金融と戦争の歴史、世界が大きく変わるかもしれない
※ウクライナ情勢をどう見るか?(視点)http://blog.nihon-syakai.net/blog/2022/03/13268.html
ロシア・ウクライナ戦争の大局の着眼点は、「ドル基軸通貨」「資源(エネルギー・食糧)」がどうなるかです。
ここにきて、この二つの要素が連動して、世界史上の転換を迎えつつあるように思われます。
■「金融と戦争の歴史」を紐解くと、いくつかの構造(ポイント)が見えてくる。
・国家の起源は戦争にあるといわれるように、古代から国家は戦争を繰り返してきた。古代ローマ帝国もそうだが、戦争資金は、民衆からの徴税、属州からの収奪、交易による蓄積利益が原資だった。
・国家が戦争のために「金を借りる」仕組みは12世紀北イタリア(ベネチア、ジェノバ)から。国王が、十字軍遠征など戦費調達のために、交易で富を蓄積した商人から金を借りる、貸付債券の仕組みが生まれた。
・16世紀オランダで国債の発行制度。ハプスブルグ家はフランスとの戦争に巨額の資金が必要となり、領地の議会に元利返済のための徴税権を与え、その議会への信用を元にして国債の発行制度が形作られた。
・17世紀イギリス、イングランド銀行設立によって「国債システム」確立。18世紀以降のイギリスは国民所得の数倍に及ぶ国債を発行することができ、この財源をもとに対外戦争を勝ち抜くことが可能となった。
★「中央銀行システム(通貨発行特権)→財政軍事国家」の誕生。
金融が戦争をエスカレートさせる、金融勢力が国家(世界)を支配する構造の誕生ともいえる。
・第一次世界大戦~第二次世界大戦を経て、20世紀の世界覇権≒金融と戦争の中心勢力はアメリカへ移る。
★「ドル基軸通貨体制」の確立。アメリカが世界中で(表に裏に)戦争をするのは、ドル基軸通貨が資金調達において圧倒的有利だからでもあるし、最大の国益=力の源泉である基軸通貨特権を守るためともいえる。
(例えば2003年イラク戦争は、原油取引をドル建てでなくユーロ建てにしようとしたフセインを潰す目的だったといわれるが、その膨大な戦費は日本の小泉政権に米国債を買わせることで調達した)
★しかしドル基軸通貨体制が永続するとは考えられない。米国の恒常的な経常収支赤字→赤字通貨ドルを買い支える国を常に必要とするわけだが、膨張する負債を永遠に押し付け続けるのは、構造的に無理がある。
■ロシア・ウクライナ戦争は、金融支配に抗う戦争でもある。
米欧側は経済制裁として、貿易制裁、国際送金網SWIFTからの排除、外貨準備凍結など、ロシア国内経済の弱体化→崩壊、戦費調達の遮断を狙って様々な手を打ってきたが、どうも効果が怪しい。
ロシアは対抗策として、原油・天然ガスの輸出先と決済通貨をコントロール、さらにルーブルの金リンク・資源リンク。国際送金網は中国主宰CIPS。★「通貨戦略と資源戦略を一体化」させて防衛、対抗している。
※ウクライナ戦→ドル圏縮小・米金融引き締めから、米バブル・ドル崩壊へ。ドル基軸の歴史。
http://www.kanekashi.com/blog/2022/05/9791.html
★今回の戦争は、ウクライナを盾とする「通貨圏」を巡る戦いでもあり、世界は「ドル基軸圏」(米国・英国・日本・韓国・豪州+ユーロ圏の欧州)、「非ドル圏」(ロシア・中国を軸にユーラシア勢力)に分裂しつつある。
非ドル圏に、中東産油国、インド、中南米やアフリカの諸国まで参集する可能性もある。
(ドル基軸支配を終焉させるために、これらの国々が手を組む可能性は十分ありうる。しかしその後、非ドル圏の大国が安定的な秩序を構築できるのかは未明(疑問)である)
■大局をとらえるならば、、、ドル基軸圏→近現代の金融支配の主導勢力、バブル化したマネーパワーが武器。非ドル圏→資源、実物パワーが武器。現在の世界の物価上昇の問題も絡んでくる。インフレとは、通貨価値の下落→マネーパワーの低下、実物パワー(エネルギー・食料)がさらに力を持つことに他ならない。
※日本は大丈夫なのか? http://blog.nihon-syakai.net/blog/2022/04/13307.html
政府・日銀はドル基軸に賭けているようですが、「世界の多極化」を前提に戦略を追求する必要があります。
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