中東革命の今後 自らが作った矛盾に嵌っていくアメリカ
チュニジア(ベン=アリー)、エジプト(ムバーラク)と拡大してきた反政府運動が、リビア(カダフィ大佐)にも波及している。年内にはカダフィが国外逃亡せざるをえない状況に追い込まれるだろう。
この反政府運動の動きは、さらに波及していくはずだが、今後を予測する上では、今回の反政府運動が活発化したのはどのような国なのかを考えなければならない。そこで、まず中東主要各国の国家のあり方や民族性を見てみる。
中東革命の広がり~リビア情報
中東革命の広がり~リビア反政府運動の流れ
中東における反政府運動はどこに向う?イランの運動・宗教・政治
中東革命の広がり~サウジアラビアの概要~
中東の民主化運動を受けて中国の動き
■第二次世界大戦終了~石油ショック
1945年 第二次世界大戦終了
中東やアフリカで独立国家が誕生していく
☆この時点で、はっきりとした反米国家は無い
1969年 カダフィ大佐が事実上のリビア国家元首に
1970年 イラン革命
親米派の国王が追放され、イスラム宗教指導者を最高指導者とするイスラム共同体制に
☆この時点で、
親米国家:イラク、エジプト、サウジ
反米国家:リビア、イラン、チュニジア
1970年代 中東産油国が、石油開発への経営参加、国有化を推進
・イラクが油田を国有化
・アルジェリアの油田がフランス資本から国有化
・リビアの油田がBPから国有化
(・イランでは1950年代に国有化)
・サウジアラビアの油田も、欧米資本から国有化(1976年)
→1970以降、サウジは原油価格の安定を維持するために生産調整を行い、また軍事的保護の見返りとしてアメリカへの輸出を優遇してきた。
1973年 第一次石油ショック
戦前から石油利権の大半は、欧米の国際石油資本(セブン・シスターズ)によって独占されていた。
これでは石油を売却しても、その利益のほとんどを欧米資本に持っていかれてしまう。
この体制に業を煮やしたイラク、リビアなどは、いち早く油田利権を外資を追い出して、油田利権を国有化してしまう。
折りしも石油が高騰した(石油ショック)ため、中東産油国は短期間に莫大な資金を手にすることになる。その多くの国は、せっかくの儲けを浪費してしまう傾向があったが、例外もあった。その一つがフセインのイラクだった。
>石油を国有化した翌年に石油危機が起こり、世界有数の産油量を持つイラク政府は、一気に金持ちになった。サダム・フセインはこの金を使い、それまでシーア派・スンニ派・クルド人がバラバラに争い、地縁血縁もひどく分裂気味だったイラクを、バース党の傘下に統合していった。全国の道路や発電所を作り、農村の近代化や農地の土壌改良などを進めるとともに、全国の医療や教育を無償化した。これにより、イラク国内の多くの勢力が、フセインのバース党政権を支持するようになった。
http://www.tanakanews.com/070313oil.htm
このようにして、イラクは中東産油国の中でもいち早く”近代化”していくことになる。
この状況に、最も危機感を覚えたのがイスラエルだった。
■イラン・イラク戦争~第一次湾岸戦争へ
1980年 イラン・イラク戦争
・当時のフセインのイラクは親米国家。アメリカから武器提供を受けていた
・イスラエルがイランに武器を提供していたことが分かっている
1980年代半ば エジプト(ムバラーク)、チュニジア(ベン=アリー)が現在まで続く独裁体制に
1990年 イラクがクウェート侵攻
アメリカのお墨付きをもらっての侵攻であったが、イラクが侵攻を開始すると、アメリカは一転してイラクを糾弾。
アメリカの誘発に、イラクが引っかかった。
☆この時点で、イラクが反米国家に(認定される)
1990年 米軍がサウジへの駐留を開始
1991年 アメリカがイラクを空爆
マスコミ→世界世論を支配して、イラクを悪者視し、戦争を仕掛けた
イラン・イラク戦争以降、中東情勢が大きく変化し始める。
当時のイラク(フセイン)は、アメリカともソ連とも関係を持っており、アメリカCIAからもたらされた情報を元に、イランとの戦争を開始する。しかし、革命後のイランが意外に手強かった。またイラクの強大化を嫌ったイスラエルが、イランへの武器提供を続けたため、決着が付かない泥沼の戦争へと突入して行った。
この頃からアメリカの中東への関与がより深くなっていく。それまでは、中東地域の民族紛争や国境紛争の裁定者として存在したアメリカであったが、第一次湾岸戦争からサウジアラビアへの駐留を開始、さらにイラク空爆など、 アメリカは「戦争の当事者」として中東に関与することになる。
