2023年04月09日

人との安心基盤→成功体験が、人を育てる

4月になり、各企業は新人の受け入れや新体制の準備を迎える。弊社でも、これまでの50年を振り返り、次の時代に向けた人材育成を追求している。
特に50年前と今では若手社員の活力源は激変しており、「どうしたら人が育つのか」はどこの企業でも追求されている課題だ。
塾事業における子どもたちの意識潮流からも、これからの人材育成で大切にしたいことを追求していきたい。

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◆成功体験が、人を育てる

どんな課題に取り組むにあたっても、部下に「この課題の先に何があるのか」という展望を示してくれる上司は多いと思う。しかし、そこでやる気のあがる社員と、ネガティブ要素を見つけ、悲観する社員がいる。それは幼少期から培われた「成功体験」によって決まるのではないかという仮説が出てきた。
「成功体験」とは何か。
誰しも子どものとき、何かに熱中した経験があるはず。習い事を頑張った、勉強を頑張った、虫集めに凝っていた、など。その時の思い出は鮮明に残って、大人になった今に、何かしらの形でつながっている。

以前、弊社の学習塾に英語が苦手な生徒がいた。ずっと40点前後しか取れず、親御さんも本人も悩んでいたが、毎朝テキストを講師と音読した結果、次にあったテストで70点を取ることができた。
喜ぶ生徒と講師。一方、親御さんからは「でも、まあ70点ですしね」という言葉があったという。本当は一緒に喜びたい気持ちもあったかもしれないが、ついついそんな言葉を子どもに言ってしまう人は、少なくないのかもしれない。
周りの「反応」こそ、その子にとっての「成功体験」と「敗北体験」の分かれ目となる。
「成功体験」と聞くと、「テストで100点取れた」や「試合で勝った」のように、その結果だけに目が行きがちだが、今の子どもたちにとっては、仲間や大人と「充足できたかどうか」の方が実は大事だったりする。
それは、私自身も日々設計業務にあたる中で実感がある。設計事務所では「プロポーザルで勝った」などの分かりやすい成功もあるが、1つの建物が建つまでには、時には逃げたくなるような(笑)地道な課題もたくさんある。しかしその中でも、お施主さんに喜んで頂いたり、行政の方と密にやり取りしたり、施工者さんやメーカーさんと素材について議論したり、仲間と頑張ったり。周りのたくさんの人と創る喜びは、何にも代えがたい「成功(充足)体験」である。

充足体験が豊かであるほど、どんな未知課題であっても、何度失敗しようとも、「最後には上手くいく」と、果敢に挑戦できる人になる。そしてその挑戦が、また人を育てる。

 

◆成功体験は「安心基盤」があって積まれていく

では、成功体験を積むために何が必要なのか。
何につけても上司や大人が「褒めて、甘やかして」ということではない。
企業においても、「仕事は苦行」だという前提から、「仕事がラク」「休みが多い」「誰にも怒られない」=「ホワイト企業」というイメージ戦略が流行りだが、「ラク」であることがむしろ人材離れにつながっているという潮流もある。(リンク
私も毎日仕事をしていて、自分ができるかな?と感じるような難しい課題があっても、それ自体苦痛ではなく、その課題でぶつかる壁を誰とも共有できないことや、誰からの期待も感じられず欠乏が喚起しないことに「しんどい」と感じる。

外圧が高まったとき、生き物はそれを内圧に変え、未知課題に挑んできた。しかし、外圧⇒内圧にすぐ変換できる人は多くない。外圧を感じた時何かしらの不整合を感じ、苦しくなるときもある。そこから実現(→成功体験)に向かうか、諦めに向かうか分かれるが、ここでは周り、仲間との「安心基盤」がカギとなる。
「安心基盤」とは、乳幼児期であれば身近な大人や仲間とのスキンシップや遊びを通して育まれる。

また、勉強で上手くいかない、仲間関係が上手くいかないなど、生きていれば必ず何かの壁にぶつかるが、その時の言葉が大事という話にもなった。若手の声が多かったのは、
・「何回失敗しても、大丈夫。もう一度やってみな。」と失敗も含め全面的に受け止めてもらうこと。
・「ここまでできたね。何でできたんだろう。」と「できたこと」を固定してもらうこと。(※ちなみに「なぜ“できない”のか」という言葉は「できないこと」に脳を向かわせ、反省はするが実現に向かわない。)
・「最後は俺が何とかするから。出来る限りやってみな。」と背中を押してもらうこと。

それらが「安心基盤」であり、成功体験を積む土台になる。

現代の子どもや若手にとって、成功体験は周りの反応(評価)で決まるが、成功体験を積めるかどうかも、周りとの関係によって決まる。
上から序列的に指示されるだけでは、人の活力も仕事の成果も出ない時代になっている。 人の活力は、互いに認め合える充足感と、そういう人たち同士での、相互の圧力と期待があって決まる。この認識に基づいた仕組みづくりが、これからの人材育成を考える上でより重要になってくるのではないだろうか。

List    投稿者 ideta | 2023-04-09 | Posted in 17.これからの教育No Comments » 

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