を抱えて行き詰まり、今や目標を失ってフラフラと迷走しているだけである。混迷する社会はどこに向かおうとしているのか?
このシリーズでは、るいネットの投稿である「潮流」シリーズを題材にしてそれを探っていきたい。
集団や社会にはその固有の成立構造がある。今、社会はどのように変わろうとしているのか、それを探るためには、集団や社会がそもそもいかなる構造において成立(統合)しているのかを、まず知らねばならない。
その観点から、シリーズ第1回目の今回は、人類社会の統合原理である共認原理と序列原理について、まずは明らかにしてゆきたい。
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(写真はfrickrさんからお借りしました。)
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人類500万年を貫く統合原理は、共認原理である。事実、人類は500万年に亘って課題を共認し、役割を共認し、あるいは規範や評価を共認して存続してきた。そして、個体(の意識)や集団や社会は、人々が、それらの共認内容に強く収束することによって、統合されてきた。又、そこでは、集団を破壊する自我や性闘争は、永い間、封印されてきた。
(注:この共認収束→共認統合を可能にした共認機能は、サル時代に形成された機能である。従って、正確にはこの共認原理は霊長類3000万年を貫く統合原理である。詳しくは、実現論・前史実現論1_4_01を参照。)


共認原理とは、人類固有の統合原理である。
人類は500万年間、課題や役割や規範や評価を共に認め合うことで、集団を統合し、厳しい自然外圧を突破してきた。後述するように、動物(とりわけ哺乳類)に顕著な集団の統合原理は本能原理でもある「序列原理」(強いものが弱いものを従える)である。
では、なぜ人類は共認原理で統合されてきたのか?
それは、人類は本能では到底生き抜くことのできない、極めて弱体な生き物だったからである。素手の人類は、強い牙も野をすばやく駆け抜ける脚力をも持たない、小動物の狸にさえ勝つことのできない存在である。実際人類は約1万年前まで洞窟という住居としては最悪の環境に隠れ住むしかなかった。原始人類の人骨の化石などによれば、極度の栄養不足の状態にあったことも観測されている。そのような過酷な状態に常時晒されたが故に、人類は本能に代わる新たな機能である、共認機能を武器にして生きてゆくしかなかった。
共認機能とは相手に同化することで充足を感じる機能である。つまり相手の感情や気持ちを(自らの心情と照らし合わせて)読み取ることのできる機能である。人類はこの相手の心を読み取る機能をフルに駆使して、(みんなの表情や反応を羅針盤としながら)、課題や役割や規範を仲間と共有することで、始めて生き延びてこれたのである。もちろん言語はその最先端に生まれた機能である。
この共認原理で統合された時代が、いわゆる「原始共同体」の時代であるが、この時代は集団の成員の中に、地位や身分などの社会階級の差は見られない。
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しかし、1万数千年前頃から人口が増大し始め、それにつれて集団間の軋轢も増大してゆく。やがて、その緊張状況に対応して、人々は自集団を正当化する守護神信仰に強く収束してゆく。こうして集団的自我が発現し、永い封印が解かれてゆく。そして遂に6000年前頃、乾燥と飢餓を契機として略奪闘争が開始され、玉突き的に世界中に伝播していった。こうして、5000年前頃には、人類最初の武力支配国家が成立する。(注:日本は1800年前頃で、はるかに遅い=権力支配の期間が短い。)


この「共認原理」で統合された集団(社会)は、約6000年前に発生した略奪闘争(戦争)によって大きな転換に直面する。そしていわゆる「文明時代」に突入するが、それは同時にことごとく武力支配の時代でもある。

力の原理に貫かれたこの社会は、序列原理によって統合される。それが身分制度である。この力の序列原理は、性闘争を止揚する統合原理で、哺乳類やサルに一般に見られる統合様式である。しかし、人類社会は、力の原理だけで統合される訳ではない。力の序列は極めて不安定であり、すぐに崩壊する。人類社会は、人々が力の序列を共認し、それを言葉化した「身分」を共認することによって、はじめて安定的に統合される。つまり、この社会は、力の原理を追共認することによって秩序化されている。


