2007年11月23日

戦争→自滅によるドル下落か?金融操作によるドル下落か?

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田中宇の国際ニュース解説の11月6日の記事「ドルは歴史的役目を終える?」は、「今後、ドル支配がどうなるか?」を読む上での叩き台となる記事である。
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▼蕩尽に追い込まれたアメリカ

米政府がドルの信用不安を起こすまで財政赤字と経常赤字を拡大してしまう「失敗」は、ニクソン、レーガン、現ブッシュと3つの政権で繰り返されてきた。すでに述べたように、失敗の繰り返しは、基軸通貨の国は経常赤字を拡大せざるを得ないというジレンマに起因している。一般の米国民は、ドルが世界の通貨でなくても困らないが、米の多国籍企業(財界)にとっては、赤字を増やしても基軸通貨が維持されるのが望ましい。ニクソン・レーガン・ブッシュはいずれも、財界を支持基盤とする共和党の政権である。
アメリカの前にはイギリスが、世界最強で基軸通貨を持つ覇権国だったが、当時の貿易決済は金地金で行われ、イギリスは金の保有を増やすため輸出を振興し、植民地だったインドの織物産業を破壊して、イギリスの織物の対インド輸出を増やそうとした。だが、産業を破壊されたインド人は貧しくなってイギリス製品を買えなくなり、この戦略は失敗した。帝国の政府が黒字を貯め込んでも、世界経済は発展しない。結局、イギリスは二度の世界大戦に引き込まれ、戦費の急増で黒字を使い尽くし、大英帝国は失われ、植民地は独立して自前の経済発展ができる素地が作られた。
私は、イギリスを二度の世界大戦に陥れ、黒字を蕩尽させ、植民地の独立と経済発展を誘発したのは、イギリスの資本家層だったのではないかと疑っている。資本家にとっては、富が帝国政府に一極集中しているより、世界各地に偏在し、それを元手に世界各地で生産や経済発展が行われた方が、全体としての儲けが拡大する。帝国本体(覇権国)はむしろ、世界から輸入して赤字になった方が良い。
大英帝国の崩壊期、イギリスは覇権国の地位とノウハウをアメリカに委譲した。ブレトンウッズ体制の創設会議は、その委譲作業の一つである。イギリスの代表だった経済学者兼外交官のケインズは会議で「巨額の経常黒字を抱える国に、強制的に赤字国からの輸入を増加させたり、罰金を払わせたりする制度を作るべきだ」と提案した。世界経済の成長にとって最重要なのは「消費」「輸入」であり、輸出ばかりして黒字を貯め込む国は悪だという考え方だった。当時、世界最大の黒字国はアメリカで、イギリスは大赤字だった。
アメリカの反対でケインズ案は実現しなかったが、代償的にアメリカでは「国民の福利厚生のため財政赤字を増やす」というケインズの「経済学」が米政府の政策となり、財政の大盤振る舞いがおこなわれた。すでに述べたように、もう一つの大盤振る舞いであるマーシャルプランも、イギリスに向けて発表され、米国内に対しては隠された。蕩尽的なアメリカの赤字化策は、イギリスと、米英資本家による策略だったと推察される。
ブレトンウッズ体制は、大英帝国時代の金本位制より蕩尽に適していた。
金本位制だと、政府保有の金がなくなると輸入ができなくなるが、ブレトンウッズ体制は、金1オンス=35ドルの固定相場制を維持する制度を意図的に欠落させたため、ドルを刷るだけでアメリカはどんどん輸入でき、ニクソンショックまで30年近く体制が持った。その後も、金とドルの関係性を外してドル本位制(G5、G7による名目的変動相場制)を続けたため、アメリカは追加的な支出が可能になり、アメリカがドルを刷って赤字を拡大し、世界経済が発展し続ける体制が維持された。

▼共和党は資本家の手先、民主党はイギリスの手先?

