業態レボリューション-1 ~成功の裏に「業態革命」あり・農業編~
皆さんこんにちは!
今年もいよいよ残り少なくなりましたね。・・・この一年はいかがでしたか?
この社会を俯瞰してみると、昨年の3・11大震災、原発事故を契機に、本能回帰、そして心のあり様が重視される本源的な意識潮流が、私たち大衆の中ではますます加速しているように感じます。
しかし一方、この国を司る政治の世界は、私たちの意識とは真逆の様相にある。と断言せざるおえません。マスコミの偏向報道に依拠し、不正選挙まで強行(ほぼ間違いない)し誕生した新政権ははやくも、民意を捻じ曲げて、原発再稼働、消費税増税、TPP推進などの市場原理維持、そして憲法改正など、アメリカ隷属へと邁進しようとしています。
多くの方々は、その動きに強く違和感を感じていると思いますが、この件に関しては当ブログの他の記事に委ねるとして、私たちはあくまで、現実のこの社会で日々、目の前の仕事に、そして生活にと向き合っている方々に向けて役立てる記事を書いていく事を目指して取り組んでいきます。(もちろん仕事も会社組織も、前提として「社会があってこそ」ですから、「注視」しつつ)
さて、今日から始める新シリーズ:『業態レボリューション』では、多くの働く社会人や就職を控えた学生さんを主対象にして、新年以降の活路を切り開いてゆくひとつの切り口である=『業態革命』についてお伝えしていきます。この記事で得られる認識を武器にして、今後の難局を軽く乗り越えていただきけることを期待したいと思います。
仲間と共に、大真面目に、様々な業界の成功事例等を集め分析、その可能性を抽出していきます。
どうぞ応援よろしくお願いします。
それではまず、生きるために不可欠な「食」を供給する『農』から考察していきましょう。
『食』そして『農』は、歴史を貫通して常に大きな課題で有り続けています。
近年でも食料自給率問題をはじめ、農薬まみれの輸入作物への不信、TPPによる業界不安、そして放射能汚染など根源的な問題が次から次へと顕在化し、全社会的に注目されています。
さらに、このように重要な農産物を供給する農業関係者は、現在の市場原理の枠に閉ざされ、これまでどおりにやっているだけでは全く儲からない、魅力の薄い仕事として貶められてしまっています。
『農』に明るい未来、可能性ははないのでしょうか?
・・・あきらめないで下さい。
こんな社会状況の中でも、頑張っている、成功している集団があるのです。・・・ここにヒントが隠されていないだろうか?何か可能性があるはず!
・・・という事で、まずはその事例を紹介していきましょう。(※農業限定ではなく、様々な業態でもヒントになりうる、応用可能なポイントがありますよ♪)
★成功事例紹介
伊賀の里モクモク手づくりファームには、人口8500人の小さな町に立地しながら、年間50万人もの観光客が訪問。
地元産豚肉を使ったハムやソーセージ、パンや地ビール、野菜ジュース製造販売。農産物の手作りや自然体験など、会員を組織化しながら体験事業を展開。加えて、レストランや温泉施設、結婚式場まで備え、一大テーマパークとしても人気を集めている。
また毎年、若者が就業や研修に訪れ、今や地域一帯の農業を担う存在にもなりつつある。消費者と生産者の交流の場となり魅力的な農場に成長したことで、観光農園の運営・加工・料理・農業など、様々な種類の雇用を生み出し、新たに参入した若者は、ファームに新しい企画やアイデアを持ち込み続けている。
※注目ポイントは『生産者・消費者の組織化』。
2.『和郷園』
和郷園は、20~30代の若手生産者を中心に、「地域特性を活かしたサステナブルな産業」「マーケットサイドに立った農業の仕組みづくり」という二つの問題意識から生産活動に取り組んでいる。
具体的には、異なる種類の農産物を生産している農家をまとめることに加え、産物に対する付加価値を高め「和郷園ブランド」として販売。
