70円/ドルでもおかしくない理由 本当の危機は米国債暴落から始まる
2010年の6月に1ドル=90円を割ってから、一貫して80円台を推移し、今や80円を割ろうかという情勢である。円高ドル安は、反転しそうにない。
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この円高ドル安は、輸出について不利側に働くため、経団連を初めとして、輸出企業が政府への為替介入を一斉に求めている。
先進各国による低金利政策(→ドル・ユーロ通貨安)によって、日本円は強力な円高圧力を受けていることになる。輸出系企業に大きなダメージを与える円高に対して、日本政府も為替介入を行ってきたが、効果がほとんど見られない。
1995年に超円高(一時、79.75円/ドル)に突入したときは、為替介入の効果があったと言われている。現在と何が違うのか
【1995年4月】 【2010年9月】
79.75円/ドル 最高値 82.87円/ドル
10.3兆円 市場規模(一日当り) 17.6兆円
7.0兆円 介入規模 2.1兆円
1.00% 日本の政策金利 0.10%
6.00% 米国の政策金利 0~0.25%
市場規模が1.7倍に膨らんでいるにも関わらず、1/3以下の介入しか行っていない。しかも、今回は日本の単独介入。また1995年は、日米の金利差が開いていたため、円高に伴って、円をドルに買えて投資運用するものが増加。1ドル=100円台にまで戻っていった。それでも、最高値を付けた後、100円台に戻ったのは5ヵ月後であった。
この程度の為替介入では、まさに「焼け石に水」。
今後どうなるのかを考える上でも、為替が変動する要因から考えてみたい。
為替が変動する要因は大きく3つある。
①経常収支(貿易収支)
経常収支(貿易収支)が黒字の国は、製品を売って得た外貨を自国通貨に換える必要があるため、自国通貨の価値が上がっていく。
例えば、日本の輸出企業が自動車をアメリカに輸出してドルを得た場合、ドルのままでは使えないので、ドルを売って円を買う。この時、為替は「円高ドル安」に動いていくことになる。
しかし、円高が続くと、(輸出先の)現地に工場を建てて、現地の人間を雇い、現地で生産したほうが安上がりになり、また輸出先との貿易摩擦を回避できるため、工場を海外移転する企業が増えている。この為、経常黒字(貿易黒字)による円高ドル安の影響は年々小さくなっている。
②購買力の差
為替レートの変動によって、各国通貨ごとの購買力に差が出ると、それを平準化させようとする方向で、レートが動く。
例えば、ここに100円のハンバーガーが一つあったとする。1ドル=100円ならば、アメリカでは1ドルで購入することが可能。
しかし、1ドル=120円なら、日本では100円のものがアメリカでは(1ドル=)120円出さないと買えない。この場合、ドルの価値が下がり(円の価値が上昇し)1ドル=100円に戻ろうとする。
1994年当時、1ドル=100円であったが、90年代後半から現在に至るまで、アメリカは2%程度のインフレであり、日本は1%程度のデフレであった。これは、物に対する通貨の価値が、アメリカでは下がり、日本では上がってきたことを意味している。
つまり、1994年当時はハンバーガーが1ドル=100円で買えたとすると、15年経つとアメリカでは1.3ドル出さないと買えない、日本では85円程度にまで値下がりすることになる。つまり1.3ドル=85円→1ドル=65.4円でもおかしくないことになる。
③金利差
上記二つは、実体経済が及ぼす為替レートへの影響だが、これ以上に大きな影響を持つと言われているのが、投機マネーであり、主に金利差によって投機先が決まる。 (実体:投機=3:7)
1995年から2008年のリーマンショックまで、日米で5%程度の金利差が存在し続けた。少しでも利ざやを稼ごうとするファンドは、低金利の日本で借りて、高金利のアメリカで運用してきた。日本の金融市場で資金を調達して、その円をドルに換え(円売りドル買い→円安ドル高)、ドルをアメリカの金融市場に投資してきた。
リーマンショック以降は、アメリカを初めとする先進各国が、国債リスク(≒財政破綻リスク)を回避するために低金利政策を取ってきたため、日米の金利差は大幅に縮小する。今までアメリカの高金利→日米の金利差に支えられて、(円で借りて、ドルに)投資してきたファンドが、ポジションを解消する必要に迫られた。つまり、今までと逆の動き、すなわちドル債を売って→手に入れたドルを円に換え(ドル売り円買い→円高ドル安)→円での投資運用先を探し始めている。