「序列原理」とは、先述したように「本能原理」でもある。それは同類間の戦いを秩序化する仕組みであるが、その構造をやや詳しく見てゆく。
動物における同類間の闘争の代表は性闘争である。性闘争は異性の獲得をめぐる戦いを指し、とりわけ哺乳類においては、メスの獲得をめぐるオス同士の激しい戦いが繰り広げられる。この戦いは時折お互いが血みどろになるほどに激しいものであるが、殺しあうまで戦ったのでは、種が絶滅してしまうため、ある程度戦って力の下が歴然とすれば、敗けたオスは頭を垂れるなどのサインを出して、勝ったオスに従うという「敗従本能」を付帯させている。このようなオス同士の勝ち抜き戦によって、オス間には1番から末尾までの序列が形成されこのオス間の序列によって集団が統合されている。
人類の武力支配も(武力闘争の勝ち抜き戦を軸にした)この「序列原理」を下敷きにしているが、これは言葉を代えれば徹底した「力の原理」でもある。
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しかし、序列原理は本能に基づいたものではあるが、必ずしも安定的なものではない。というのは、本能的な力は、(たとえば若オスの成長などによって)その序列は必ず逆転するからである。人類の場合も、本能原理だけでは、戦いが永遠に続くので、安定秩序を求める秩序収束の原理から、身分序列を共認し、その力の源となる「お家」=土地や家臣の世襲を共認するという身分制度を共認することによって初めて安定秩序が保つ方向に歴史は収束していく。このようにして、世界中(中国、印度、西アジアなど)で武力による身分支配の国家が例外なく登場することになる。

この序列社会では、当然、力に応じた私権(私有権)が共認される。そして、私有権が共認されると、社会の全ての物財は(女も含めて)悉く私有の対象となり、人々は私権を確保しなければ生きてゆけなくなる。つまり、私権の共認は、否も応もない私権の強制圧力を生み出し、万人を私権追求の主体に改造してゆく。
実際、この序列社会の活力源は、女や財や身分を追い求める私権欠乏であり、誰もが私権を求めて争う私権闘争である。
従って、序列統合の社会は、誰もが私権(の獲得)に収束することによって統合された、私権統合の社会であると云い換えることもできる。


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この序列統合は、近代はもとより、現在もなおその力を残存させている。
近代はこの序列統合(身分支配)からあたかも解放されたかのように、教科書には書かれている。しかし身分支配の核をなしているのは、世襲される私権の継承にある。
>封建時代といえども100年単位で見れば、常に政権交代は存在し、旧王朝の力によって保証されていた身分などは政権交代が起これば直ちに消滅してしまうこと(つまり事実として末代固定ではないこと)。
そして何よりも、近代以降も身分制度を形成する、力のヒエラルキーの礎である、資産の相続は完全に認められており、この財宝や金は、王朝や政権が変わろうとも、継承され続けること。そして、現にヨーロッパ貴族は数百年に亘ってその資産を継承し、現在でも公然、隠然たる力を持って世界を差配していること。また日本においても2世議員が多数を占める事態が象徴するように、現在も「力」は継承されていること(確かに相続税という制度は存在するが、これをほとんど無効化してしまう「抜け道」はいくらでも存在する。)『「近代は身分支配から解放された時代」という嘘』

つまり、近代は基本的に「序列統合」の時代であり、(今後のエントリーで詳述するように)先進国から貧困がほぼ消滅する1970年くらいまでは社会は「序列統合」によって秩序化されていたのである。
【最後のまとめ】
現在先進国は貧困の消滅によって、私権(地位や身分)を求める活力が衰弱し、それまでの序列統合は崩壊過程に入ってゆく。現在は序列統合から共認統合への転換の過渡期と大きくは捉えることができる。そのことを第2回以降の「潮流シリーズ」で詳しく見てゆきたい。

List    投稿者 kuwamura | 2010-03-27 | Posted in 12.現代意識潮流3 Comments » 

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コメント3件

 Vegetal Vigra カプセル | 2010.11.16 17:33

中国は日本の敵ではありません。

 超級脂肪燃焼弾 | 2011.03.31 18:40

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