2008年12月08日

ドルが暴落するって、本当?

最近、「ドル暴落」や「米国債デフォルト」を予測する記事が増えてきた。田中宇氏の12月6日の記事「09年夏までにドル崩壊??」もその一つだ。
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11月17日、米ワシントンDCでのG20金融サミットが具体的成果をあげられずに終わった2日後、欧州のLEAP/E2020(2020年の欧州)というシンクタンクが「ドルを基軸とした今の国際通貨制度(ブレトンウッズ体制)は、根本的な改革がなされない限り、09年(来年)夏までに制度崩壊する。この体制の中心にいる米英が急速に弱体化し、米財政は破綻して、世界は非常に不安定になり、戦争や暴動が起きる」「世界がドルを見放したら(米国債を買わなくなったら)、通貨制度改革の交渉もできなくなり、手遅れになる。世界の指導者は、3カ月以内に現状を把握し、6カ月以内に対策を決定する必要がある」などとする予測を発表した。
LEAP/E2020は、今回の世界的な金融危機が起きることを察知した欧州の分析者が、2006年1月に作ったシンクタンクで、07年夏に金融危機が起きる前から、米不動産市況の崩壊による危機の懸念、ドルや米財政の潜在危機などを指摘し続けてきた。

そのようなLEAP/E2020が「6カ月以内のドル崩壊」の予測を出したのは、重視すべきことである。彼らは、ブレトンウッズ機関(IMF、世銀)の根本的な改革がなされれば、通貨制度の崩壊は防げると言っている。これは、11月15日のG20会議のテーマでもあり、私なりに理解すると、基軸通貨がドル一極の状態から、ユーロ、円、人民元などを含む多極的な状態に拡大する方向でブレトンウッズ体制が大変革されれば、ドルが信用を失墜しても、国際通貨体制はソフトランディングしうる。
しかし今のところ、国際通貨体制は軟着陸しそうもない。たとえば軟着陸には、世界有数の富を蓄積するようになった中国人民元の切り上げや国際化が必要だが、中国政府が最近採った方針はむしろ逆に、ドルに対する人民元の為替上昇を止める「切り下げ」の方向である。人民元の対ドル為替相場は一定の変動幅の範囲内で動くように中国政府が市場介入しており、以前は変動幅の上限に貼りつくことが多かったが、最近は下限に貼り付く事態となっている。中国政府は人民元安を誘導している。
人民元の切り上げを望む米欧の要求は無視され、中国政府は人民元をできるだけ切り下げ、米欧に対する中国製品の価格競争力をつけて、輸出産業の復活と失業の抑制を狙っている。中国政府がこうした姿勢をとる限り、人民元の国際化は進まず、通貨の多極化も起こらず、国際通貨体制は軟着陸できない。ドルのハードランディングは不可避となる。国内事情を優先する中国政府の姿勢は、米欧から自己中心的だと批判されている。「
世界経済の現状は、通貨の多極化も、消費の多極化も、遅々として進まない。このままだと、ドルに代わる基軸通貨体制が決まらないまま、ドルに対する国際信用が失墜し、米国債が不履行になって長期金利が急騰し、ドル建ての石油や金や食料の価格が高騰してインフレが再燃する。世界経済は大混乱し、戦争や暴動が起き、LEAP/E2020が予測する事態が起きうる。