二度の大戦で覇権を失った後、現在まで続くイギリスの国家戦略は、アメリカを覇権国に仕立て、ドル本位制を採らせ、米英中心の世界体制が経済的・政治的に維持され、イギリスがその黒幕であり続けることである。一方アメリカは、イギリスの策略に席巻されつつも、機会を見つけては、自国のもともとの国家戦略の方向に事態を転換させようとした。イギリスの国家戦略は「米英が世界を支配し、英が米を操作する」という米英中心主義なのに対し、アメリカ本来の国家戦略は多極主義で、各大陸に覇権国が存在し、覇権国どうしの談合で世界を運営するというものである。
ソ連や中国を敵視した冷戦はイギリス的だが、ニクソンの訪中や、レーガンの冷戦終結はアメリカ的である。ニクソンやレーガン、ブッシュといった共和党はアメリカ的な多極化を誘発し、米英中心の国際金融体制を強化した民主党のクリントン政権はイギリス的である。共和党は資本家の手先、民主党はイギリスの手先、といえるかもしれない。
日本をめぐっては、日中の接近はアメリカ的(日中連携によるアジアの自立)だが、北方領土の「4島返還」つまり日露接近拒否や、「拉致問題の大騒ぎ」つまり中国主導の東アジア安定策への協力拒否などは、イギリス的(対米従属維持)である。日本の外務省やマスコミの多くは、イギリス的な方向に操られている。日本は対米従属だが、アメリカ的ではない。

▼米英間の騙し合い

今のブッシュ政権がやっていることは、イギリス的なふりをしたアメリカ的戦略である。ブッシュは02年に「単独覇権主義」を発表したが、これはイギリスに対する強烈な皮肉である。単独覇権を発表し、自滅的なイラク侵攻と、世界的な反米感情の扇動、ドルの無駄遣いしすぎをやって、結果的に米英の覇権を潰し、世界を多極化している。
通貨の面でも、ニクソンやレーガンは、経済政策の半ば意図的な失敗を重ね、ドル崩壊を誘発したが、ブッシュ政権も同様に、連銀(FRB)の、ここ数年の利上げと利下げのやり方、通貨発行量の増加などを見ると、意図的にドル潰しをやっている観がある。政権中枢の多極主義者がドルを崩壊させた後、その周りにいるイギリス的な人々がドルの立て直しに奔走し、ドルの世界体制を何とか維持する展開が、70年代以降繰り返されてきた。
今回もまた同じパターンが繰り返されるかもしれない。だが、ニクソンやレーガンの時代のドルの立て直しが、日本やドイツに、イギリス的な米英中心体制の維持の方向で協力をさせることで行われたように、次回に必要な立て直しは、中国やロシア、インドなどに、米英中心体制の方向で協力してもらうことが必要になっている。
そしてブッシュ政権は巧妙にも、中国・ロシア・インドなどを反米(多極化)の方向で結束させ、ロシアのプーチン大統領らが「米英中心の世界体制は、もうやめた方がいい」と主張するように誘導している。イラク侵攻前なら、G8に中国とインドを入れてG10にして、人民元などの為替を切り上げて「第2プラザ合意」を実現し、米英中心主義の通貨体制を守るという展開が十分あり得た。しかし今や中露は、米英中心体制に対抗する「上海協力機構」を作り、インドも包含する方向にある。中印露が米英中心体制の強化に協力する見込みは低下している。

