2011年04月29日

原発を巡るみんなの意識は、どうなっているのか?

東北震災→福島原発事故から早1ヵ月半になろうとしています。私自身は、原発が危険で、無くした方が良いことは知ってはいましたが、不勉強でした。今回の事故を契機に、みんなでいろいろ調べていった結果、
・長期に亙る放射性物質の危険性
・人類は原子力をとてもコントロールできている状態ではないこと
・原発が無くても、電力を賄うことは可能なこと
・原発に替わる新しいエネルギーに大きな可能性があること
などを知るに付け、「原発を無くさないとマズい」しかも「(時間は掛っても)無くすことは可能だ」と強く思うようになりました。連日連夜の原発報道、またネット界における原発問題の追求を見るにつけ、これは私だけではなく、日本人のほぼ全員が「原発無くすべし!」と思っているはずだ、と考えていました。
ところが、2011年4月中旬に行われた「統一地方選挙」の結果は、予想を大きく裏切るものでした。今回の統一地方選で当選した知事のほとんどが原発推進派の現職、東京都知事の石原慎太郎氏も原発推進派であったにも関わらず当選しました。先日の東京都区長選でも、反原発派と言えるのは、世田谷区の元社民党国会議員の保坂展人くらい・・・。
一体、原発に対するみんなの意識はどうなっているのでしょうか?

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■世論調査の結果から
マスコミの世論調査では、質問の仕方や統計を巡って、常に疑惑を持たれている。しかし、大きな参考にはなるはずなので、まずは世論調査を取り上げる。
読売新聞 朝日新聞 毎日新聞

平均すると、現状維持が46%と最も多く、増やすべきと合わせて58%にも上ってる。逆に、減らすべき+撤廃すべきは41%。
ところで、朝日新聞では原発の利用についての賛否も問うている。

これを見ると、賛成50%反対32%と賛成派が半数に達してる。両者を見比べると「賛成」というのは「現状維持」とほぼ同じ意味で使われていることが分かる。確かに、「現状維持」と言っても、耐用年数が来た原発は、新しく立て直さなければいけないから、現状維持を認めることは新規原発に賛成していることとほぼ同じこと。
※これらの世論調査には、
  ・被災地域が含まれていない
  ・電話調査であるため、回答者が家にいる主婦や高齢者が中心となる
 などの問題はあるが、今回は割愛。
※ちなみに、路上のなんで屋での調査でも賛成反対は半々だそう。
さて、これらの世論調査を踏まえて、なぜこういう結果になるのか、みんなで議論してみた。
■なぜ”賛成派”の方が多いのか?
結果ら読むと「賛成派≒現状維持派」となりますが、原発が危険なことは分かっていても、原発を無くしていけば電力が不足するから、仕方なく現状維持≒賛成となっている人がほとんどである。つまり、「電力を賄うためには、原発は仕方が無い」という理屈に、頭を支配されていることになる。
1)しかし、年間の総電力消費量も、夏場ピークの電力消費量も、「原発が無くても賄える」。わざわざ、原発を使う必要など無いのだ。
2)しかも、原子力発電による電気は「火力水力に比べて安い」と言われるが、使用済み核燃料の処理、事故が起こったときの対応、また賠償などの金額はオンされていない。仮にオンすれば、原子力発電のコストは火力水力の数十倍になる。とても経済効率的だと言えない。
3)加えて、「CO2を出さないから、地球温暖化抑止効果があって、環境にやさしい」プロパガンダが振りまかれてきた原発だが、原発の平均発電効率は1/3に過ぎず、残りの2/3の熱は(温水として)海に捨てている。つまり、原発は温暖化を抑止するどころか、海そのものを暖めている。 何のために建設が推進されてきたのか、さっぱり分からないという代物が、原子力発電なのだ。
これらの事がマスコミで追求され、報道されることは、ほとんど無い。ほとんどの人間が、原発を巡る現実を知らず、ただただマスコミが作り出す雰囲気に流されていっている。
※マスコミ界でただならぬ役割を果たしているのが、「大学教授」だ。原発問題の識者として名のある大学の教授が連日のように出演し、盛んに自説を繰り広げていった(今回の事故後に、ネット界ではその発言が積極的に取り上げられ信頼度も高い小出京大助教(昔の助手)とは、天と地ほどの差がある)。
だから、ほとんどの人間は、「何となく」「足りなさそうだから」「現状維持しかない」と答えることになる
■「反原発」だけでは、人は付いてこない?!
上記のような状況認識の下では、原発の危険性を言い募っても、原発反対の声が大きくならないことが分かる。「電力が不足しそう」という意識(←これそのものも、マスコミと東電の計画停電によって作られているのだが)に対しては、 「原発が無くても、足りる」という確かな現状認識と、新しいエネルギーの可能性を考える必要がある
原発の危険性は言うに及ばずであるが、水力・火力であっても環境への悪影響が伝えられる。そこで、注目されてきたのが、太陽光発電や風力発電、さらに波力発電、地熱発電などだ。「熱を作り出して、蒸気でタービンを回し、電気を作る」という素人考えでは、変換効率が悪そうな方法とは違う形で、自然エネルギー活用型の発電所は考えられてきた。
ところで、太陽光発電は変換効率が20%と低く、コストが見合わないとされてきた。ところが、つい先日の2011/4/25に東大とシャープが「次世代太陽電池として期待されている「量子ドット太陽電池」の理論変換効率が75%に達することを明らかにした」というニュースが飛び込んできた。これは、電力辺りのコストが1/3となることを意味するし、逆に現在の設置面積からでも3倍の電力を生み出せることを意味する。75%というのは、理論上の値だそうだが、今後のエネルギー戦略の大きな契機となるだろう。
更に想像を膨らませれば、「なぜ、このタイミングで、発表があったのか」、かなり不可解だ。今まで原子力推進団体からの強い圧力があって、それが緩んだから発表できたのではなかろうか。そうなると、は研究が進んでいても『発表されない次世代エネルギー技術』が、他にも埋もれているということになる。
更に、風力発電にも問題が山積していると言われる。

