2009年02月28日

国家の元に紙幣発行権を取り戻す~G20に対するジェームズ・ロバートソンの通貨改革案【2】

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引き続き「G20へ向けた通貨改革の国際アクション」を引用します。
国際的通貨体制が設立された場合、国家の通貨体制はどのように改革されるのか、が今回の主要なテーマとなります。
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国家の通貨改革
NATIONAL MONETARY REFORM

12.異なるそれぞれの国において導入された通貨改革はおそらく、彼らの政治的および経済的環境における差異に合うように、細部にわたって順応されることだろう。ありふれた例として、イギリスの状況を挙げてみると、[全体の]5パーセントに満たない公的な通貨供給が今日、国の機関によって、紙幣や硬貨として創り出されて発行されている。民間銀行は、流通に費やされる負債として顧客の口座に金額を書き込むだけで、残りの95パーセントのお金のほとんどを無から創造している(※2)。それはお金と区別されるかのように――公的な通貨供給のほとんどを民間銀行が創造しているという事実を言及するのを避けるため――しばしば「信用(クレジット)」と呼ばれる。
13.仮に現在の処置が現状ではなく、われわれがゼロから出発していたならば、同一の企業が2つの矛盾した機能をあわせ持つべきであるなどとは、誰も提案しなかったことだろう。すなわち次の2つである。
・社会全体を代表して、公的な通貨供給の95パーセントを効率的かつ公正的に流通させること。
・貸付および借入のための市場における私的利益のための競争。
この2つの機能を混合することが、両者の効率性と信頼性を低下させていることは明白であると思われる。
14.事実として、金融財政の安定性の危機は、それらの機能を結合することによって必然的に生じたものである。その理由は、良く知られているように、2007年シティバンクの辞任する最高経営責任者によって民間銀行家の視点から言い表されたものである。危機に見舞われた自身の銀行から追放される際の埋め合わせとして、何百万ドルものゴールデン・パラシュートを受け取る直前、チャック・プリンスは次のように説明した「音楽が流れている限りは、立ち上がって踊らなければならない。」群集が押し寄せてきたならば、銀行家にとっては、単独でいることがより善策だったとしても、群集と伍して過ちを犯すことのほうがより良いことである。
※2:これがいかに作用するかについての詳細は、デイヴィッド・ベッグ、スタンリー・フィッシャー、ラディガー・ドーンブッシュ著「経済学」(学生の必読書)を参照されたい。(2003年、マクグロウ・ヒル出版、第7版。316ページ~318ページ)http://www.mcgraw-hill.co.uk/textbooks/begg


2つの機能の分離
Separating The Two Functions

15.2つの補足的な手段からなる基礎的通貨改革は2つの機能を分離することになるだろう。
(1) 国有化された中央銀行へと通貨創造の職務を移す。それは今日創造されている銀行券だけではなく、公的資金の供給の主要な構成要素である、今日主として電子的に保持され、転送されている銀行口座預金も含まれる。
(2)民間銀行を含めた他のいかなるものにも――鋳造硬貨や偽造銀行券が犯罪行為であるように――銀行口座のお金を無から創造することを禁止する。
16.こうした補足的な手段は、国家の通貨供給を民間銀行の手によるものとせず、本当の意味で国有化するものである。改革ののち、現在の危機が安定したとき、それまで国有化されていた民間銀行は民営化され、そして営利的な市場において、既に存在しているお金を貸し借りすることによる競争を自由に行うことができるようになる。
17.2つの手段のうちの最初のものは、公共の利益における公的通貨供給を直接的に創造し、維持する政府機関を設立するものである。後者は、今日よりも、貸主と借主との間でのローン促進のため、より競争力のある市場をもたらすものである。民間銀行がお金を創造するという現在の特権を失うことで、無料の景品としてそれらの主要原材料与えられない通常の民間部門の事業と民間銀行とを一致させることになるだろう。それは民間銀行に、顧客に対してより多くのサービスを今よりもっと効率的に提供し、支払いサービス産業において新規参入者をひきつけることをより簡単にするように奨励させるものとなるだろう。


