AIGの財務データ(資本総額・自己株式・保険債務総額)
2008年09月18日「リーマン→メリル→AIG~金融破綻の連鎖が意味するものは?」で、以下の課題を提起した。
★新聞によれば、AIGの株式の80%を取得する「権利」をFRBが得て、それを担保に9兆円融資したということだが、80%を取得する「権利」とはどういうことなのか? 空証文にすぎないのでは?
★もう一つの疑問として、AIGが株式市場に上場しているのなら、80%も自社株で持っているはずがない。
★株式80%が担保価値があるとしても、それだけでは十分ではない。
AIGはFRBの所有物になったに等しいわけだが、AIGに対して保険解約が殺到することになる。そうなれば忽ち破綻。ところが保険の契約金をFRBが返してくれるわけではない。株主の責任は出資額が限度だし、保険金額まで保証することなど議会承認が得られるはずがない。保険解約が殺到したら、AIGはどうなるのか?⇒AIGの資本金総額と保険契約総額は?
基礎データが、いくつかわかりました。
いつも応援ありがとうございます。
以下、出典はAIGの財務情報「2007年アニュアルレポート」2007年12月期末の貸借対照表による。
●負債残高合計 9646億ドル
生命保険及び医療保険の
将来保険給付債務 1361億ドル
保険契約預り金 2585億ドル
長期借入金 1629億ドル
金融サービス負債+CP 622億ドル
分離変額勘定 787億ドル
貸付有価証券に係る
現金担保返済義務 820億ドル
その他 1842億ドル
●株主資本残高合計 958億ドル
普通株式(額面) 69億ドル(=発行済み株式数27.51億株×額面2.50ドル)
資本剰余金 28億ドル
利益剰余金 891億ドル
自己株式(取得原価) ▼67億ドル(=取得した普通株式数2.22億株×買戻し価格)
株式購入の前払金 ▼9億ドル
その他包括利益(損失)累計額 46億ドル
発行済み株式のうち、自己株式比率は8.1%(=2.22億/27.51億株)しかないということになる。
ちなみに、最近AIGは急速に自己株式を増やしているとのことである。2007年1~12月にかけて7600万株以上の普通株式を買い戻し自己株式化し、さらに、2008年1~2月にかけて1200万株以上を自己株式化している。
ちなみに、AIGの財務情報「2007年アニュアルレポート」には、2007年12月末現在における「契約債務およびその他の取引契約債務総額」とその満期到来時期が記載されている。
満期到来期 1年未満 1~3年 3~5年 5年超
●債務総額計 1兆261億ドル 1203億 1230億 940億 6888億
保険および投資契約債務 6456億ドル 324億 428億 423億 5281億
借入金および利息 2396億ドル 492億 412億 331億 1161億
その他の債務 1409億ドル 387億 390億 186億 446億
貸借対照表の負債残高における「将来の保険給付および保険契約預金額」の合計よりも、債務総額の「保険および投資契約債務」の額の方が大きくなっているが、AIGの財務情報「2007年アニュアルレポート」はその理由を次のように説明している。
AIGは、死亡率、疾病率、将来の経過料率、投資収益および資本の金利、ならびにこれらを相殺する可能性のある保有保険契約から得られる預金および保険料など重要な仮定を用いて、これらの保険契約の割引されていないキャッシュ・フローを見積もった。この見積もりに使用した仮定は変動することから、実際に支払う金額は、表示された金額から大きく変更することがある。上記の表の金額は、割引前の金額であり、貸借対照表に含まれる将来の保険給付および保険契約者預金額を超えている。
どうやら「契約債務およびその他の取引契約債務総額」の方が安全側をとった数字らしい。但し、
大半の保険契約には満期がなく、将来結果的に保険金を支払わなくても済む保険契約もあるらしく、このような保険契約については①現在死亡など保険金が支払われる事由が発生するまで支払を計上しておらず、②生存を支払条件とし、③AIGの支配が及ばない契約の解除またはその他予想外の事由により支払義務っが生じた金額を除いている。
ということだから、実際の保険契約債務はもっと多い可能性がある。
いずれにしても、株主資本残高958億ドルに対して、最低6456億ドルもの保険契約債務を抱えていることになる。
(本郷猛)
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コメント2件
peachpuff hermes | 2014.02.03 2:14
hermes bags new collection 2012 日本を守るのに右も左もない | 『EUって、どうなっているの?』5~主要通貨為替変動グラフ(長期・短期)~
blogger0 | 2008.12.09 20:59
2,000億ユーロ(約25兆円)規模の経済対策が提案されたり、欧州中央銀行(ECB)による政策金利の0・75%引き下げなど、なりふり構わぬ政策でユーロの急落は止まったようですが、本当の危機はこれからでしょうね。
「東欧は本当にヤバイ」という話も、日本のマスコミからはほとんど流れませんね。
ロシアもこれだけ原油価格が下落しては、かつての裏庭に関わっている余裕はないのでしょうか?