※ここで、円から他の通貨に乗り換える動きがそれほど活発化しないのは、20年に亙る低成長期を乗り切った円への信用が高いことを意味している。
金利差は、短期での利ざやを狙う投機マネーの変動を招くため、短期での為替変動を引き起こす。為替レートは、まずは金利差に反応する。
しかし、商品やサービスが流動する中で、各国通貨の購買力がバランスする方向に調整されていく。つまり、長期的には、購買力が平準化される方向に、為替レートは変動していく。
つまり、1995年以降の円/ドルレートは、短期的には(高金利の米債買い→ドル買い円売り→)ドル高円安を引き起こしながら、長期的にはドル安円高に進んでいく。繰り返すが、70円/ドルを割ってもおかしくない。
これは、アメリカにとっては、有利側に働くことになる。ドル安が続けば、他国が米国債を買いやすくなる=米国債を売りやすい状態が続くからだ。
つまり、アメリカは「米国債が売り続けるために、ドル安を容認する」ことになる。
◆
しかし、米国債が売れにくくなると、アメリカは途端に窮地に陥る。
増える新規国債及び市場で売られる国債の買い手が少ないと、国債価格が下落し、金利は高騰していく。この利払いが増加し、その金を捻出するための国債発行額がどんどん膨らんでいく。政府予算は、歳出は国債償還+利払い一色に、歳入はその金を捻出するため国債発行一色になり、国家財政が破綻する。
しかし問題は、それらの一部の国債が売れる価格まで下がる(売れる金利まで上がる)ことだけではなく、既存の国債の全ての時価が下落していくことにある。(これは、東証などの市場で売買される一部の株式の価格によって、全体の株価が決まることと同じ構造)
国債の平均残存期間を5年とすると、1%の金利上昇で5%の時価下落となる。これは、米国債発行残高(約13.6兆ドル)を大量に保有する金融機関の13.6兆×5%=6800億ドルもの”含み損”が発生することを意味する。国内金融機関の自己資本が吹っ飛ぶような2%の金利上昇があれば、金融機関が一斉に国債を売り始めることになる。
こうなると、政府すら救済しようのない危機局面に入っていく。
金融機関は、国債価格が下落し始めていることもあって、買い受ける余力そのものが減じている。
しかも金利上昇によって政府財政の逼迫度合いが増し、更なる国債発行が必要となるが、国債を発行すればするほど、価格が下がって(=金利が上がって)国債の不良債権化が一層進んでしまう。
ここで、中央銀行であるFRBが新たに紙幣を発行する代わりに国債を買い受け始めると、市場から「やはり危ないのだ」と認識されて、空売りが進む→価格下落が進む(=金利上昇が進む)という事態に陥る。実際、ギリシャ危機でも、ヨーロッパ中央銀行が買い受けることを発表してもなお、金利上昇が止まらなかった。つまり、政府の救済案が更なる窮地を作り出すことになってしまうのだ。
ドルに関する資産が全面崩壊過程に入っていき、ドル建て資産が全て吹っ飛ぶような状況も考えられる。こうなると、アメリカ以外の、特にユーロ圏の損失が天文学的な数字に膨らみ、世界全体の投機マネーが急速に縮小していくだろう。
(ないとう)
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コメント11件
通りがけ | 2011.06.22 11:31
「犯罪者には罷免ではなく逮捕を」
菅内閣(政府)・霞ヶ関保安院(官庁)・東電(天下り企業)の政官業癒着談合闇カルテルの共同不法行為未必の故意傷害殺人犯行が確定しました。
>>http://c3plamo.slyip.com/blog/archives/2011/06/post_2095.html#more
裁判員なら無期懲役以上の重罰を言い渡すだろう。
さる原子力学者が保安院の罪は懲役数万年に相当するといったとか言わないとか。
★ようこそ「イサオプロダクトワールド」へ★isao-pw★ | 2011.06.22 14:43
★福島原発の悲惨な現実を直視せよ!
★想像を絶する放射能との戦い!危急存亡の国難を克服する為に国家の総力を結集せよ!
