2010年01月16日

裁判官はなぜ誤るのか

当シリーズでは、ここまで検察に焦点を当ててきたが、今日は司法の中核にあり、最終的に裁きを下す裁判所(裁判官)の問題について考えていきたい
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参考文献 「裁判官はなぜ誤るのか」 著:秋山賢三
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■問題提起
裁判所の判決には、絶大な力があり、関係者、社会に及ぼす影響が大きく、極めて慎重かつ正確な判断が求められる。しかし、現実には事実と異なる判決も発生している。
去年、足利事件で無期懲役の判決で受けた菅家さんが、17年の刑務所の生活を経て再審請求を認められ、実質無罪が明らかになったのは記憶に新しい。
ここで注目しておきたいのは、このような誤判・冤罪事件においては、必ずしも事件背景や証拠判断がことさらに複雑・難解であったがゆえに誤判に至ったとは言えない点である。
過去の冤罪事件をいくつか確認してみる。

・徳島ラジオ商殺し事件
>被告人冨士茂子さんは、夫と格闘して11ヶ所の傷を負わせてこれを刺殺した旨認定され、懲役13年に処せられた。しかし自らの顔、手、身体の正面部に格別の格闘傷らしい傷を負っていなかった。これは関係証拠の上からも明白な事実であった。喧嘩の相手方が身に11ヶ所の刺し傷や切り傷を負った上、出血多量で死亡したというのに、殺傷したとされる当の茂子さんが、身長150cm以下の華奢な婦人であるのに、まったく無傷で済む道理がないのである。
・袴田事件
>検察官は冒頭陳述で、袴田さんが犯行の際に着ていたのは「パジャマ」である旨を主張し自白調書にも同様の記載がなされていた。ところが、起訴後約1年が経過して、工場内の1号機味噌醸造タンクの中から麻袋に入った「5点の衣類」が発見された。このため、検察官は直ちにそれまでの冒頭陳述を変更し、確定判決も、この「5点の衣類」が犯行着衣であり、かつ袴田さんの所有物である旨確定した。
しかし、そもそもズボンは小さ過ぎて袴田さんの体格とは一致せず、控訴審における三回の検証(着装実験)の結果によっても、袴田さんはズボンを着用することができなかったものである。
裁判官の心証の中で、「5点の衣類」と袴田さんとを結びつけたものは、5点の衣類発見後に、すなわち起訴後1年以上も後に袴田さんの実家を捜索した結果、発見されたとする、「5点」に含まれていたズボンと同じ布地の「端切れ(共布)」であり、そしてただそれだけであった。
>また袴田さんは、事件発生後5日目にして確たる証拠もないままに強盗殺人・放火の真犯人ときめつけられ、以後、逮捕・勾留中、1日に優に15,6時間に及ぶ取調べを受け、自白を強要され、そして起訴された。捜査段階で弁護人が選任されていたが、3人の弁護人は合計37分間しか本人と接見してはいない。

