2010年06月23日

統合機運と統合観念の母胎は新しい男女共認⇒旧パラダイム(鳩山・小沢)の限界

2010年6月9日の記事「共認原理実現のカギは、女の肯定性、充足性にあり」は、社会をどう統合するかという課題と無縁ではない。男女関係こそが、社会の最基底部にあるからだ。
ということは、社会統合機運も新しい社会統合観念も、やはり(新しい)男女関係を母胎として登場するのではないだろうか? この切り口でまず、歴史的な社会統合観念がどうであったかを改めて整理してみる。
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「統合機運の基盤~十字軍によって開かれたパンドラの箱=性的自我」で述べたように、近代思想の原点はヨーロッパにおける新しい男女関係(恋愛)である。

1096年十字軍遠征の掠奪による市場の持続的拡大が始まったのとほぼ同時に、性的自我を美化する恋愛観念が登場し、急速に広まった。このことは、十字軍遠征を契機として、中世キリスト教の面従腹背⇒自我・私権収束へ、性的自我の抑止⇒性的自我の称揚へとパラダイムへと急速に転換したことを意味している。十字軍遠征が性的自我のスイッチを入れたとも言える。
そして、恋愛観念が都市を中心として急速に拡がってゆく。そして、14世紀になると、性的自我⇒恋愛至上主義の主体である個人を原点とする思想が登場する。ルネサンスのヒューマニストたちによる「人間性の回復」や「個人の自由」である。

それに限らず、歴史上の社会統合観念(古代宗教)も、男女関係を母胎として登場したのではないだろうか。
例えば、それまで母系であった遊牧部族の父系転換を契機として自集団の正当化観念(守護神信仰や国造り神話)が生まれた。「自我⇒否定⇒私権意識の成立構造~自我の原点は個人自我ではなく集団自我」より引用。

私権意識の登場構造⇒その原因である掠奪闘争の始まりを解明する。
掠奪闘争は遊牧部族発だが、他の採集部族が単一集団=それそのものが社会であるのに対して、遊牧部族は羊を連れて小集団で独立して移動する生産様式であり、拠点集団とそれから離れて遠征する遊牧部隊から成る複層社会を形成する。複層社会の遊牧部族では、単一集団では生起しない集団間の相対比較→相対意識が生まれる(ex.あの集団には羊が多い)。この遊牧部族の集団間の相対意識が、集団自我→他集団否定の母胎(卵)となったと考えられる。
そして、この相対意識が蓄積された上で、娘移籍の婚姻様式が始まる。遠征生活する遊牧部隊は男だけの集団で、かつ滅多に拠点集団に戻らないので、拠点集団から遊牧部隊に娘たちを移籍するようになり、人工的な父系集団が形成されたのだ(遊牧ではその生産様式が婚姻制度を規定している。)ここで移籍した女たちの性的自我→否定意識→私権意識が顕在化し、それが遊牧部族の男たちにただちに転写される。そうなると自集団を正当化する観念が形成され、集団全体がそれに収束する。そうなると、他集団否定(自集団のためなら、よそ者は殺してもいい)という理屈は簡単に成立する。
これが遊牧部族の集団自我→否定意識→私権意識の登場過程であると考えられる。

また、同じ遊牧部族でも(例外的に)母系であったアラブでも、私有権の父系相続への転換がイスラム教登場の契機になっているようだ。
『知られざる人類婚姻史と共同体社会』「アラビアの女性」によれば、7世紀遊牧社会が市場化に巻き込まれ、イスラム教が登場する以前は、アラブは母系遊牧社会であったようである。。

イスラム社会では女性の地位が極端に低いとみなされがちであるが、かならずしもそうとはいえない。昔のアラビアでは、古来母系的傾向が強かったという記録がある。
7世紀に入ると、それまでの遊牧経済の多くが定住経済に移行し、メッカにみられるように、都市的商業社会が飛躍的に膨張した。これに伴って母系的な部族財産共有体は崩壊し、私有財産観念がみられるようになった。母系集団の共有財産管理権は私有財産の所有権となり、相続権は父系をたどることになった。
こうして、メッカなどの都市では父系社会への移行が急速に進み、貧富の格差も増大した。

