2009年02月22日

米国債暴落が先か?ドル暴落か?

「ビジネス知識源:遙かな国トルコ(3):経済と文化のコンチェルト」(吉田繁治氏)からの引用。
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■12.[補足]対外債務国:米国の通貨覇権が後退する時期
現在の米ドル基軸体制が、別の体制に移行するには、あと10年余はかかると言う多くの論者の、唯一の根拠は「1929年の大恐慌から、米ドルを基軸通貨にしたブトンウッズ協定(1944年)まで15年かかった」ということでしかない。デリバティブの現代金融と、国家の財政信用に対する分析的なものではない。米国はもっと強いという情緒的なものです。
しかしイラク戦争後からの、米国の、経済・政治・通貨の3領域での覇権の後退は、歴史のアナロジーでは、共産政府の巨額赤字から米国との軍拡競争に敗北したソ連邦の、経済・政治・軍事の崩壊(1989年~)に似ています。(注)通貨の信用は、直接には、その国の財政信用に依存します。その背景になるのが、経済力・政治力・軍事力です。なお覇権とは対外的な強制権力を言います。通貨覇権は、海外に、他の紙幣より米ドルを信用させる力です。他の通貨より、米ドルと米ドル債を持ちたいと思わせる力です。
米ドルの通貨覇権の後退は、多くの論者が言うよりもっと速いと見ています。その根拠は、この2009年に、何でもすると言う米政府が、金融・経済対策の財源を作るために刷る国債が(現時点で)200兆円規模、半年後には500兆円の発行見積もりにもなるからです。
2007年は、米国の新発国債の94%は、海外が買っていました。国内では買う余力がなかった。2009年、人類の歴史で最大の、米国の新発国債を、米国はどこに売るのか? これが、オバマ政権の喫緊の難題になるからです。先行するのは、米国の株価です。再び下げに入った米国株(ダウで$7465:09年2月19日)が$6000に向かうときが、新発国債が思うように売れないことを示す先行指標になる。株価は、約6ヶ月、経済の状態を先取りします。企業の次期利益と期待金利を予想して、動くからです。
政府が、金融・経済対策を「言うのは容易」です。アナウンスメント効果。しかし、200兆円~500兆円分という巨額の新発債に対し、海外からの入札が少なく、札割れが起こって、米国の市場金利が上がれば、アナウンスメント効果で引っ張られていた資金は、米国債売りの逆流を起こします。これが、6ヶ月内に起こる可能性が、相当に高い。米ドルは、「2009年は、他に代わるものがない基軸通貨とは言われながらも、価値が崩落し、世界は通貨混乱の時期を迎える。」ことになる可能性が高いと見ます。
政府と企業の決算期の3月に向かう、09年2月末を注目しましょう。
「経済救済・金融救済のためなら何でもやる」と、米政府が言うのは、「資金の根拠ある手段はないが、ともかく、政府は手段を尽くす。」ということの、別の表現です。AnywayやAnythingは、論理の言葉ではない。情緒です。根拠を示せない願望であり、希望です。
政府による、あらゆる経済対策には、財源が要ります。財源を、FRBに国債を買わせ、マネーを印刷してもらって作る、とは政府は口が裂けても言えない。しかし米国には余剰預金がない。市場での通貨信用がないから(新規国債が売れず)、最後の手段になる。これが中央銀行による国債の直接引き受けです。これは、戦時国債に似たものになる。
企業が、来月の資金繰りに窮したとき、社長が、「経理部長(財務省)に手形を刷らせ、私(中央銀行)が印鑑を押す手段が残っています。」と取引先に言ったらどうなるでしょう。取引先が寄せる信用はなくなり、「ついに、そこまで来たか」と認識され、商品の引き揚げや、取引停止が起こるはずです。手形(及び通貨)は相手が信用し受け取るから、価値がある。同様に、国債は買い手がいるときのみ価値が有効で、政府の資金源になり得ます。相手(海外や国内)が買わない(あるいは買えない)国債を発行すれば、逆に、政府信用は崩壊するのです。政府が言うAnywayやAnythingが意味することがこれです。FRBが、物的な資産余力をもつわけではない。その中身は、空洞です。これが、かつてのトルコで起こった、リラの暴落です。
中央銀行は単に「制度」です。各国の中央銀行に、国債以外で、通貨発行に見合う資産があるわけではないことを申し添えて置きます。米国の国債が売れなければ(言い換えれば、その信用がなくなれば)、FRBも信用がなくなります。蛸(たこ)が、自分の足があるから食料はまだあると言うことと同じ、お笑い草になる。
(注)オバマ大統領の1.21は、最高裁長官が、宣誓の語順を間違え、やり直すというミスだけで、無事に、熱狂のうちに終わりました。まだ「通貨政策」は出ていません。新規国債発行の額も、まだ定かでない。
$2兆(180兆円)になると言われる。しかし、金融・経済対策にそれではとても足りない。ゴールドマンサックスが集計した金融機関(保有証券)での総損失は$4兆ですが、それが、今は1ヶ月$1兆(90兆円)の規模で拡大しているからです。
忘れてはならないのは、FRBのバーナンキ議長が、「FRBが、これ以上の金融機関の不良債券を買い、通貨を刷るのは、もう限界だ。」と昨年末に、発言していることです。
本マガジンで昨年11月に示した米国FRBの、約3倍に膨らんだ資産内容が、市場で、問題と認識されるのはいつか? これにかかっています。FRBの資産は金融機関から買うかまたは担保に預かった価値の低い証券であり、負債は、その対価である金融機関の当座預金預かりと通貨発行です。つまり、通貨発行です。

要点は、いずれ米国債の買い手がいなくなり、中央銀行FRBが米国債の直接引受けせざるを得なくなる。それが明らかになった時、米国債売りが始まり、米国債が暴落する。同時にFRBの信用も失墜するということだ。
しかし、米国債はFRBがドル札を刷って買い支え続ける限り暴落はしない。
問題は、そうして無制限に印刷されたドルの価値がどうなるか?である。

今の所、ドルは円以外の通貨に対してドル高であるが、その要因は
①アメリカの金融機関・企業がその対外資産を売って、ドルに換金し資金繰りに充てているからである。それがいつまで続くか?
②イギリスもEUもロシアもアメリカ以上の経済危機に陥っており、ポンドやユーロやルーブルに比べれば相対的にドルの方がマシということも無視できない。この状態はどこまで続くか?
米国債はドル札を刷って買い支えることはできる。
しかし、為替市場ではドルを買うには外貨が必要で、ドルでドルを買うことはできない。
従って、起こり得るのは、米国債の暴落より先行してドルが暴落することではないだろうか?

(本郷猛)
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List    投稿者 hongou | 2009-02-22 | Posted in 06.経済破局の行方2 Comments » 

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コメント2件

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