2010年09月01日

特権階級の世界と大衆共認の世界を繋いでいたもの(1)~武力支配時代の秩序期待

8/10なんでや劇場「金貸しとその手先(特権階級)たちの思惑は?」では、「特権階級の世界と大衆共認の世界が断絶し、特権階級は空中浮遊している」という新たな捉え方が提起された。そして、断絶した世界の接点は社会共認の形成であるが、暴走する特権階級が大衆の側に歩み寄る可能性はゼロであって、大衆の側から接点をつくるしかない。つまり、充足共認や企業の共同体化という身近な次元から「日本や世界をどうする?」という社会的な次元にまで大衆共認がジャンプアップできるかどうかが課題となる。
では、特権階級と大衆共認の世界が最近10~20年間で断絶したのは何故なのか?
逆に言うと、それ以前は、特権階級の世界と大衆共認の世界はどのようにして結びついていたのかを考えてみたい。
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●市場時代以前、武力支配の時代はどうだったのか?
以下は、『桶狭間戦記』(宮下英樹 講談社)からの引用。
【この本では「戦国時代」の定義そのものが新しい。通説の応仁の乱で下剋上の社会が現出したのではなく、気候として「小氷河期」だったことが大飢饉を引き起こし、大飢饉がかつてない動乱を生み出したという仮説を提示している。】

戦国大名の支配下にある”戦国民”
彼らは「小氷河期」を原因とする長期にわたる厳しい飢饉の中にあったにもかかわらず、年貢を納め、合戦や土木工事に参加した。一見、戦国大名による暴力支配以外のなにものでもないかに思われるが、”戦国民”たちはその見返りに戦国大名になにを求めたか。
小氷河期型の気候変動とは、大雨・洪水・強風であり、耕作に最も重要な河川は氾濫しその流れを変えた。それが元で起きる村同士の水争いは、ときには合戦ともいえる規模に発展し、他国からも狙われる。暴れる河川、衝突する村々、他国からの侵略。
”戦国民”たちは、これらの事態の解決を戦国大名に頼んだ。つまり彼らが大名に求めた見返りとは、治水・法度・守護。いまでいう灌漑事業・司法警察・国防である。

戦国大名が国を盗るということ。
それは他国の大名を殺したとたんに、その国が自国に色に塗り変わるというものではない。他国を切り取るにはまず大義名分が必要であり、なににもましてその土地の戦国民の理解が必要なのである。
新当主は前当主より善政をしき、土豪たちを手なづけねばならないし、飢饉の時代に米を生産する戦国民は国家運営の根幹であり、追放や虐殺をすることはできない。
では、前当主が熱狂的に民に慕われているとき、新当主は如何にして戦国民にとりいるか。それは”傀儡政権”しかない。
名将松平清康(徳川家康の祖父)は室町幕府に認められた守護職とは違い、山間部の民から大名にのしあがった、謂わば郷土が生んだ英雄である。民の松平家への深い服従ぶり故、今川家は清康の子広忠(家康の父)を傀儡の当主にたてるという三河支配策をとらざるをえなかった。