さらに、「試験エリートは無能⇒10年後には社会統合気運」でも述べられているが、部族連合国家から統一国家への統合過程における社会統合機運をキャッチして作り上げられた社会統合観念が古代宗教であるが、それは同時に、私有婚⇒(男の)私有権⇒私権統合社会の確立過程であり、男原理(私権原理)の確立過程でもあった。
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インダス遺跡の発掘物
写真はこちらからお借りしました。
『永井俊哉ドットコム』「男社会はいかにして成立したのか」より引用。

中国は有史以来、男尊女卑の国となったが、5000年前の長江文明では、女性墓に副葬品が多く、女性上位の社会であったと考えられている。その後中国文明の中心は、黄河に移るが、祭政未分の殷の時代には、女性の地位はまだ高かった。紀元前14世紀頃、殷王武丁の后である婦好は、一万三千人の軍隊を率いて羌を征伐したことが甲骨文字に記録されているが、この勇ましい女性の存在は、婦好の墓の発掘結果から支持されている。
もう一つの古代文明の中心地であるインドも、アーリア人侵入以前は母系社会で、女性の地位は高かった。『リグベーダ』には、曙の女神ウシャスが重要な存在として頻繁に現れる。古代日本も、卑弥呼や台与が国を治めたことからもわかるように、女性の地位が高い母系社会であった。このように、女性崇拝の傾向は、多くの古代文明の黎明期に見られる。
女尊男卑から男尊女卑への移行は、急激に起きたわけではなく、途中に長い過渡期があった。古代エジプトにおいては、女は法的に男と対等で、平民の女でも、財産を相続したり売買したり、その他法的効力のある契約を結んだり、離婚等の訴訟を起こすことができた。古代エジプト人が半神半獣の神を崇拝していたこと、イシスのような女神が男の最高神と同じぐらい重視されていたこと、旧約聖書やコーランでは、女は男から作られた、派生的人間として扱われているが、エジプト神話では、男女が平等に作られていること、ナイル川を氾濫するに任せ、これを人為的にコントロールしようとはしなかったことは、古代エジプト文明の時代が、自然と人間、男性原理と女性原理が均衡していた過渡期であることを示している。
男尊女卑社会へのターニング・ポイントは、ヤスパースが「枢軸時代」と呼んだ、紀元前500年前後の時期である。この時期は、ギリシャ哲学の最盛期であり、ユダヤ教の預言者が活躍した時期であり、インドでは仏教が、中国では儒教が現れた時期である。これらの世界的な宗教と思想の革命は、いずれも女性原理から男性原理への転換を促した。

ここで言う「男性原理」の土台を成すのが私権(私有財産)の父系相続であるが、それに転換したのが2600年前の古代宗教の登場⇒巨大帝国の成立と重なる。このように、2600年前の古代宗教の登場も、私権統合社会の中核を成す父系相続へ転換を促したものだったという点は注目に値する。(ユダヤ教や仏教がどのようにして私権の父系相続⇒男原理への転換を促したのかは今後、追求を要する)
社会統合機運も新しい社会統合観念も(新しい)男女関係を母胎として登場するという、この仮説は歴史的にも当てはまるのではないだろうか。
だとすれば、次の社会統合機運⇒社会統合観念も、「私権追求に代わる集団の目標は周りの充足、そして男女の共認の輪が認識収束の母胎」で提起されたように、(社会の最基底部を成す)男女の共認を母胎に登場するはずである。

婚姻制度が社会の最基底部にあるのは、哺乳類では雌雄の引力が最大の引力(活力)であるからだが、全文明史を覆すほどの今回の社会の大転換も、男女の引力を基盤にした社会変革というスタイルになるのではなかろうか。言い換えると、男女の問題を捨象している政権交代や社会派とは無関係な、偽ニッチを吹き飛ばすような、もっと根底的な変革になるということだろう。

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写真はこちらからお借りしました。
昨年の政権交代→鳩山・小沢民主党は「特権階級支配を撥ね返した大衆の共認闘争の勝利」ではあった。しかし、一方で清和会支配から旧田中派(経世会)の時代に戻っただけとも言えるし、あるいは、社会の根底にある男女の問題を捨象していたことには変わりがない。鳩山・小沢政権も来るべき社会とは不連続な旧パラダイムにあったと言わざるを得ない。今回も民主党政変(クーデター→菅従米政権)も、それ(旧パラダイム)では金貸し→特権階級支配を覆すだけの力をもち得ないという限界を示しているのではないだろうか。
(本郷猛)
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List    投稿者 hongou | 2010-06-23 | Posted in 12.現代意識潮流3 Comments » 

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コメント3件

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