日本に巨大風車はいらない:「風力発電の不都合な真実」(武田恵世・著)
現在、日本では風力発電で発電した電気は、開閉器、変圧器などを介して電力会社の電力系統に直接入れられています。
 日本全国の電力会社は、強い風が吹いて風力発電所が稼働すると、火力発電所の出力をその分落とすという運用はしたことがありません。
 また、火力発電所が廃止されたこともありません。電力系統に大量の電気が急に入ったり、入らなくなったりすると電力系統全体が不安定になり、停電することもあるのですが、まだ風力発電所からの電気は系統全体の1~2%以下で誤算の範囲なので不安定にはならないので何もしていません。
 風力発電所が結構増えた北海道電力、東北電力では、風力発電所の発電量が増えると、既存の火力発電所の出力は落とさずに、風力発電所からの送電を止めています(接続制限)。なぜかというと、風は一定の強さで吹き続けるものではないので、それに合わせて火力発電所などの出力を調整するのは難しいからです。
 つまり、現状では、風力発電所ができたことで、火力発電所の出力も、数も減らしてはいないので、化石燃料の消費量をまったく減らしてはいないのです。

次世代エネルギーとして期待された風力発電も、国策として強引に推し進められ、数々の優遇税制がなされ、一つの官産学複合体構造が出来上がってしまっている。これは、「原子力村」と揶揄された構造と全く同じだ。
いくら新しい技術であっても、官産学複合体構造に巻き取られてしまえば、身動きが取れなくなり発展の可能性は無くなる。タブーや垣根なく、みんなで議論できる遡上に載らないと、新しい可能性はいつまでたっても芽を出すことはないだろう。
そして、そのような場が現在は無いために、次世代エネルギーの可能性を感じることができず、「多数派が現状維持に流れてしまう」という事態を生み出してしまっていると言える。新しい可能性=答えが無ければ、既存の枠組みに対して明確にNOと言うことができないからだ
■女が次代の可能性を作る最先端にいる
先ほどの「原発利用に賛成か反対か」の世論調査結果のグラフを再掲する。

ここで目立つのが、
・女の方が、反対派が多い
・賛成でも反対でも無い層は、女の方が多い
という二点。
女の方が反対派が多くなるのは、より子どものことを気に掛けているからだろう。さらに、男はマスコミからの情報を繋ぎ合わせて自分の意見を形作る事が多いため、男の方が賛成派が多くなるのであろう。
一方で、「賛成でも反対でもない」というのは、「判断保留」「考え中」の証だと言える。確かに危険性が喧伝される一方で、新しい可能性も未だ形になっていないとなれば、(賛成とか反対とかを超えて)「判断を保留して、考えたい」という意識になるだろう。世論調査で賛成と表明した人間でも、上記のような意識が根底にある人間は多いのではないか。
これは、女発で、みんなで社会のことを考える基盤が作られつつあることを意味している。女が踏みとどまって考えようとしている問題を、男が追求するという形が、社会的にもできつつあるのではないだろうか。
(ないとう)

List    投稿者 tnaito | 2011-04-29 | Posted in 12.現代意識潮流1 Comment » 

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コメント1件

 http://limecafe.co.uk/ | 2014.03.21 6:15

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