2010年09月08日

特権階級の世界と大衆共認の世界を繋いでいたもの(2)~金貸し支配⇒三権分立が特権階級の暴走を可能にした

「特権階級の世界と大衆共認の世界を繋いでいたもの(1)~武力支配時代の秩序期待」では、武力支配の時代においては、全社会的な秩序期待こそが、支配階級・特権階級と大衆の世界を繋ぐ紐帯だったことを述べた。
では、近代はどうなったか?
その前提として、近代になって制度がどう変わったのかを明らかにしておく必要があるだろう。
立正大学阪口大和氏の論稿「現代社会の権力構造(6)立正経営論集(2005年12月)」から引用する。
この論稿の趣旨は、三権分立制度の建前は、それによって権力集中の弊害を除けると仮定しているが、現実には、主権在民の幻想のもとにある立法府の弱体化と行政府(含む軍部) の制度的暴走が止められない。金貸し支配にとって都合の良い制度、それが三権分立をはじめとする民主制度だということだ。
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阪口大和氏
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ロスチャイルド家の例にみられように幾世代幾世紀にもわたって縦横の閨閥を国際的に形成, 蓄積し, 国家をも動かすほどの強力な権力複合体を形成しているものもある。彼らこそが経済万能の産業革命以降の近代史の陰の演出者どころか真の演出者であるかもしれないが, その全貌を掴むことはその秘密主義に加えて政治権力の鎧に隠れて歴史の表舞台には現れて来ないこともあって難しい。
民主制の幻想的主権在民のスローガンが彼ら(ロスチャイルド家)の支配力の隠蔽と維持にどれほど資しているか計り知れない。彼らの情報支配力によって民主制は現代社会で神話化するまでに礼賛されているのであろう。

特にこのような現代民主制の制度的欠陥を利用して成長したともいえる各国の産軍複合の権力体は二度にわたる世界大戦の悲惨な結果をもたらしたにもかかわらず, その行動は放任されたままであり, 国際紛争を自作自演するが如きに行う様々な策謀は止まる所を知らずに継続されて現代に至っている。
このような産軍共同体などが, 欧米を中心とする地球規模での現代社会の実質最強の権力保有者であるとしても, それをこの民主制憲法のもとにある国々では権力の保有者としてまとめたものとして認識しない以上, その権力体が如何に暴走しても規定できないのである(いまでは架空の存在となった専制君主の権力の暴走を防止することは出来るとしても!)。
しかし何故, 憲法その他の基本法制がかくまでも権力体系の実情と乖離したまま放置されているのか? それは, 現体制のもとで潜在化しながらも実権を握っている権力集団にとっては, 時代錯誤の現法体系は彼らの我欲追及に対して実質的制約を加えることが出来ないので好都合だからである。逆に言えば,彼らはこの法体系を利用してその地位を築いたのだから変える必要はないのである。

民主制や市場原理主義が一応の定着を示している現代先進社会では, ここまでの分析で示したように, 制度そのものの本質的欠陥が様々な面で露呈してきている。しかし, これだけ西欧文明の圧倒的影響下にある日本においては, 相変わらず民主主義神話が全盛である。

現世界を現実的に牛耳っている最強のグループたる軍事経済連合体は, 彼らの組織暴走が平和維持どころか国際規模での紛争や混乱を喚起するまでに逆機能しても制約を加えるべき統合権力が実在しないので防止され得ない。巨大(金融) 資本のあくなき私的利益追及についても同様である(経済戦争という意味での阿片戦争は終わった訳ではない)。彼らの暴走に歯止めをかけるもう一段階上の社会全体の調和を司る中枢権力機構が必要なのである。
現代社会の主権者が国民であり, 三権分立によって民主的に統治されているとする民主主義神話ほど, 彼らのように潜在化し巨大な組織連合の実権を握っている者たちにとってその支配力を隠蔽するのに都合のよい主張はない。彼らがその地位の保全に水面下でどれほど腐心しているか, またその権力が如何にエゴイスティックなものであるかは, 彼らがこのような冗談を通り越した空論としか受け止められないような主権在民神話の維持に躍起となっていることからも逆に推察出来るのである。