『桶狭間戦記』の記述にある治水・法度・守護(灌漑・司法警察・国防)は、秩序の安定のために必要な課題である。戦国時代の農民が戦国大名に期待したのは、秩序の安定らしい。そして、それぞれの戦国大名も領国内を統治するために分国法(法度)を制定したことに見られるように、秩序化期待に応えようとしていた。その最たる者が江戸時代の幕藩体制という安定秩序を作り出した徳川家康である。家康が最終的に戦国の覇者と成り得たのは、秩序の安定期待という、この時代の(支配層から末端大衆までを貫く)期待=意識潮流に応えたからだとも言える。あるいは、この時代の大名の役割の一つは法度=司法警察であるが、そこでは公平性が求められた。江戸時代には「大岡裁き」が美談(特権階級の理想像)とされたことからも伺える。
武力支配時代と言えども、大名は力だけで支配していたわけではない。
私権時代は強い者が弱い者を従える力の原理に貫かれた時代というのは一面の事実である。しかし、武力さえ武装集団の力であり、集団統合力⇒共認形成力なのである。「私権時代に求められた能力と、共認時代に求められる能力」
そもそも、哺乳類に顕著な本能原理である力の序列原理(⇒人類の身分制度)は、争いを制御し集団を秩序化するための秩序原理である。同時に、そこでの序列規範は、弱い者は強い者に従う代わりに、強い者は弱い者を守らなければならないという庇護規範と一体である。弱い者が強い者に従うのは秩序化されるからであって、そうでなければ強い者でも見限られることになる。
この時代、秩序の中核にあったのは、集団私権の共認である。「自我⇒否定⇒私権意識の成立構造~自我の原点は個人自我ではなく集団自我」
武力支配時代における集団私権とは、豊かさの実現というのももちろんあっただろうが、何よりも大きかったのは、如何にして縄張り=領土を守るか、領土内の秩序を安定化するかであり、その点において、支配階級(大名)・特権階級(武士)と大衆(農民)のベクトルは一致していた(断絶していなかった)。つまり、領土は領民と不可分一体である。つまり、支配層は領民から搾取するだけではダメで、領民の期待に応えて、安寧秩序を守ることが不可欠だったのである。
加えて、この時代は「個人が原点」という思想など存在せず、誰もが集団第一であったことも大きい。大衆には村落共同体という集団共認の基盤(参加の場)が存在し、支配階級・特権階級であった大名や武士の世界は(江戸時代であれば)徳川家を頂点とする「家」という集団のヒエラルキーによって形成されていた。つまり、この時代は、支配層から大衆に至るまで誰もが「領国や村々をどうする?」という視点で思考し行動していた時代である。
このように、武力支配の時代は、縄張り=領土とその秩序を如何にして守るかという課題を、世の中の誰しもが共認し期待していたので、支配階級・特権階級の世界と大衆共認の世界は断絶はしていなかったのだろう。
つまり、全社会的な秩序期待こそが、支配階級・特権階級と大衆の世界を繋ぐ紐帯だったのではないだろうか。
ちなみに当時、支配層(武士)と大衆(農民)を繋ぐ接点の位置にいたのが、土豪や庄屋・富農と呼ばれる存在だったであろう。例えば、彼らは飢饉などの際には藩に陳情する役割であった。
「なんでや劇場」では、大衆共認の世界を社会的な次元にジャンプアップさせる接点の位置にいるのは政治家だと提起されたが、武力支配時代の土豪や庄屋は地元を基盤にしているという点でも、現在の政治家に近い位置にあるのではないか。実際、近代以降の政治家(特に地方議員)の出自も地元の有力者(元庄屋)というのが多いのではないだろうか。
では、近代はどうなったか?(続く)
るいネット
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List    投稿者 staff | 2010-09-01 | Posted in 04.日本の政治構造16 Comments » 

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コメント16件

 まわたふわり | 2011.04.18 12:10

はじめまして、
特権階級-政治家、官僚、大会社の上層部・・・が、自分達の利益を追求するのは当然だとしても、あまりに手段を選ばないというか、その他大勢の生命すら犠牲にしても構わない、という態度に、愕然としています。
そして、それを許してきたのは、私達有権者でもあります。
どうにかなる・・・・と・・私は、あまり思ってなくて、5年後くらいに癌で死ぬかな?とか思ってますが、
その前に、
なんとかやれることを考えて、やらなければ、と思っています。

 まわたふわり | 2011.04.18 12:26

すみません、トップだけ見てコメントしてしまいました。。。
現状だと、ネットでどれほど反権力の世論が沸騰しようと、
権力側によって無かったことにされていますね。
もっとネットが普及したら、ネットでよい意見がもっとたくさん出てくるようになったら、
ネットがもっと権力を持てるようになるのでしょうか・・・??
いまいち、そうだ、という感じはもてませんが、
結局同じ、
ネットで情報収集・発信していくだけですが・・・
なにかこれ!
って決定打が欲しいですけどね。^^;)

 通りがけ | 2011.04.18 14:31

震災津波という天災被害への対応財源と原発事故放射能漏れ被曝という人災被害への対応財源は峻別する必要がある。
人災被害には東電と保安院という加害者がはっきりしているから、この両者に風評被害も含めすべての原発事故関連被害について査定される全額を賠償する責任がある。全額賠償できなければ両者とも粛々と刑吏の手に渡され獄につながれる。