出荷管理も先端的で、農薬をいつ、どのタイミングでどれくらい使用したか?等の詳細情報を管理し、タイムリーに提供できるような仕組みを構築している。さらに、いち早く最新式の栽培技術を取り入れて安定した品質が高い栽培・収穫を可能にし、ヒット商品「イチゴ並みに甘いトマト」を生み出している。このように、高い商品力・技術力をベースにして、直接スーパーや飲食店に販売経路を絞り、柔軟な供給と販路構築することで成功している。
※注目点は、高い商品力・技術力をベースにして、臨機応変、柔軟な供給と販路構築を実現している点
地域の農家の皆さんの「規格外の農産物を現金化出来ないか」という思いからはじまった小規模な店舗。「生産者の会」会員は現在2,000人を越え、年商10億円、従業員は50名へと成長。「農協に頼らず、行政にも頼らない、生産者が主人公の直売所」「不思議な品揃え」「ミニ動物園」「グリーンファームの原点」 等、運営上の工夫をしている。
※注目点は、この10年増えてきている産直・直売方式の代表格で、そのほとんどの直売所でほぼ黒字経営を達成できている点。
直売所は「むらの財産を守り継承する農業」を実践する集落営農=新しい「社会的共同経営体」との連携、そして地域の商店街との連携というふたつの新しい連携によって地元に雇用、仕事を増やしている。そして、田舎暮らし志向の若者が活躍する場、都市で暮らす地元出身者がもどれるような仕事、地域産業を興している点も注目される。
4.『マイファーム』
耕作放棄地・休耕地の再生、体験農園などの管理運営サポートを通して、自分で作って自分で食べる「自産自消」を提唱。貸し農園を関東、東海、関西で約60箇所運営。大資本とは違い、農地を地主から借りて賃貸料を払い、貸し農園の売上との差額で収益を得ている。担い手が居ない農地を保全したいという農家の需要にも応えている。
貸し農園は、広さ11~20㎡程度の区画を1年間の契約で貸し出し。管理スタッフが農園を管理し、必要な農機具や水道、堆肥、肥料が利用できるうえ、プロの指導が受けられるので初心者でも農を体験できるようになっている。
※注目点は、週末農業など都市における貸し農園需要が増えてきた潮流を見抜いている点。また農園にとっては「貸す方がつくるよりも利益が出る」構造。
5.『わらび座』
株式会社わらび座は、1951年創業~1971年に株式会社化された秋田県の企業。日本の伝統芸能を中心にした演劇興行のほか、温泉やホテル、地ビール生産等を多角的に経営(たざわこ芸術村等)。その運営のポイントは
①.労働組合や市民運動を母体にした演劇の中身でファンを組織化。
②.演劇の中身に教育要素を取り込み、日教組を基盤にして、地元学校教師・生徒をファンに取り込むことに成功。
③.劇場にいかに来てもらうかを第一課題として全員営業を実施、地元町内会、婦人会を取り込む。
※注目点は、観客組織力、会員組織力といった『消費者の組織化』。
核引力は演劇で、これを集客源として強固な会員組織をつくりそこに『農』を塗り重ねている。
いかがですか?どの企業も、試行錯誤、創意工夫の跡がみてとれますね。そして、以下の様に整理出来ると思います。
★成功要因
1.「組織化」(農家の組織化、消費者の組織化=新しい販路開拓)
2.差別化可能な「技術開発」
3.「意識潮流」の把握→戦略化
ではここで、上記のような『業態革命』と言える新しい動きが実現した背景構造や、その「勝ち筋」に迫っていきましょう。
★背景構造
まず近年の時代の流れから押さえてみます。
1970年頃、豊かさが実現して物的欠乏が衰弱しました。モノを生産してもなかなか売れない時代に入ったのです。(それ以前は「三種の神器」に代表されるように、作れば売れる時代でしたから、生産者にとっては幸せな時代でしたね。)
※その為政府はジャンジャン国債を発行して、需要を人工的に煽り、無理ヤリ市場拡大を図りました。その結果が国の借金1000兆円。
では、工業生産とは一味ちがった側面がある『農』に、この構造はそのまま当てはまるのでしょうか?