ドルは、延命する可能性もある。ドルの破綻は、長期米国債が売れなくなるところから始まりうるが、米連銀は最近「量的緩和策」の一環として、米国債が売れ残る事態に備えて、連銀があまった米国債を買い取る新政策を検討している。名目上、連銀は政府から独立した機関であり、ドルの輪転機を回して刷るだけで米国債を買うことが可能だ。
すでに連銀は、金融危機対策として民間債券を買いまくり、この1年間で3倍の資産膨張をしている(連銀資産は1兆ドルから3兆ドルへと増えつつある)。この策の拡大版として、民間だけではなく政府の債券を買うのが、今回の新政策だ。
このやり方をすれば、毎回米国債は完売し、長期金利の上昇という財政破綻の兆候も出現せず、ドルは崩壊しない。連銀が米国債の購入を検討していると発表した直後、長期米国債の売れ行きが急に良くなり、長期金利が下がった。米国と同様に財政赤字が急増している英国の中央銀行も、同様の延命策を検討している。
しかし連銀は事実上、米政府の機関である。財務省が売り出す米国債を連銀が買うのは、自作自演の錬金術であり、ドルの発行者である連銀の信頼を失墜させる。数カ月から1年ぐらいは延命できるかもしれないが、その後に起きるドルに対する信用失墜の表面化は、手に負えない巨大なものになる。

今週は、国連(DESA+UNCTAD)も「来年は、ドルのハードランディングがあるかもしれない」と予測する報告書(World Economic Situation and Prospects 2009)を発表した。報告書によると、今はまだ、株や債券から逃避した資金が米国債に向かっているのでドルは安泰で、経済減速がデフレの傾向を生んでいるが、これが一段落すると、ドルに対する不安が主たる懸念になる新事態に転換するかもしれず、そうなるとドルは早ければ来年(09年)、他通貨に対する急落やインフレを引き起こすかもしれない。

金融機関の救済資金を調達するために米政府が国債を大量発行する。FRBがドル紙幣を刷りまくり、米国債を買う。それによって米政府の債務残高が膨張し、信用失墜した米国債が大量に売られてドルが大暴落する。いずれもがこういう予測をしているが、それは本当なのか?
次のような疑問が生まれる。
米国債を売って得た資金はどこに投資されるのか?
米国債暴落説が成立するには、米国債よりも信用のある投資対象(資金の逃避先)が大量にあることが前提となる。
そんな投資対象が世界中のどこにあるのか?
現在、米国債価格が史上最高値を記録しているのは、国家だけが唯一信用できる対象になっているからである。 これ以上安全な投資対象が簡単に生まれるはずがない。あるとしたら国有化された金融機関だが、それは最早国家と一体のものである。
現在進行中の事態は、「市場(の住人たち)は信用ならない。それより国家の方がマシである」という断が、他ならぬ市場の住人たち自身によって下されているということなのである。
そうである以上米国債は簡単には暴落しない。従ってドルもジリジリとは下がるが、大暴落までは至らないと私は考えている。

ドルが暴落する可能性として唯一ありうるのは、中国が大量に貯めこんだ米国債を売りまくることだけであるが、それも考えにくい。米国債→ドルが暴落すれば米欧というお客さんを中国は失うことになるからだ。現在中国が行っている人民元安操作は、お客さん(米欧)を失いたくたいからである。だから中国が米国債・ドル売りに転じることは考えられないのである。
(本郷猛)
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List    投稿者 hongou | 2008-12-08 | Posted in 06.経済破局の行方3 Comments » 

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コメント3件

 しのぶ | 2009.03.28 23:29

>☆まず必要なのは、意識的な『脱マスコミ』です。
>☆だから、次に必要なのは、意識的な『脱アメリカ』です。
マスコミやアメリカがおかしいって気づくためにも、事実を知れる場が必要ですね★

 kota | 2009.04.02 20:32

>日本は明治から戦前までは先進諸国に負けないよう、国づくりと市場拡大を目指してきました。
戦中は挙国一致体制で国家が市場を管理下に置きましたが・・・
このブログの別のシリーズで明治から敗戦までの流れを追っているのですが、色々調べれば調べるほど、欧米のような金貸し主導ではなく、国家主導のまさに“挙国一致体制”だったのではないかと思えてきます。
本格的に市場化されたのは戦後のたった70年であることや、市場の衰退状況を考えると、十分市場と国家の逆転は可能だと思います。

 britain hermes bags | 2014.02.02 1:28

hermes 845gv 日本を守るのに右も左もない | 〔日本政治のしくみ8〕認識形成の場に参加することで脱マスコミ・脱アメリカへ

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