 通りがけ | 2011.04.19 0:15

今度の天災人災合併災害への政府対応の不手際失敗もまた明らかな人災である。
政府の迅速で適切な初期対応があれば被害はもっと小さく食い止められたはずであるから。
たとえば福1への冷却剤炉内注入緊急廃炉停止決断、とか。その機会がありその技術は使えたのに使わずにメルトダウンさせた致命的失策とか。
津波被災者の自衛隊米軍へりによる夜間捜索救助の不実行とか。夜間救助やればできるのにやらずに傍観したために、最初の津波から助かった多くの命が救助の遅れによってどれだけ失われたであろう。
いずれにせよ初期対応の判断ミスという人災によって天災そのものの被害よりも指揮の誤りによって今日までに拡大した被害部分の賠責は
1.危機管理に当たった菅内閣の全員
2.菅内閣の失当暴走を不信任決議案を出さずに黙認追認した国会議員全員
3.憲法判断を示さなかった最高裁全員
が均しく負わなければならない。
負わない場合はこれもまた東電・保安院の前2者と同じく粛々と刑吏の手に渡され獄に繋がれる。

 通りがけ | 2011.04.19 8:49

日本国同朋被災者の皆様
国のごくつぶしな破廉恥対米隷従政治家役人天下り大企業マスゴミどもが動かずとも、これまで被災者の方々と同様額に汗して毎日働いてこの国を支えてきた我々同朋国民が、必ずや民間の融通無碍の叡智と力を合わせてこの最悪の窮地から同朋の皆様が無事脱出できるよう渾身の全力でお手伝い申し上げます。
震災後これまでに無為無策無能政府をよそに、無料通話の携帯電話を配ったソフトバンク、自然エネルギー限定融資方針を打ち出した城南信金、東北電力へ自家発電で電力供給を決めた三菱化学(>>http://cpt- hide-cook.seesaa.net/article/196288333.html)
など、被災地の復興に必要な物資やエネルギーが官菅泥棒政府の妨害をはねつけて続々と民間の相互扶助の精神だけで供給融通され始めています。被災地復興に欠かせない自動車の無償供給も必ずや近々無償提供を申し出る自動車会社が現れることでしょう。
心を強く保ってひとつしかない命を支える身体を壊さぬよう細心の注意を払って頑張ってください。どうしても行き詰まったときはそれ以上の無理を徒に続けず遠慮なく同朋国民のもとへこぞって避難して来て下さい。ともに同じ釜の飯を食い英気を養い智慧を出し合い力を合わせて一緒に打開策を見つけましょう。
日本の国民は扶桑の国時代以来伝統的に秀れた民衆社会を代々伝えて来ました。世界最低の米占領軍隷属三流政治のもとでもこの世界一流の心ある民衆の融通無碍の叡智がある以上復興できないはずがないと確信致しております。

 あなたを自由にする言葉 | 2011.04.19 22:22

科学と常識 

ー 所詮科学では真実の結論は得られない、そんなふうに言うのは科学にたいする中傷だ。
ずっと以前に常識のほうが科学の助けなしに発見した真実、その結論に科学…

 ★ようこそ「イサオプロダクトワールド」へ★isao-pw★ | 2011.04.19 22:24

マスコミにマインドコントロールされた国民の不幸!

★1983年9月1日(木)午前3時26分20秒、ソ連防空軍サハリン・ソーコル基地

 通りがけ | 2011.04.19 23:15

「前世も現世も後世も時間は一様に流れる」
小沢氏と市民の座談会から3日目だがまだ国会に内閣不信任案が提出されない。
国会議員が「早急に」というのは一体何時間何日間何ヶ月のことなのか。
日本国の国会は地球上の時間軸で動いているんじゃないのか?
まあ別宇宙の時間軸で国会内が動いているとしても、世間の評価はこの地球の自転の時間軸に基づいて厳然と下される。
後世の世界の歴史の批判では、日本の国会議員全員が国会議員の地位を失うことだけを恐れる卑小な保身のために、主権者国民が菅内閣の暴虐政府に遺棄され日々命を落としてゆくのを座して「傍観し続けた」という史実が淡々と刻まれるだろう。

 通りがけ | 2011.04.20 7:09

「地球を破壊する戦争の犬(戦争中毒病の狂犬)」
自分と同じ人間に対して原爆を投下しその効果を観察するという狂った人体実験を行った米国軍産複合体政権。敗戦後彼らに擦り寄って取り入ることで米軍の手先となった売国日本人官僚が、狂気の米軍が中国大陸侵略の前線基地として占領した日本列島の国土の傷ついた同朋をさらに痛めつけ続けてきたのが戦後日本である。
建国以来戦争をやめたことがない「黒船」米軍の狂気こそ地球の人災の極致であり、その確信犯の手先である霞ヶ関こそ日本いや全世界の人災の極限の発生装置である。
全世界人類の平和を取り戻すという、地球そのものを人災から救い出すという大目標を達成するために、日本極悪霞ヶ関を徹底的に解体粉砕しよう。
70年足らずの短い期間に人災の極致である核戦争と原発事故に二つながら襲われた日本の国難からの真の復興は、日本国民自身による地位協定破棄・霞ヶ関解体・最高裁解体の三位一体解体破棄なくしては決して始まらないのである。