『農』は人の生存を支える源である『食』を生み出す絶対不可欠な営みです。本来ならば、いい加減な市場原理を超えた地平で国策を練り上げるべき最重要分野ですが、情けないことに近年の政府は、欧米の金貸しの思惑に翻弄→隷属し、歴代の外交で負け続けた結果、自給率40%という極めて危険な状態に貶められ(世界中にこの様な国はない)、さらにTPPで日本の『農』の未来を差し出そうとさえしているのです。
構造的に、日本の『農』は、世界市場で負け戦さを恒常的に強いられているのです。
ブランド品や高付加価値家電と違い、万人が必要とし、普遍的に出回っている「食」は、市場の『旨み』である『価格格差』を演出して「儲ける」ことなど、はじめから出来ないのです。
しかし、先ほどあげた各企業は、現在の上記のような苦しい市場構造の中にあって勝っているのだから、スゴイですよね!
では、次にその「勝ち筋」を見てみましょう。
★業態革命の勝ち筋
まずポイントは、従来の「需要発」の発想から「供給発」への認識転換とその実現に向けた逞しい工夫思考にあります。
例えば、常識的な「需要=供給」という経済学の数式から考えてみると、これをイコールで結ぶために価格を押し下げるか、消費者に資金提供(バラマキ)して消費を煽っているのが一般的なやり方。価格勝負で負けないように効率化、大量生産が行われていますね。
しかし、上記の成功各社は、このような「需要発」の発想を超え、市場原理の枠を超えた戦略をとっていると見ていいでしょう。
つまり、生産者側が「需要」を掘り起こし、新しい「供給」を生み出しているのです。
そして、『価格』という現市場の価値指標におもねる事なく、それを超えた価値を生み出しています。
考えてみればどの業界でも、本来作りたいモノやサービスを100%提供出来ている!と胸を張れる企業は実は少ないのではないでしょうか?必ず「ペイするか?」「対費用効果」等の深慮が求められ、低コスト勝負が常態化していますよね。
彼らはこれを打破し、誰もが潜在的にもっている期待に焦点をあてて深く掘り下げ、新しくも根源的な「供給」を生み出しているのです。市場原理では不十分な点を補うことに心を砕き、顧客が100%充足できる「供給」を目指していると云えます。
この「潜在期待に応えきる供給」を実現するため、農家などの生産者を組織化して安定供給や商品開発に力を入れ、さらに消費者さえも巻き込んで組織して新たな販売ルートも確立する。それら組織化を促進するためにも、安全・安心、高付加価値の作物供給する技術開発に力をいれているのです。
(生産者の組織化が先か、消費者の組織化が先か?については、どのような供給をするか?その中身がなければ何も始まりませんので、供給側の組織化が先であることは、いうまでもありません)
最後に「勝ち筋」という視点で、整理してみましょう。
1.まずみんなの期待をどれだけ深く、広く、真正面から捉えられているか?
2.潜在的な期待を掴むための可能性探索と工夫思考
3.事業として現市場でも通用する手法の見極め
4.上記を実現するための組織化、集団づくり
5.実現~そして塗り重ね
※上記を貫いて、深く『共認形成』する必要有り。その形成過程では常に楽しさや喜びなど『充足』で貫かれている。
※また、みんなの声にならない潜在的な期待を掴むには、鋭く広くアンテナを立て、追求そして勉強が必要。
いかがでしたか?
現在の市場の枠を超える試みは既に、多くの企業で試行錯誤中だろうと思います。おそらく真の「業態革命」は、市場も含めた既存のあらゆる枠組みやしがらみを脱して、みんなの期待や想いを真摯に受け止め、深く同化することから始まるのでしょう。
周りの人や社会に想いを馳せ、可能性を探り続けることを通して、みなさんの新しい年が充足一杯の年になるよう願い、第一回目の記事を締めたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。それでは、良いお年を
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