これらの冤罪事件で決め手とされた証拠や自供は、素人が少し考えただけでも不整合に気づくようなものである。なぜ、司法のエキスパートである裁判官がこのようなミスを犯すのであろうか?
■裁判官がおかれている外圧状況
裁判官は、超難関といわれる司法試験を突破してきた試験エリート=ペーパー的優秀生である。
見方を変えれば、膨大なエネルギーと時間を試験制度の突破に費やしてきた人たちであり、現実社会で一般の人々が捉える様々な圧力からは、むしろ距離を置くことができた人たちである。
そして、この一般社会から隔離された環境は判事補→裁判官となってからも、比較的維持される。
大都市の裁判官は年間で一人当たり250~300件ぐらいの事件処理をしているため忙しい。また官舎暮らしで、3~4年に1回の割合で転勤する。住民との接触も皆無に近い。
つまり、現実社会の圧力から隔離された存在なのである。
これでは、現実社会で生きている人々の感覚からずれてしまうことは必然。
参考投稿  (「頻繁な転勤」と「エリート意識」が裁判官の市民感情を鈍らせる
一方、難関試験を突破してきたというエリート意識は醸成されており、現実の圧力キャッチ能力の乏しさとが相まって、保身意識は強固になる。
ゆえに、権力体である検察が不利となる判断や、マスコミによる誘導世論に逆らう判断を避ける方向に流れている可能性が高い。
■裁判所(裁判官)の無圧力状態⇒評価圧力への転換
昨年から裁判員制度が導入されたが、裁判所(裁判官)がこのような圧力環境に置かれているままで、いくら司法の場に一般人を参加させても、状況が改善されるとは考えにくい。
本気で、裁判所の判断基準を庶民感覚と整合させていくのであれば、いきなり庶民を裁判員とするのではなく、裁判官の判断について庶民に評価を仰ぐべきではないだろうか。
現在の裁判員制度は、庶民にいきなり責任を負わせただけで、裁判官自身が評価圧力を受けない構造は変わっていない。
裁判官自身が人々からの評価圧力の中に身を置くことでしか、まっとうな判断が下されることはない。
そのためには、現実の圧力から隔離された場で過ごす現在の裁判官のあり方自体を転換する必要がある。
現実の圧力に対峙している者こそ、現実の中の問題に対して判断できるという視点に立てば、裁判官という職業を永久専任制から、数年でローテーションしていく半専任制へと移行していくことに大きな可能性があるように思われる。

List    投稿者 kyohei | 2010-01-16 | Posted in 04.日本の政治構造10 Comments » 

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コメント10件

 晴耕雨読 | 2010.08.25 0:57

西洋文明と東アジア文明の違い

 ●西洋文明と東アジア文明の違い
 日本は、このような文明を真似た。だから、欧米がやったこととまった同じくことをやった。それは他国に対してだけでない。自…

 50過ぎのおじさん | 2010.08.25 17:21

最近、身の回りの友達が、多く東南アジア(韓国・中国・台湾でも)で仕事をするようになっています。
その彼らが、言うことには、タイ、ベトナムは親日家が多く、日本人が住み易い国でる。
東南アジア共同体機構は、実現性が高い可能があり、期待が持てますね。

 member | 2010.08.26 15:20

「50過ぎのおじさん」様、コメントありがとうございます。
そうなんです。東南アジアでは親日な人が多いんです。
イスラムはどうなんでしょうか?
トルコは明治時代に日本近海で座礁したトルコの船を日本人が救出して以来、トルコは親日だと聞いたことがありますが・・・

 たま | 2010.08.26 21:22

こんばんは。
トルコは親日らしいですよ。
親日国のトルコ 
http://www.youtube.com/watch?v=MJg0I-81nZs&feature=related
「2010年トルコにおける日本年」が目指すもの(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/turkey/2010/aim.html

 !うにまろ!日記 | 2010.08.26 22:10

法人税減税をさせる計略、為替不介入。

法人税減税絶対阻止!!!
つか、経済産業省や官僚の計画全部阻止!!!
今現状では最悪状態。奴らのやることを何一つ信じてはいけない。
騙されるだけ。
最低で…

 unimaro | 2010.08.26 22:16

お疲れ様です。
沖縄が潤うと、台湾沖縄地域に対して支那が余計侵略欲を掻き立てるので、そこがネックですね。
香港で味をしめているし、今支那経済は下り坂に入り始めたようですから。ただ、先進国並み悪化はないでしょうけど。

 member | 2010.08.27 15:02

たま様、コメントありがとうございます。
トルコは本当に親日みたいですね。
トルコの旅行代理店に女性が言っていた、「日本人はどこか私達と似ている」というのは、何となくわかる気がします。

 member | 2010.08.27 15:06

unimaro様、コメントありがとうございます。
確かに中国をどう抑えこむかという問題はあります。
「オルタナティブ通信」ではアメリカを盾にするということですが、この案だと米軍が撤退した後の沖縄-台湾の安全保障はどうするのかが課題ですね。

 hermes hellenic | 2014.02.02 19:31

kelly bag hermes 日本を守るのに右も左もない | 秩序が維持される国々(東南アジア・インド・イスラムや南米)とどのような関係を作るか?

 mbt shoes fashion | 2014.02.22 4:30

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