通りがけ | 2011.06.22 19:50
「キョンシー菅を手操る泥棒官僚どもの本当の親玉は日本人じゃない。」
住民至上主義ブログさまへコメントしました。
>>http://blog.livedoor.jp/jijihoutake/archives/52010504.html
>公務員は国民に対する官僚の傭兵である。官僚は国民の生き血を吸う盗賊集団である。そして、ほとんどの政治家は官僚のポチでしかない。この国の社会的地位とか権力は官僚が操るまやかしの産物である。 <
これは正しくありません。正しくは「敗戦後占領軍が作った植民地統治政府の公務員」とするべきです。
占領軍は「地位協定」という日本国内で日本国憲法の基に作られたすべての法律を守らないでよいという治外法権を手にしています。その占領軍が作った戦後政治体制で、日本国民の生き血を吸っている盗賊集団の親玉は手下の日本人公務員ではなくアメリカ人死の商人そのものなのです。泥棒アメリカの手先となった日本人公務員は莫大な親の総取りからすずめの涙ほどのご褒美をもらって一般国民よりいい生活をして主権者国民を見下しているのです。
「官僚」も所詮下っ端手下のチンピラこそ泥であり、官僚を使って泥棒させている地位協定最上位のアメリカ死の商人こそが、「この国の社会的地位とか権力」を安保条約を目くらましに使って操っているのです。
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通りがけ | 2011.06.20 22:38
「建国以来アメリカはトモダチを作れない狂犬である」
戦後国会政治はGHQの日本国内離間の計のもとにスタートした。終戦直後には憲兵を除いて日本国には官僚にも政治家にも在野にも国士が満ち満ちていた。官僚の鑑といわれる闇米を断食餓死した検事や渋沢敬三、宮本常一、GHQに三鷹事件で謀殺された下山国鉄総裁など枚挙に暇がない。
しかし戦後真っ先にGHQの配下にすりよった検察の破壊工作が徐々に功を奏してゆき、国内離間の計のもと作られた二大政党制による植民地統治化が進んで、小泉詐欺師が首相になったとたん国会破壊工作が急激に進展しいまや霞ヶ関も国会もほとんどがアメリカのスパイ状態となった。現在国会議員や政治家で小泉チルドレンとやらは全員アメポチスパイ小泉詐欺師の直系アメポチスパイである。
民主党で小泉直系は菅前原仙谷岡田枝野野田安住・・・あほといわれているものたちはすべてスパイであり、犬スパイどもの飼い主「戦争の狂犬アメリカ」の国益のために日本に地位協定を温存することだけを目的として政権にしがみつき、国会の決議機能を停止させつづけているのである。
こんな民主党にしたのはアメリカであり地位協定である。
江戸末期以来のアメリカの目標は中国侵略支配である。そのために日本列島本土を占領後核の貯蔵庫化した。放射能の恐ろしさを知っている米軍は基地のほとんどを置く沖縄には原発を作らせず温存してきた。
原発事故が起こって日本本土が全滅しても米軍は無傷で生き残るためである。
ここまでアメリカの野望中国侵略は不成功に終わってきた。しかし今度の原発事故で日本列島全体が核汚染され立ち入り禁止地域になれば、それを利用して日本列島という国が滅んだ地域を世界の核最終廃棄場にしようと中国に持ちかけるつもりであろう。硬軟使い分けて中国侵略支配野望を目的達成する。これが戦争の狂犬アメリカの単細胞戦争政治による世界支配戦略なのである。
地位協定を即時破棄して政治(戦争か平和か)のうち戦争しか知らぬ単細胞の「戦争の狂犬アメリカ軍」を日本の国土から追い払おう。
さて沖縄基地温存本土核最終廃棄場化がアメリカの計画通り成功すれば、つねに飢えている狂犬の底なしの食欲を満たす「思いやり予算」が得られなくなってしまう。日本に代わる新たな兵站補給植民地を獲得しなければならない。それが石油埋蔵量豊富なリビアでありすでに米軍植民地統治確立に向けた戦争の狂犬アメリカ軍の軍事侵攻が始まっている。
この現実から見て、すでに安全な代替植民地入手のあてがある米軍が、地位協定のもと虫けら奴隷化日本人に世話を押し付けた核牧場日本列島の核汚染危機を、煽りこそすれみずから被曝の危険を冒して助けようなどとは一瞬たりとも考えていないことは明らかである。地位協定を温存しようさせようとする勢力はこの世界の戦争の狂犬の真意を知っていて黙って日本列島本土四島すべて核汚染滅亡するのを待っているのである。
日本人はただちに地位協定を破棄してアメリカの地球覇権支配の野望を挫き、「戦争の狂犬アメリカ軍」を日本の国土から追い払い、独立日本人の手で世界平和を地上に築きあげよう。