 pon | 2011.04.20 18:20

勉強になります。

 通りがけ | 2011.04.20 21:06

唯一の国民宰相田中角栄のコンピューターに匹敵するコンピューターを持つ政治家は今現在ニートの竹原信一君でしょう。建築会社経営者経歴の持ち主ですから、日本再生リフォームの設計図もつぼを心得ているでしょうね。
>>http://www5.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=521727&log=201103
etc

 通りがけ | 2011.04.21 17:50

蜘蛛の糸
菅総理福島の被災者たちから怒号で迎えられたようだが、それもこれもみんな自分が国民ではなくアメリカの言うとおりに政治をしてきた因果の報いである。
いまや政治家としてどころか人間としての誇りに至るまでのすべてを失ったに等しい絶体絶命総理に残された道は内閣総辞職だけであろう。
どうせ辞めるなら辞める直前に自分をこれまで使い捨てのバナナ(黄色い皮の白人)ジャップ総理として見下してさんざん虚仮にしてきたアメリカ政府に対して、「ハチの一刺し」地位協定破棄国会決議で一矢を報いてから辞めれば、阿弥陀様の蜘蛛の糸を掴むことができるだろうにね。
この蜘蛛の糸は菅総理だけにしか掴めない。これを掴めばやっと八十八カ所参りが満願結願成就できるでしょう。

 通りがけ | 2011.04.21 20:15

「計画的避難区域」指定
の話を政府が出してきたから、もう一度書いとこう。少し改変して再掲。
「国が何を措いてもまず第一にやらねばならぬ被災者救済国策」
まず政府はすべての震災津波被災者ひとりひとりに現戸籍(被災前から継続)に基づき「東日本震災津波被災者証」を発行せよ。ちょうど広島長崎の被爆者へ「原爆手帳」「被爆者証」を配布したごとく。
こうすれば被災者が日本全国どこへ避難しても戸籍をもとに国からの生活保護医療福祉保護失業保険(失業中全期間支給)を確実に受けることができる。義捐金の配布も「東震津被災者証」に基づいて公平に分配して受けることができる。
震災被災と同時に東電福島原発事故放射能被曝被災から予防的に避難した国民に対しては新たに「被曝避難者証」を前記の「東震津被災者証」と別に支給して、東電・保安院からの補償を受け取れるようにする。
避難区域に指定された地域の国民の戸籍に基づく私権行使と国内外移動の自由を制限することは重大な憲法違反である。
国が被災者対策のうちでまず第一にやらねばならないことが被災者国民の老若男女すべての身分を戸籍に基づいて保証するこの「東震津被災者証」「被曝避難者証」の2つの証明書を速やかに発行給付することである。
この被災戸籍本人証明書発行を老若男女すべての被災者について完遂しなければ、行政府の存在そのものが国民主権を明示した日本国憲法に違反する犯罪者になることをしっかりと弁えて、心して迅速に遅滞無く政府はこれを行え。

 unimaro | 2011.04.24 12:58

お疲れ様です。
人類を支配階級とそれ以外に分けるのは必須条件ですね。
しかも被支配階級は純然たる奴隷化し、「自分は奴隷ではない。自由だ」などと思い込んでいるのが、将来の可能性すら感じさせません。
ましてやお膳立てされた民主化暴動を「フェイスブック革命」などと言われて信じ込み、、、
ただ、白人とそれ以外を一緒だと思うと、根本的なところ
が不安定になると思います。下のURLは、白人という種と、それ以外の種の「絶対的違い」が良くわかる事例です。
http://kiyomaro.iza.ne.jp/blog/entry/2255857/
今、日本人が、日本人として「超えてはいけない壁」をた易く超えてしまった背景が”重要”なのではないでしょうか。
それを見出してこそ、排除でき、日本人が元にもどる可能性が見えるかもしれない、と。
白人:それ以外
そして、
日本人:それ以外
これが大事だと思っています。
愚考失礼しました。

 Evstafiigttv | 2014.01.04 1:21

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