子どもたちの活力衰弱の突破口は?(Part2)~若者の活力が高い国はどこ?~
若者の活力衰弱の突破口を探る上で、今回はあるデータに着目してみました。
そのデータは、若者の意識調査の国際比較(内閣府による実施)。
『活力』に関係の深い項目をピックアップして見てみましたが、非常に象徴的な結果となっていました。
データは、日本・韓国・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンの7か国による比較ですが、みなさんはどの国の若者が一番活力が高いor低いと思われますか?
以下の意識調査結果(平成26年度・平成30年度の2種類)をご覧ください。
●平成26年度
1.うまくいくかわからないことにも意欲的に取り組む
2.つまらない、やる気が出ないと感じる
3.ゆううつだと感じる
4.職場の満足度
ワースト1 ベスト1 ベスト2
1. 少:日本 多:フランス 多:ドイツ
2. 多:日本 少:フランス 多:ドイツ
3. 多:日本 少:ドイツ 少:フランス
4. 少:日本 多:ドイツ 多:アメリカ
●平成30年度
1.自分自身に満足している
2.自分には長所がある
3.自分は役に立たないと強く感じる
4.社会をよりよくするため、問題解決に関与したい
ワースト1 ベスト1 ベスト2
1. 少:日本 多:アメリカ 多:フランス
2. 少:日本 多:ドイツ 多:アメリカ
3. 多:イギリス 少:ドイツ 多:スウェーデン
4. 少:日本 多:ドイツ 多:アメリカ
結果は、上記の通り(予想通り!?)で日本はほぼすべての項目で最下位。
そしてほぼすべての項目で上位にランクインしているのがドイツでした。
一体、ドイツの若者はなぜ活力が高いのでしょうか?
おそらくそこには、ドイツの教育制度が大きく関わっています。
ドイツの教育制度は非常に独特で、10歳(小学4年生終了時)の段階で進路が大きく3つに分かれます。
その3つとは、
・大学進学希望者が進む「ギムナジウム」
・卒業後にすぐ就職をすることを前提として職業訓練を行う5年制の「ハウプトシューレ」
・卒業後に職業教育学校もしくは中級職を目指す6年制の「レアルシューレ」
「10歳の段階で将来が決まる」
こう聞くと、多くの(日本)人は「10歳はまだまだ子どもなのに…」「そんなに早く将来が決まるのは子どもにとってもマイナスでは?」と感じるかもしれません。
ただ一方で、ドイツの若者の方が日本の若者より活力が高いのも事実。
まずは、現代の日本人の価値観を抜きにして、少しこの事象を追求してみたいと思います。
まず、10歳という年齢について。
日本の小学校はご存知の通り6年制で、卒業時は12歳です。10歳の段階で何らかの決断を求められる環境は日本にはありません。しかし、日本にも「10歳の壁」という言葉があり、つまづきを感じる子どもが多くいることも事実。
※「10歳の壁…小学校4年生前後に起こりうる内面の変化から、勉強面や精神面、人間関係などでつまづいてしまう問題の事」
一般的に子どもの脳は、以下のような段階を踏んで発達していくといわれています。
0~3歳:脳神経細胞が増え続ける
3~7歳:脳神経細胞の間引きが行われ、情報伝達回路が作られる
7~10歳:情報伝達回路の機能が発達する
(ここまでで95%以上の神経回路が完成するとも言われています。)
つまり10歳という年齢は、(脳の神経回路的に)「できること」と「できないこと」がはっきりしてくる時期とも言えます。おそらくそれが、上記の「10歳の壁」を生んでいるのではないでしょうか。
実は、過去の日本でも10歳が子どもと大人の境目だと考えられていた事象がありました。
それは、奈良時代以降に行われていた元服という儀式です。元服は、男子が成人になったことを示す儀式で、ふつう11歳~16歳の間に行われました。
これらの事実から考えると、10歳が分かれ道になるというのは、ある意味必然的なことなのかもしれません。
次に、進路=将来を決めるということについて。
ドイツの教育制度が上記のようになっているのは、もともと歴史的に職業訓練としてマイスター制をとってきたということが要因としてあるのは事実です。
しかしどこの国においても、教育が一般化する前は子どもたちが働くことは当然のことでした。
農業や漁業など、家族が協力しながら生計を営んできたからです。
そして、その時よりも現代の子どもたちの方が、活力が衰弱しているのも事実です。
現実の圧力の中で、子どもにも真っ当な期待=圧力がかかり、そこに応えることで活力が上昇していく。そう考えると、子どもであっても仕事をする方が活力が上昇するのはある意味当たり前かもしれません。
いずれにせよ、『22才(24才)頃まで小・中・高・大と15年間以上も「学校」で「勉強」をし続ける』という、日本の教育制度はもはや限界にきているのかもしれません。
今後の教育改革におけるキーワードは「10歳」「進路(将来)を決める」になるのではないでしょうか。
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