国家の通貨供給の国有化
Nationalising the National Money Supply

18.すべての新しい銀行口座の創造に関する責務を中央銀行に移行させることは、1844年のイングランド銀行条例のもとで銀行券に生じたものと同様の事態をもたらすだろう。この条例は、私設銀行や商人の信用手形としての起源をもち、数世紀にわたって支払いの手段として発達を遂げ、銀行券はお金になったことを認めた。したがって、その条例によってイングランド銀行に通貨を発行する権限を移譲したのである。それと同様に今日、われわれの現在の銀行口座にあるお金(要求払い預金)はもはや単なる「預金(クレジット)」ではなく、銀行券として即座に費やすことができるお金であるということは、ほぼ周知の事実である。通貨を創造する職責は、何年も前に中央銀行へと移譲しておくべきだったのである。
19.イギリスへの提案は、経営上独立している中央銀行が、選出された政府によって打ち出された通貨政策目標を実行し続けるべきであるというものである。しかし、中央銀行は間接的に金利を管理することで、負債として銀行が創造する新たなお金の量に対して影響をもつことはなくなる。その結果それはお金を負債なしで、政府の公的収入として創造し移送する。民主的な議会の予算編成手続によれば、その後政府は、他の公的収入とともにお金を公共の目的に使い、それを流通させる。現在生じているような、例外的に発生するいかなる金融危機の場合においてのみ、中央銀行は創造したお金の使途を決定することに一役買うことになる。中央銀行は、経営上の独立をこれからも継続すべきである。選ばれた政府の政治家が不要なほど多額の追加的通貨供給を中央銀行に命じ――例えば次の選挙で勝つためといったような――彼らが政治的に利用するようなことがないようにするためにも。
20.イギリスにおいては、一国においてのみ導入されるというならば、通貨改革は経済にダメージを与えかねないものであるとして反対されてきた。それはすなわち、負債として創造されたお金によって彼らが得られる助成金がなくなってしまうことで、イギリスの銀行は他国の銀行に対し、競争面で不利な立場におかれることになる。また「シティー・オブ・ロンドンが世界最大の銀行都市の地位を明け渡すことになりかねない」というものである。実際のところ、経済評論家は現在、金融部門の独占は経済に不利益を与えるものであると示唆している。とはいえ可能であるならば、国家的通貨改革を少なくともいくつかの最も経済的影響力の大きい国々――たとえばアメリカ、イギリス、日本、ユーロ圏、可能であればロシアや中国――で同時に導入することができれば、この反対を無効にするのに一役買うことだろう。だからこそ、G20の会合で国家的通貨改革が議題にあげられるべきなのである。


以上引用終わり。
重要なポイントは15.に示されているように、「民間主導の中央銀行制度を廃止し、通貨発行権を国家に移行させること」です。
左右ブログでもかねてから国家紙幣の議論をしてきましたが、世界中で現在の経済システムの問題性が議論され始めているのは嬉しい限りです
一方で懸念事項も残ります。
国家は社会を統合する機関ですが、現状国策を決定する政治家・官僚の腐敗ぶりは誰が見ても明らかなことで、国家に紙幣の発行権を委ねても良いのかという問題が残ります。
国家紙幣論を提案する上で重要な認識は国家の政策が国民の世論を反映しているかを監視する機関が必要だということです。
それは誰もが参加できる世論形成の場=共認形成の場でならなくてはなりませんが、その場をどのように構築するのか?もセットで議論の俎上に乗せていく必要があります。
次回はシリーズ3回目、お楽しみに

List    投稿者 andy | 2009-02-28 | Posted in 06.経済破局の行方2 Comments » 

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コメント2件

 匿名☆ | 2009.06.23 19:21

中国から農村という基盤が消えたら…。あれだけたくさんの人口が基盤を持たずに都市に集中したら…。何かあったときに、都市は崩壊・帰るところ(農村)もないとなったら、暴動が起きて国はぐちゃぐちゃになるんじゃないでしょうか?

 hermes handbags shop | 2014.02.02 7:38

cheap hermes outlet 日本を守るのに右も左もない | 中国農村の空洞化と過保護の急増

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