▼任期末までドル潰しを続けそうなブッシュ政権

ブッシュ政権が望むアメリカ的な通貨体制は、ドルのほかにユーロ、中東産油国の共通通貨、東アジアの共通通貨などが並び立つ、多極的な体制である。IMFやG7は昨春、国際収支の不均衡を是正する方策として、中東産油国と東アジア(日中)に対し、地域の共通通貨を作るよう求めている。中東産油国や日中は、要請に反対はしなかったが、その後何もせず、共通通貨の創設は頓挫している。
今後来年にかけて、米経済はさらに失速し、アメリカ発の金融危機がひどくなり、ドル信用不安が加速するだろうが、ブッシュ政権としては、事態の悪化を事実上放置し続け、その一方で、中東産油国や中国などに再度、共通通貨を作れと圧力をかけると予測される。
東アジアの共通通貨の構想は、以前は「日中とASEAN」という組み合わせだったが、日本と中国の関係が今後も改善しない場合、むしろ中露中心の「上海協力機構」を基盤とした共通通貨作りが先行し、日本は通貨の多極化の中で孤立していく可能性もある。日本の経済力と経常黒字、外貨準備の巨大さを考えると、日本は外されそうもないが、事態は流動化している。
通貨が多極化すれば、世界経済を回すための「消費大国」の役割も多極化され、アメリカの負担は軽減され、再び製造業を発展させられる。アメリカでは1960年代以来、自国の輸入を増やすため、自国の製造業を自滅させる策が繰り返されてきたが、その必要がなくなる日は遠くない。

田中宇氏のこの分析によれば、アメリカの資本家→共和党が多極派(ドル支配離脱派)で、イギリス→民主党が一極派(ドル支配固執派)ということになる。
一方、副島隆彦氏はその著『ドル覇権の崩壊』(徳間書店)で、ジェイ・ロックフェラーの支配下にあるゴールドマンサックスがドル売りを仕掛け、それはドルを売れないデビッド・ロックフェラー系の金融グループへの攻撃に他ならないと述べている。デビッド・ロックフェラー→共和党(ブッシュ政権)で、ジェイ・ロックフェラー+ロスチャイルド連合→民主党とのこと。副島説によれば、ドル支配固執はデビッド・ロックフェラー→共和党で、ドル支配離脱はジェイ・ロックフェラー+ロスチャイルド→民主党ということになる。
どちらが事実なのか?
以下は仮説。
ドル一本槍の支配に限界を感じているのは同じ。
但し、ドル一本槍り支配からの離脱する、その路線・手法に違いがありそうだ。
つまり、「戦争による自滅→ドル下落を目論む派」と「金融操作によるドル下落を目論む派」が存在する(サブプライム問題はおそらく後者が引き金を引いたのではないか)。前者が共和党を中心とする勢力で、後者が民主党を中心とする勢力か?
いずれにしても、ドル一本槍りの支配構造が限界を迎えているのは、背後にいる金融資本の共通認識であり、そうである以上、今後ドルの下落が進む可能性が高いだろう。
(本郷猛)

List    投稿者 hongou | 2007-11-23 | Posted in 06.経済破局の行方4 Comments » 

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コメント4件

 エコ★エゴ☆あざらし | 2008.02.04 13:00

水産業
>現在すでに5000億ドルの市場が出来ていて、数年後にはそれが3兆ドルになると予想されている。http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thj0483/ishikof_cis/deseronde/030205.html
みたいです。
生活必需品を押さえておきさえすれば、市場規模は自由にコントロールできるんですね~。
なんつ~狡猾な。。。
ところでウォーターバロンはロスチャイルド系??

 匿名 | 2008.02.06 10:36

対抗する日本ドメスティック企業が日本ヘルスと西原では、あっという間に制覇されるでしょうね。
官に守られて楽な仕事をチンタラとしていたツケです。

 Hiroshi | 2008.02.11 2:23

>ところでウォーターバロンはロスチャイルド系??
場所柄ロスチャイルド系だと思いますが(スエズの筆頭株主はベルギーのランベール銀行。)、結構売買されていたりするし、中南米でアメリカとくっついて商売しているのを見るとロックフェラーの可能性もありますね。

 apricot hermes bags | 2014.02.03 11:13

hermes website down 日本を守るのに右も左もない | 日本に乗り込むウォーターバロン;世論誘導しつつ、世界の水事業の民営化→支配を進めている

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