2009年03月15日

〔日本の政治のしくみ7〕 戦後政治の民主化 ~ 「右」と「左」をバランスさせる政局運営

戦後のGHQによる「民主化」の本質は、
①まず、旧体制を徹底的に否定する。
②新たな可能性収束先として、自由・平等をベースとした政策・制度をつくり、新勢力を台頭させる。
③そして、対立構造をもちながら微妙なバランスで統合される新しい体制をつくり、国内勢力を競争・対立構造を操ることでGHQ=米国が間接的に支配できる仕組みをつくる。
というものでした。※〔日本の政治のしくみ4〕http://blog.trend-review.net/blog/2009/02/001031.html参照
今回は、このGHQ主導の「民主化」政策のうち「政治の民主化」の実態についてまとめてみました。
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集会の自由も保障され、亡命16年、帰国した共産党の野坂参三歓迎国民大会に集まった人たち
1946年1月26日 東京・日比谷公園で(昭和毎日http://showa.mainichi.jp/news/1945/10/post-bdf6.htmlより引用)
GHQによる政治の「民主化」により、「右」と「左」の対立構造が日本国内に生まれ、大衆が「自民支持」と「野党支持」とに分かれ、大衆はその2者択一の中で政治参加を志向するというフレームが生まれました。その枠組みを構成する諸要素は、戦後直後の政策とその結果に見て取れますが、簡単に図示すると以下のようになります。
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【指導者層における】
 ●公職追放     → 旧権力者は処罰・退場 →右派として官僚政治家△
  (Point1)            ↓
 ●治安維持法廃止 → 左派政治家△
  (Point2)
【支持者層における】
 ●農地改革     → 右派支持層△
  (Point3) 
 ●労働三法成立  → 左派支持層△
  (Point4) 
★Point1 公職追放により旧官僚が新しい政治家として台頭
連合国軍最高司令官(SCAP)は、1946年の1月「好ましくない人物の公職からの除去および排除に関する総司令部覚書」を発表しました。
その公職追放のカテゴリーは、
A項 戦争犯罪人
B項 陸海軍の職業軍人および特務機関員
C項 超国家主義、テロ・秘密愛国組織の有力メンバー
D項 大政翼賛会の有力メンバー
E項 日本の拡張主義に関与した金融・開発機関の幹部
F項 占領地域の行政官
G項 その他の軍国主義者および超国家主義者
この中で一番あいまいな規定がG項。
たとえば、後に首相となる鳩山一郎はこのG項を適用されて予定されていた首相の座をふいにしています。その一方で、アメリカとの関係構築に長けていた吉田茂が首相の座を射止め、その後(間は空きますが)計5回にわたって首相を務めることになります。
そして、戦後の初の首相を務める幣原も、次の内閣を率いた吉田も外務官僚出身者。
戦前・戦中に日本政界を率いてきた右派の大物政治家たちが退場したことで、GHQ支配のもとで必然的に、右派ではあるけれども思想性が薄く、親米かつ実務能力のある官僚出身者たちに白羽の矢が立ったのです。また、吉田茂は政党出身者を信用せず、各省のエリート官僚を自身の政党に入党させて政治家として登用したため、現代に続く「官僚内閣制」は彼に始まったとも言われています。
★Point2 治安維持法廃止により共産党など左派政党が台頭
思想、言論、結社などを厳しく取り締まってきた治安維持法(1925年4月22日に公布)が、GHQの決定により正式に廃止されました。また、同法違反で執行猶予となった人や仮出獄中の人の思想や行動を監視する「思想犯保護観察法」などの関係法令も廃止されました。
戦中の政治犯の大半は共産主義者でしたから、彼らの釈放(徳田球一・志賀義雄)や亡命者の帰国(野坂参三)によって、新たに結成された社会党や合法政党となった共産党は勢いを増していきます。
実際社会党の場合、日本国憲法下で最初の総選挙(1947年)で第一党となり、委員長の片山哲を首相とする連立内閣を樹立。また、それに続く芦田内閣でも、社会党は与党として7名が入閣しています(だだ、いずれの政権も短命でした)。
また、共産党は政権とは無縁でしたが、1946年の総選挙では5議席と、初めて帝国議会で議席を獲得しました。その後も党勢を拡大し、上記の片山内閣・芦田内閣の迷走で社会党に失望した有権者層の一部を吸収できたため、1949年の総選挙では35議席も獲得するに至っています。
★Point3 農地改革により右派政党の支持層が誕生
戦後の日本は貧困のどん底にありました。ゆえに、一部の豊かな権力者たちとの階級闘争を志向する共産主義思想や社会主義思想が大衆に醸成される可能性が高かったわけですが、アメリカとしてはこの状況を見過ごすわけにはいきません。