(イスラエルが、アメリカを当事者として巻き込むことに成功したとも言える)
そして、その”当て馬”とされたイラクは、戦略を大きく転換させ、親米から反米親欧へと舵を切っていく。
■ユーロ誕生~リーマンショック
☆アメリカが”力の原理”で中東戦略を組み立てている内に、ヨーロッパではEU誕生。
1999年 欧州統一通貨ユーロ誕生
2000年 イラクが原油決済通貨をドル建てからユーロ建てに
2001年 アメリカで911同時多発テロ
2003年 アメリカによるイラク侵攻
テロとの関与、大量破壊兵器などを口実にしてアメリカは戦争を仕掛けた。実際には、イラク大統領フセインが、イラク原油の輸出代金を、米ドルからユーロに変えたため(これは、当時の米政府高官自身が言った)。
2004年~ 原油バブル
2008年 リーマンショック
2010年~ 再び原油バブルに突入
第一次湾岸戦争で、アメリカに手ひどくやられたイラクであったが、アメリカの軍事力の前にひれ伏すのではなく、アメリカとの関わりを切り、EUへと接近していく。そして、誕生したばかりのユーロを原油決済通貨とすることを決めた。
これは、アメリカにとっては死活問題となる。
1945年、ドル基軸通貨体制=ブレトンウッズ体制が始まったが、当時のドルは金兌換紙幣だった(=金Goldという現物の裏づけがある紙幣だった)。しかし、ドル乱発→ドル価値の下落を嫌った先進国が、ドルを金Goldに転換、第二次世界大戦で溜め込んだ金Goldがアメリカから流出していく。これでは、基軸通貨体制を維持できないと判断したアメリカは、1971年ドルと金Goldの兌換を停止する(ニクソンショック)。
この時からドルは不換紙幣(現物の裏づけがない紙幣)となったと言われるが、実際には原油決済通貨として生き残っており、言わば「原油兌換紙幣」とでも言うべき存在であった。仮に、中東産油国が、「原油を買うときには、(ドルではなく)ユーロで払え」と転換すれば、ドルは原油兌換紙幣としての地位を、引いては基軸通貨としての地位を失ってしまう。
ドル覇権=アメリカ覇権崩壊の危機に瀕したアメリカは、フセインのイラクを消滅させることを決定する。アメリカは(アメリカ自身が911同時多発テロを演出し)テロとの関与や大量破壊兵器を隠し持っているなどの言い掛かりをつけて、イラクとの戦争を開始。イラクを完全制圧して、フセインを処刑してしまった。
アメリカが「戦争の当事者」として中東に食い込み、またフセインのイラクを消滅させたこの時期から、他の中東各国も「アメリカとの関係の見直し」に入っていった。
・イランが本格的な核開発に乗り出す。
・カダフィのリビアは、アメリカと協調路線をとる一方、親アラブ外交から親アフリカ外交へとシフトし、アフリカ連合内で主導権を握ろうと動き始めた。
・エジプトのムバラク大統領は、イランが核兵器を保有すれば、エジプトも核開発を行う可能性があると米国に伝えた。
つまり、これらの中東各国が、欧米各国が作った枠組みからの離脱を始めたのだ。
アメリカは、国際戦略の大幅な見直しを迫られるだけでなく、彼らを戦争ではない別の方法で駆逐する必要があった。そこで利用されたのが、大衆の力=反政府運動だった。
折りしも、リーマンショック前後は原油価格が高騰しており、国有の石油会社は莫大な利益を得ていたが、庶民にはインフレが直撃し、政府への不満が蓄積していた。庶民を直撃するインフレ→生活苦は、先進各国の投機マネー流入による原油価格の高騰が引き起こしている。つまり、中東の”民主化運動”は、先進国が火種(原油価格高騰→インフレ)を撒き、先進国がその火を煽っている(ネットによる世論形成)という構造が見えてくる。
(欧米メディアは、これに「民主化運動」という正当化のための旗印を付けているに過ぎない。)
この結果、 「最も独裁色の強い(親米の)サウジアラビア」よりも「最も民主的な国である(反米の)イラン」の方が、”民主化運動が盛り上がる”というネジれた事態を引き起こすことになる。
上記の仮説が正しければ、反政府運動=民主化運動はサウジアラビアを飛び越えて、イランへと繋がっていくことになる。
中東各国は、欧米各国の思惑が入り乱れ、ますます矛盾の満ちた地域となり、アメリカはその泥沼から抜け出せなくなっていくだろう。
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