2010年09月12日

特権階級の世界と大衆共認の世界を繋いでいたもの(3) 近代~’70年までの豊かさ期待

1960067.jpg
1963年新政策発表演説で所得倍増論を述べる池田勇人首相
画像はこちらからお借りしました。
「特権階級の世界と大衆共認の世界を繋いでいたもの(1)~武力支配時代の秩序期待」では、武力支配の時代においては、全社会的な秩序期待こそが、支配階級・特権階級と大衆の世界を繋ぐ紐帯だったことを述べた。
では、近代における全社会的な期待は何だったのか?
いつも応援ありがとうございます。

にほんブログ村 政治ブログへ


近代における全社会的な期待とは、明治時代の「富国強兵」「殖産興業」、戦後の「所得倍増計画」「高度経済成長」に代表される、豊かさ期待に他ならない。とりわけ戦後、日本人は物的な豊かさ期待に包まれ、活力を持って働き、高度経済成長を実現した。
武力支配時代の秩序期待と同様、近代においても豊かさ期待という大衆の期待が全社会的に充満している以上、そこでは国民の為に働くのが為政者の条件であるという共認が存続した。言い換えれば、豊かさの実現=国益の拡大という大衆的な期待圧力(監視圧力)が特権階級に対して強力に働いていたからこそ、特権階級も国民大衆の豊かさ期待に応えようとしていた。従って、特権階級は官僚もマスコミも一定は有能だったし、何よりも中立性・公平性という大原則を逸脱することはなかった。
このように‘70年以前の貧困な時代には、国家(民族)を挙げて豊かさ⇒私権獲得に邁進していたが、‘70年頃全社会的に豊かさが実現されると、まず国家全体の豊かさという国家私権(目標)が衰弱し、次いで、’90年バブル崩壊を契機に‘95年企業私権が衰弱する。利益追求の主体たる企業が、これ以上の利益追求を断念したということである。
「私権追求に代わる集団の目標は周りの充足、そして男女の共認の輪が認識収束の母胎」
こうして豊かさが実現されて以降は「物的な豊かさ」はもはや活力源たり得なくなった。それは、社会の深層から沸き起こる「豊かさ期待」が消えてなくなったことを意味する。実際、’50年代や’60年代に盛んだった大衆運動(労働運動や安保闘争)も、この全社会的な期待感が生み出したものだったが、’70年の全共闘運動を最後に、豊かさ期待が衰えるにつれて大衆運動は消滅していった。
img30a9c6c1zik5zj.jpg
1997年山一証券自主廃業
画像はこちらからお借りしました。
とりわけ’90年のバブル崩壊を契機として’95年以降は企業私権さえ衰弱し、物的な豊かさという軸上では誰もが暗い見通ししか持てなくなった。今や「誰もが豊かになれる」というような社会全体から沸き起こる期待感など、どこにも存在しない。この「期待感の不在」こそ、現在、どれほど特権階級が暴走を続けても、あるいは無能さをさらけ出しても、大衆的な運動がどこからも起こってこない根本的な原因ではないだろうか。
つまり、武力支配の時代は秩序化期待、近代では豊かさ期待という全社会的な期待感こそが、支配階級・特権階級の世界と大衆共認の世界の紐帯だったのである。
そういう意味では、全社会的な期待感を喪失した、’70年以降の40年間は、歴史上極めて特異な時代だったとも言える。『るいネット』「『みんな不全』が一瞬消え去ったこの30年」
ここで言う全社会的な期待感とは、その時代を動かす中心軸そのものであり、時代のパラダイムそのものだと言い換えることもできる。その期待が無いということは、中心軸を喪失しているということと同義であって、そうである限り社会も自分も活力を衰弱させたままで、決して統合されることはない。
従って、社会を再生するためには、豊かさ期待に代わる新しい期待像を作り出す必要があるということになる。
では、豊かさ期待に代わる新しい期待感とは何か?(続く)
るいネット
メルマガ

List    投稿者 staff | 2010-09-12 | Posted in 04.日本の政治構造2 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2010/09/1745.html/trackback


コメント2件

 unimaro | 2011.05.01 21:44

お疲れさまです。
>ところで、太陽光発電は変換効率が20%と低く、コストが見合わないとされてきた。ところが、つい先日の2011/4/25に東大とシャープが「次世代太陽電池として期待されている「量子ドット太陽電池」の理論変換効率が75%に達することを明らかにした」というニュースが飛び込んできた。これは、電力辺りのコストが1/3となることを意味するし、逆に現在の設置面積からでも3倍の電力を生み出せることを意味する。75%というのは、理論上の値だそうだが、今後のエネルギー戦略の大きな契機となるだろう。
陳腐化してしまう半製品、ライン設備等は元をとらなきゃならなかったのでしょうか。
エコポイントで、太陽光発電と家関連でかなり金を政府から出してもらえたのは、業界にとって幸運wでした。
太陽光もだいたい満足できるところまで売ったので、それを「入れ替え」させるために、25%→75%に、と公表した、と。
サギみたいなものなんで、今の太陽光利用者はただで入れ替えさせないとw
無縁なびんぼ人のウリが言うのもなんですがw

 beige hermes bags | 2014.02.01 20:43

hermes bags purse forum 日本を守るのに右も左もない | 原発を巡るみんなの意識は、どうなっているのか?

Comment



Comment