この小論に取り組んで得た結論は, あらためて今日を実質支配する権力が野放図に放置されているということである。経済権力は環境問題や資源問題をここまで深刻化させながらその寄って立つ自由放任の市場原理は絶対とされ, 産軍複合体の権力集団が引き起こす国際紛争は愛国主義の衣を着せられて美化されたまま無益な国際紛争を繰り返している。権力分布の現実とあまりに乖離した基本法制のもと, 主権在民の仮面のもとに深く静かに潜行した実権者たちは,発達したメディア情報網を徹底的に利用して国民を洗脳し, 民主主義を絶対視した神話を繰り返して幻想の世界に我々を陥れている。
一方で権力が分散化されているために, 国民誰一人, また権力者誰一人, 自分自身の責任と感じている者はいない。日本国内のもっと具体的な問題でいえば, 底なしの公的債務に対して, 歴代の首相の誰一人, 役人の誰一人としてその責任を感じている者はいないようである。巨大な制度と組織の慣性の中に埋没した現代人の無力感のもとにはあまりにも空しく響く人間性を賛歌する西洋の個人主義的思想によって啓蒙された現代人は権力者, 服従者共々かくも等しく, 日日和見主義的で傲慢不遜な人格の持ち主になり果てたのである。
世界人口の爆発的増加, 資源枯渇, 温暖化, 環境破壊などの地球規模での深刻な事態を前にして, 帝国主義的侵略の時代からみれば潜在化しているものの,今でも隠然と現代世界を牛耳る西欧上流社会の権力者たちは当然その支配力と優位性を保つために水面下では露骨な力による対応策を考えている。先進各国を跨いで暗躍する軍産連合体は, その彼らの要請に答えるために, 又, 自らの社会的支配力を維持するためにも世界の軍事的緊張を演出し続けなければならない。原爆保有国中心に大量殺人兵器の開発が何処まで進んでいるかは, 軍事上の秘密とあって誰にもその正確な実態は知らされてない。選民意識や愛国主義の美名のもとで殺人という最も凶悪な犯罪行為すら正当化するこの産軍複合体の潜行する支配力は, 二つの世界大戦のあとに到来した情報化社会にも決して衰えず, どのような大義名分のもとであれ, その利己性ゆえの殺戮と破壊行為を行うチャンスを虎視眈々と狙い続けよう。
一方, 経済権力が直接支配する分野では, 市場競争原理のもとの効率の追求で先進国人類の貧困からの脱却に貢献したことは認めるとしても, 今や主権国家の枠を越えた国際市場での寡占体制が確立されつつあり, 武力を資本に替えただけの経済的強制力による帝国主義的支配体制が地球規模で継続している。その実質の社会支配力は今や政治権力のそれを大きく上廻っているにも関わらず, 市場における闘いに勝ち部分的市場の権力の獲得者たらんとするだけで,それ以上の綜合的な権力としての社会的責任に対する自覚は決して高くない。

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三権分立を主張したモンテスキューの著書『法の精神』
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三権分立は専制君主の横暴を抑止するために設けられた制度というのが建前だが、現実は真逆であって、三権分立制度における近年の検察・官僚(+マスコミ)ほど暴走を重ねた階級は存在しない。実際、武力支配時代の為政者の方がはるかに中立・公正だった。「法の支配、それによって専制君主の横暴を抑止する」というのが三権分立の中核思想であるが、実態は「法の支配」ではなく「金貸し支配」だったのではないだろうか。金貸し→特権階級の暴走を抑止する制度的歯止めが現法体系に存在しないことが、それを示唆している。
三権分立は、元々ヨーロッパの国王(現在の欧州貴族の先祖)に一元的に集中していた立法・行政・司法の三権を、王権から切り離して独立させたものである。他に、軍隊や警察、通貨発行権(→中央銀行)も元々国王が掌握していたが、それが切り離された権限(機能)である(これらは三権分立という言葉の陰に隠れて見落とされがちであるが、社会統合上極めて重要な権限である)。
国王から切り離され分割されたことによって、これらの諸機能(権限)、具体的には検察や各省庁はそれぞれ単一集団に細分化されてゆき、自集団の利益第一となってゆく(それ以前は、国王の下で一元的に統合されていたわけだから、自集団の利益第一の傾向はあったとしても抑止されていたであろう)。「各集団を超えた次元にある社会を統合する組織が、実は単一の集団でしかないというのでは、社会を統合する資格などない」『実現論』「序文 ト.万人が半専任(副業)として参画する」 これは歴史貫通的に妥当する認識であるが、それが顕著になったのは、近代になって三権分立が制度的に固定され、社会統合機構が細分化されて以降だろう。
各統合機構が王権による統合を離れ、細分化され自集団の利益第一になれば、金貸しの利益誘導によって各統合機構が個別撃破され支配されるのは必然である。こうして国王から独立し分割された諸機能・権限は金貸しによって支配されていった。しかも、行政・司法も軍・警察・中央銀行も、国民に選ばれる訳ではない。その地位は試験に合格すれば獲得できる利権であり、従って、国民からの評価圧力はほとんど働かず、失策を繰り返しても責任を問われない。その結果、そこに巣くう試験エリートたちはトコトンまで無能化していった。
このように、近代制度は最初から、金貸し→特権階級の世界と大衆の共認世界が断絶する危険性を内臓していたのである。
主権在民の建前の下で、唯一、国民の意思が反映されるのは立法(政治家)であるが、「議会が立法府である」というも欺瞞である。選挙で選ばれた政治家が法案を審議するという建前だが、実際、政治家は官僚組織の助け無しに法案を作成するのは不可能であり、議会は法案の承認の儀式を行うに過ぎない。そして、法の運用において最も重要な執行権や裁量権は官僚や検察が握っている。さらに、政治家に投票する国民の意思そのものは、金貸し直轄機関とも言うべきマスコミによってコントロールされている。
こう考えてゆくと、三権分立の真の狙いは、国王から諸機能・権限を切り離し、その機能を金貸しの手中に収めることが真の狙いだったのではないか(国王→欧州貴族からすれば、金貸しがその財産管理だけでなく、ややこしい政治統合まで面倒を見てくれるということで、その権限を譲り渡した?)。そこで唯一民意が反映される、また地元の大衆と密着している政治家を、司法や行政、マスコミによって監視・包囲しコントロールするための仕組みだったのではないだろうか。
改めて、近代の金貸し→特権階級支配の制度的構造を整理すると、
【1】行政・司法・軍・警察・中央銀行といった統合機構が単一集団に分割され、それぞれが金貸しによって支配される。そこには大衆からの圧力は働かず、大衆共認とは切り離された構造にある。これが近年、特権階級が暴走し大衆共認と断絶した制度上の原因である。言い換えれば、三権分立という金貸しに都合のよい制度だから、特権階級は暴走したのである。
【2】唯一、国民大衆と繋がっている政治家は、金貸しによって支配された司法・行政・軍・マスコミによって包囲されている。とりわけ’70年以降、第一権力にのし上がったマスコミの世論支配→政治家叩きによって、政治家は忌み嫌われ、バカにされる存在に成り下がってしまった。
このように、特権階級の世界と大衆共認の世界が切り離されるように近代制度は設計されている。
しかし、特権階級の世界と大衆共認の世界の断絶が顕著になったのは、最近10年間、長くとっても20年間の出来事である。逆に言うとそれまでは断絶していなかったわけであって、近代制度の下で尚、特権階級の世界と大衆共認の世界を繋いでいたものは何なのか? 
次回、それを明らかにしてゆきたい。
るいネット
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List    投稿者 staff | 2010-09-08 | Posted in 04.日本の政治構造2 Comments » 

