2009年12月26日

法制度をどう改造するか? ~暴走する検察:社会的圧力から隔絶された組織~

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この「法制度をどう改造するか?」シリーズの初回でもいくつか事例を挙げたが、検察の権限濫用は目に余るものがある。
なぜこのような問題が起きるのだろうか?
検察OBである郷原信郎氏の著書「検察の正義」に、刑事司法の特徴、検察の特徴が端的に表されているので、それらを参考に考えてみたい。

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日本の検察の特徴は、一言で言えば、刑事司法の「正義」を事実上独占してきたことだ。国会審議で、法務省刑事局長が個別の事件に関して質問を受けたとき「個別の事件についての答弁は差し控える」という答弁に必ず付け加えるのが「なお、一般論として申し上げれば、すべての事件は法と証拠に基づいて適正に処理されている」という言葉だ。それは、すべての刑事事件が「検察の正義」によって適正に処理されているというドグマに基づくものだ。
それは、二つの制度によって支えられている。一つは、「起訴独占主義」、つまり、刑事事件の起訴を行うこと、つまり、犯人として刑事裁判にかけることは、検察官の権限とされていて、検察官以外が行うことはできないということである。そして、もう一つは、検察官は、犯罪事実が認められても、情状を考慮して起訴をしないという「起訴猶予処分」を行うことができるという「起訴便宜主義」である。
この二つの制度によって、刑事裁判の対象にするべきかどうかの判断、つまり刑事司法の「入り口」の判断は、完全に検察官に委ねられている。そして、有罪率99%以上という刑事裁判の実情の下では、検察官が起訴することが、ほとんどそのまま、犯罪ありという刑事司法の判断につながる。
したがって事件を刑事裁判の対象にするかどうかの判断を適正に行うことは、刑事司法の「正義」を実現するための不可欠の要素になる。その判断をあらゆる事件について常に適正に行うという信頼で成り立っているのが検察の組織である。そして、その判断の適正さは、理由を外部に説明することではなく、基本的には、個々の検察官の判断だけではなく検察庁の組織としての判断が行われるということによって維持されている。要するに、刑事事件の捜査・処分の権限はすべて検察の組織内で完結しているのである。
「検察の正義」p.62~p.63より

検察は刑事事件に関する起訴を独占し、起訴をするかどうかの幅広い裁量権を持っている。
それでいて、起訴に関する判断が適正さに関する評価圧力は、検察外部からはかからない。
 
絶大な権限を持ちながら外部から無圧力で、検察内部での圧力のみが働く状態では、最優先課題が社会的期待に応えることよりも、自集団(検察)のメンツを保つことに歪曲されてしまうのは必然と言える。
 
 
また、同じ書において、検察が暴走するさらに根深い原因構造が提示されている。
 

まず、従来の日本の刑事司法の世界の特徴は、次のように整理できる。
第一に、刑事司法が対象にしてきたのは倫理的・道徳的に許されない行為であり、行為に対する否定的評価が明白な行為であった。そのような否定的評価の対象となる犯罪事実を、証拠によって認定し、その行為の悪性に応じた処罰を行う、というのが刑事司法の役割であって、その行為についての社会的価値判断は不要だった。
第二に、対象とする事実は、過去の犯罪行為であって、進行中の社会生活や経済活動そのものではない。過去に発生した行為に対して刑事処罰を行うことで、その問題に「後始末」をつけ、その行為が社会に与える影響を最小化することが目的であった。
そして、第三に、対象とする人間は、そのような反社会性が明白な行為を行った「犯罪者」であり、多くの場合は社会からの逸脱者だ。一般的な社会生活や経済活動を営んでいる一般の市民や経済人とは異質な存在である。そのような「犯罪者」は社会から排除されても、社会そのものに与える影響はほとんどない。
そして、このような日本的刑事司法の中核となってきたのが「検察の正義」であった。組織内ですべての判断を行い、その説明を求められることがない、という組織内で完結した「正義」の世界は、刑事司法の対象が、一般の社会とは切り離された特殊な領域であり、一般社会の価値判断とは切り離された独自の判断を行うことが可能だったからこそ維持できるものだった。
「検察の正義」p.67~p.68より

 
検察という組織は、社会的価値判断を求められることなく、向かう対象は“常に明確な悪”であった。つまり、結論は決まっていて、その結論が本当に社会に適合しているかを考える必要は一切なかったのである。
 
まだ貧困が残存しており、私権圧力⇒私権規範が強固であった1970年以前ならば、社会的価値軸を考慮せずとも、私権圧力に応じて整備された法制度を判断基準としている限りは、多少暴走しても、社会的価値軸からの大きな乖離は生じなかったかもしれない。
 
しかし、1970年頃の貧困の消滅という大転換によって、私権圧力衰弱→私権規範衰弱が進み、社会的価値軸の見直しが必要になってきた。
そのような状況でも、検察は社会的価値判断をできない以上、相変わらず旧い法制度、あるいは一部の要求意識に基づいて定められた法を拠り所にするしかない。その結果、検察の判断基準と転換しつつある社会的価値軸は、大きく乖離していく。
 
こうなると、まさに“特権階級の自家中毒”状態であり、既存の制度によって与えられた特権、「検察の正義」の維持と行使のみが目的となる。
 
不当な圧力の介入を阻止するという理由で、検察の独立性が重んじられているが、もはや検察自体が不当な圧力となっているのが現実である。
 
この現実を踏まえると、現在検察が持っている権限は、社会の共認圧力のもとでのみ行使可能とするシステムを構築していくことが不可欠であると言えるだろう。
 
 
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written by G線上のアリア

List    投稿者 lived104 | 2009-12-26 | Posted in 04.日本の政治構造8 Comments » 

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コメント8件

 晴耕雨読 | 2010.08.02 13:57

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