実際、GHQの最高司令官マッカーサーは、戦前の地主制度が日本の軍国主義に加担したとして農地改革を行いましたが、この改革の意図は地主の解体であると同時に、共産主義や社会主義の大衆への浸透を排除する目的がありました。
この改革で、地主が保有していた農地は政府が強制的に安値で買い上げられ、小作人に売り渡されることになりましたが、実に全国規模で7割余りの農地が地主から小作人のものに換わりました。従来、賃金労働者と並んで共産党の主要な支持層であった小作人のうちの大部分が、保守系政党支持の自作農に変わったのです。
こうして、農地改革によって、全国規模で保守政党の支持層が誕生したのです。
★Point4 労働三法成立により左派政党の支持層が誕生
1945年12月22日、国会は団結権の保障や団体交渉権の保護を明記した「労働組合法」を公布。1946年8月には、「左」寄りの組合「産別」と「右」寄りの組合「総同盟」という2つの全国組織が誕生し、戦前には約1,000しかなかった労働組合が、1946年11月で約16,000に、1947年5月には約22,000に急増、団体交渉の結果の恩恵を受ける立場の労働者は200万人を突破しました。
当初、労働運動の主導権を握ったのは共産党系の産別で、「共産党はGHQの威光を借りるため、GHQを最大限に利用して、産別がGHQの指示通り動いているかのような印象を意図的に」広めることに成功。当時GHQ労働課長だったコーエンは彼らの動きに一定危機感を抱きつつも、「産別にあれほど共産党が浸透しているとは、コーエンも気づかなかった」ようです。(※1)。
やがて産別はゼネストの失敗から衰退。一方で主導権を握った右寄りの総同盟は1950年に「民同」と合体し、反共の立場を明確にした「総評」が誕生します。
もともと総評の誕生には、反共色と強めるGHQの意図が働いていましたが、彼らの肝入りで生まれた総評も、51年には「平和四原則」(①全面講和、②中立堅持、③軍事基地反対、④再軍備反対)を決定し、反米路線を選択、その後も左傾化していったのです。つまり、アメリカによる労働組合工作も失敗に終わったのでした。
このように、労働組合法、追って公布された労働関係調整法(46年)、労働基準法(47年)といった民権自由に関するGHQ指令によって生まれた労働三法が、結果として左派政党の支持層を拡大させる役割を果たしていったのです。
★戦後政治の「民主化」により、大衆には左右対立の中で政治を考えるという価値観が(教育・マスコミにより)浸透していきました。
実際、
「俺は共産党が一番まともなこと言っていると思う」
「でも、共産党が本当に政権を取ったらソ連みたいになるらしいぞ」
「ということは自民党に対抗できるのは、実際は社会党だけか・・・。でもいまひとつ頼りないな・・」
という会話が、私が暮らしていた地方都市の中学生の間でも交わされていました。
もう20年以上も前の話ですが、このように大衆を国内の左右対立に目を向けさせることで、より外側にあるアメリカによる日本支配というフレームを見えにくくさせているという構造は、現在もあまり変わっていないように思います。今回の投稿がその認識を改める一助になれば幸いです。
※参考文献
「秘密のファイル CIAの対日工作 上・下」2000年・春名幹男(※1)
「『日本株式会社』の昭和史」1995年・NHK取材班ほか共著
「ヤクザが消滅しない理由。」2003年・デイビッド・E・カプラン、アレック・デュプロ共著
「よみがえる日本 占領下の民主化過程」蝋山正道(http://www.japanpen.or.jp/e-bungeikan/guest/pdf/rouyamamasamichi.pdf

List    投稿者 seiichi | 2009-03-15 | Posted in 04.日本の政治構造5 Comments » 

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コメント5件

 貴族 | 2009.07.25 12:14

イルミナティはヨーロッパの貴族連合で実質的に政治を支配してる権力者。
ロスチャイルド・ロックフェラーはイルミナティの手下で
経済担当ということなのでは。
大規模な経済活動は権力者から承認されなければ出来ないでしょう?

 匿名 | 2009.07.25 12:20

×ロスチャイルドもデビッド・ロックフェラーもバブル崩壊で大穴を空けた。
○ロスチャイルドもロックフェラーもバブル崩壊で大儲けした。
ですよ。
バブルを作って崩壊させたのがロスチャイルド・ロックフェラーでしょう。
シナリオを自分達で作っているから、大儲けでしょう(笑)

 匿名 | 2013.05.20 22:22

リーマンショックでロックフェラーがどうやったら儲かるんだ?説明願います

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