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コメント2件

 通りがけ | 2011.04.22 12:02

「母乳に放射能汚染の心配があります。」
>>http://08120715.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-4f70.html
れんだいこのブログさまにてコメントしたので転載します。
>(転載開始)
・・・・中略・・・・・・・・・・・・・・
付言しておけば、この地方に賢治時代にはなかった原発問題と云う新たな災害が来襲しており、この難問は未だ解けない。今後も予断を許さない。賢治が生きていたらどう詠うのだろうか。願うらくは天災対策でも大変なこの地域に、これ以上変な人工災害までもたらしてくれるな。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最後の付言部分につきまして、とおりがけは次のように考えています。
原発事故放射能汚染による健康被害は人災公害であり、賢治の時代それ以前にも鉱毒流出など水の汚染による広汎な健康被害は存在しました。
戦前は足尾銅山鉱毒事件(田中正造が扱いました)が有名であり戦後は水俣病有機水銀・豊島ダイオキシンが著名ですが同種の公害人災は古事記日本書紀の時代以前先史時代から世界中で発生しています。
「賢治時代にはなかった原発問題と云う新たな災害」ととらえるのではなく戦後発生の企業公害事件のひとつとして捉えて、水俣病発生責任者チッソの企業責任を被害者国民が厳しく追及したごとく、東電と保安院の原子炉外臨界生成放射性核物質放出拡散公害発生者責任を東北関東地方在住の放射能汚染被害を受けた国民がこぞって裁判で厳しく追及してゆくべきと考えております。
(要旨に無関係につき略)
投稿: 通りがけ | 2011年4月22日 (金) 08時07分
母乳に放射性物質が検出されたという報道がありました。
放射性核物質には指紋があり、どこの原子炉の臨界で発生した核物質かということが特定できます。
それを利用して福島第一原発由来のものであれば母子に対してまず国が広島長崎被爆者に配ったと同じ被爆者手帳をもれなく交付して健康被害に対する医療福祉受給を国の責任で確保する。これは先に述べた地震津波被災者証および放射能被曝避難者証とは別個に配られるべきものです。なんとなれば前2証は戸籍法に基づき総務省国土交通省財務省(戸籍は納税の基本)管轄、被爆者手帳は医療保険福祉保険法に基づき厚生省管轄業務となるからです。
公害による健康被害に対しては国が治療費を全額負担し総額を発生責任企業に対して全額請求し強制的に国庫へ支払わせるのが当然となります。これを全額支払わない企業は脱税犯罪と同等の犯行を犯したとして情状酌量の余地なく実刑厳罰に処せられます。
母乳中の放射性核物質が福島原発由来の核物質であると判明した場合、東電の母乳汚染企業責任が厚生省行政責任とは別個に企業単独で問われます。ちょうど森永砒素ミルク事件(豊島ダイオキシンと同じく中坊公平が担当)のミルク製造企業のように。東電に製造物賠償責任いわゆるPL法にもとづく個別賠償責任があり訴訟では全敗します。福島原発由来の放射性核物質で母乳汚染を受けた被害者は全員が東電を訴えるべきです。
(転載了)

 chocolate hermes handbags | 2014.02.02 20:19

hermes outlet store 日本を守るのに右も左もない | 集団を超えた社会をどう統合し直すか?(5)~今こそ日本人の共同体精神が発揮される時~

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