2022年08月31日

スイス人はなぜ自国を愛せるのか

世界の中でも「愛国心」が強いと言われているスイス。なにか特別な教育がされているのでは?と深めていくと、
「愛国心」ではなく「自治意識」。つまり、自分たちの集団を自分たちでつくるということが、自然と国民の中に浸透していることがわかってきました。

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〇とことん最小限な学校教育。国=自集団を守る、知るための徴兵制度。

 

◆1.究極のゆとり教育?最小限な学校の時間

学校は週5日制で、なんと午後の授業がある日は週に2日ほどという、究極のゆとり教育!しかもランチはお弁当でも給食でもなく、家に帰って食事をとります。午前の授業は地域によって差があるものの、だいたい8時から12時でお昼いったん家に帰り、午後の授業は1時半または2時頃から。お昼時は通学路で一目散に家に帰る、おなかをすかせた子どもたちを見かけることができます。

 

◆2.15歳から働く

レーレとは実際に働きながら、職業専門学校に通って学ぶシステムです。Lehrstelle(レアシュテレ)と呼ばれる、学校に通いながら働くシステムを各職場が提供しています。
学校を決めると同時に、このレアシュテレも自分で探さなければいけません。学校に通う日、働く日は職業によって変わってきます。週4日働き1日学校というスタイルが多く、学校よりも労働時間が多いことが驚きです。レーレの期間は当然お給料が発生し、だいたい月に1000フラン(約11万円)前後を支給されます。また、レーレを始める前にSchunupperstelle(シュヌッパーシュテレ)といって、職業一日体験をすることができます。そこで向き不向きを見極めることができるので、とても便利なシステムです。

 

◆3.自国を守るための徴兵制

永世中立国であるスイスが軍隊を保有し、軍事活動を行う目的はそもそも戦闘ではなく、国防や災害支援などといった人々の安全や平和な暮らしを守るためなのです。
現在もスイスの男子は19歳もしくは20歳になると、初年兵学校で15~17週間の新兵訓練を受けなければならない。その時に受領した小銃は、自宅に持って帰って格納する。その後、予備役という有事動員要員として、毎年3週間の訓練を10回に分けて受ける。訓練期間の日当と費用は、スイスの企業が80パーセント負担している。たとえ海外で生活をしていても、帰国をして新兵訓練、予備役の訓練は受けなければならない。もし悪意を持って、あるいは意図的にその訓練に参加をしなかった場合には、最悪の場合はスイス国籍を剥奪されてしまう。

 

〇「自集団をつくる」国民に染みつく「普通」な意識

 

◆4.ボランティア率の高さ

スイスはEU加盟国ではありませんが、同年は年間を通して、様々な地域のボランティア活動がメディアで取り上げられ、その重要性が改めて社会的に認知されたように思います。

もともとスイスは、二人集まれば結社(クラブ)をつくる、と言われるほど、結社に入って趣味やスポーツなどの活動をする人が多く、結社活動が活発です。
そして、それらの結社やネットワークを母体としたボランティア活動は、地域社会の文化事業や社会福祉に伝統的に大きく貢献してきました。
実際、スイスで15歳以上の人でボランティアをしている人の割合は、ある統計データでは40%にものぼり、ボランティア活動に費やされている時間は、国全体で合わせると6億6千5百万時間になるとされます。EU加盟国の15歳以上のボランティア活動の割合が平均23%であるのと比べても、スイスでのボランティア活動への関心の高さがわかります。

 

◆5.国民投票で決める

スイスは、教科書風の言い方では住民投票がさかんな世界的にも珍しい「直接民主主義」の国です。
クラブや動物飼育などの課外活動すらも「学校」の管轄外ということで、学校活動にはなく、やりたい子は地域のスポーツや他の各種のクラブに自分で参加します。
たとえ必要性が認められても、それにかかる費用が問題となって、設置されないこともあります。
これは換言すれば、住民(有権者)がどれくらい自分たちの税金を学校や教育費にかけるかを、最終的に決定できるということであり、教育現場の意向と一致しない結果がでることも多々あります。
例えば、教育内容についてだけでなく、新しい校舎の建設如何も、住民投票で決められるのですが、子供が増えて校舎が不足していても、住民投票で校舎増設が否決されるというケースもこれまで何度もありました。

 

◆6.労働者の意識

スイス人は一般に、いわゆる出世したいなんて考えを持たない。「マネージャーになってやろう」なんて考えを持つどころか「マネージャーなんてまっぴらごめん」というのがスイス人の常である。略
社長やマネージャーは偉い人だと思わない。また給仕だからといってつまらない人だとは思わない。社長といい、給仕といい、1種の職業と考えているようである。社長や上司の命令に従うのは自分の義務を果たすためであって決して屈服ではない。だからひとたび会社をはなれると、社長も給仕も対等の交際である。この点実に気持ちがいい。会社にあっては上下とも心を合わせて製品の改良と、コストの引下げを考え、少しでも輸出を伸ばそうと考えている。

 

「愛国心」と聞くとなにか立派で、少し遠い話のように聞こえますが、スイスの事例をみればそうではないことがわかります。
自分の集団を愛したり、大切にすることは、自らがつくる主体であれば、自然なことです。

 

国民の自国を大切にする気持ちは、「特別な教育」で培われるものではなく、
自分たちで集団の制度を決める自分たちで地域、国を守る教えられる前に外に出て働く、実践する。
とにかく集団に身を置き実践する中で、培われるものなのではないでしょうか。

 

 

・スイスの徴兵制存続に見る日本人との国防意識の違い(リンク
・大学進学率がたった1割!?スイスの学校システムとは(リンク
・スイスの古くて新しいボランティアのカタチ(リンク
・スイスの徴兵制度(リンク
・う ら や ま し い 国 ス イ ス(リンク
・スイス社会の仕組みと基本(リンク

 

 

List    投稿者 ikegaya | 2022-08-31 | Posted in 17.これからの教育No Comments » 

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