2013年02月26日

新概念を学ぶ9~新たな集団本能=親和本能の獲得

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 新概念を学ぶ8では、外敵から逃れるため半地下に隠れ住むしかなかった始原哺乳類(原モグラ)は、弱者であったがゆえに胎内保育と産後保護という種の保存機能を獲得しました。また、成体まで淘汰が働かなくなるので、成体の淘汰を激化させるために性闘争本能を強化して、淘汰適応を図ってきたという事を扱いました
 しかし、生物の原点は種の保存であるにもかかわらず、個体を死に追いやるまで強化された性闘争本能を持つ始原哺乳類(原モグラ)は、尋常ではない生物であったと言えます。集団本能を持ちながらにして集団を破壊する性闘争を行わざるを得ないという矛盾を孕んでいるのである。その後、集団化していった哺乳類がどのようにして、その矛盾を克服していったのかを実現論を紐解きながら、見ていきたいと思います。

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まず『実現論』「第一部 前史 ハ.哺乳類(原モグラ)時代の性闘争本能」から引用します。

 この様に哺乳類は、淘汰適応の必要から性闘争の本能を極端に強化し、その性情動物質によって追従本能(いわゆる集団本能の中枢本能)を封鎖することによって、個間闘争を激化させ淘汰を促進するという淘汰促進態である。
 しかし、それはその様な大量淘汰態=進化促進態としてしか生き延びることができない弱者故の適応態であり、生命の根源本能たる集団本能を封鎖し、大多数の成体を打ち敗かし餓死させるこの極端に強い性闘争本能は、生き物全般から見て尋常ではない、かなり無理のある本能だとも言える。
 だからこそ、同じ原モグラから出発して地上に繁殖の道を求めた肉食哺乳類や草食哺乳類は、進化するにつれて親和本能を強化し、その親和物質(オキシトシン)によって性闘争本能を抑止することで追従本能を解除し、(尋常な)集団動物と成っていったのであろう。このことは、大量淘汰の為に集団本能をも封鎖する異常に強い性闘争本能が、もともと地上での尋常な適応には適わしくないor 問題を孕んだ本能であることを示している。
 しかし、現哺乳類やサル・人類の性情動の強さから見て、やはりこの強すぎる性闘争本能を進化の武器として残し、それが作り出す限界や矛盾を乗り越えて新たな可能性に収束する(例えば親和本能を強化する)ことによって、哺乳類やサル・人類は進化し続けて来たのだと考えるべきであろう。

 性闘争本能を極端に強化した哺乳類は、性闘争本能を進化の武器として残しながら、生命原理に適応した集団動物となるために、3つの機能を獲得・強化していきます。それは、①親和本能の強化、②発情期という適応戦略、③敗従本能による集団の秩序化です。
①親和本能の強化
 

現存する集団哺乳類も、それ以前の動物(魚類、両生類etc)の追従本能に比べ、同類同士の親和性(コミュニケーション)をより高めていることは明らかです。また、親和本能の強化過程には、哺乳類の胎内保育と産後保護がもたらす親和物質が関係しているとも考えられます。
 
るいネット「哺乳類の性闘争本能がもたらす矛盾と親和本能の強化」より引用

 この胎内保育に由来する親和物質はオキシトシンと言うホルモンです。オキシトシンは分娩や授乳を促すホルモンとして発見されましたが、その後の研究で、哺乳類で最も発達しており、母親が子供を認識する役割や、夫婦間の親和性を高める役割、他人に対する信頼感を高める役割があることも発見され、親子やつがいのきずな形成など、社会行動に関連する物質とされています。
参考:愛と信頼の「脳内ホルモン:オキシトシン
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 そもそもオキシトシンは体内保育機能を実現するため哺乳類が発達させたホルモンだと考えられます。胎内保育を行う上で体内に侵入した異物を排除する免疫機能が問題となります。免疫機能が作動すれば、胎児は『異物』と認識され、排除の攻撃を受けます。従って胎内保育を実現しようとすれば、この免疫機能を抑制する必要があり、それを担ったのがオキシトシン系の物質だと考えられます。
 
 このオキシトシンの機能と皮膚感覚の充足回路を結合させることで、哺乳類は母子間のスキンシップの充足機能を作り出します。この様に親和機能の強化はメスから始まっており、メスは性闘争本能が元々弱いこともあいまって、まず哺乳類のメスの性闘争本能が封鎖されます。そして集団本能がメス間で再生され、メスと子供の生殖集団が形成されたのです。
 
 更にこの親和機能はオスメス間の遺伝子交差、及び乳児期の母子充足を通じてオスにも徐々に移植されていきます。そのようにしてやがて哺乳類のオスも性闘争本能を抑制し、集団本能を復活させていったのです。
参考:るいネット「オキシトシンと哺乳類の集団本能
 
 
②発情期という適応戦略
 

 通常時は、異常に強い性闘争本能は地上での適応には適わしくない=適応的ではない為、性闘争本能は親和物質によって抑止され、追従本能を解除→集団性が保たれる。しかし性闘争本能を抑止したままだと、淘汰適応が働かないので、一定周期で追従本能を抑止し、性闘争本能を解除する。
 これが「発情期」である。つまり発情期とは、この追従本能(=集団本能)と性闘争本能の両立と言う矛盾した課題への適応戦略と言うことができる。
(なお発情期には、生殖存在として高度に進化したメスの肉体的負担の減少(=卵子の生産・維持には莫大なエネルギーが必要)と、受精可能性の向上と言う適応戦略も含まれており、雌雄分化における高度な適応戦略とも言える)
 
るいネット「性闘争本能と追従本能の関係性」より引用

 集団が再生されたといっても、性闘争本能が消滅したわけではありません。体内保育を行う哺乳類にとっては、性闘争による淘汰適応は必要不可欠なのです。
 哺乳類は、この追従本能(集団原本能)と性闘争本能と言う矛盾した本能を両立させるために、「発情期」という、適応戦略を作り出しました。
 もともと、ほとんどの植物・動物には、育ちやすい環境に生まれるように受精の時期を選ぶ繁殖期(発情期ではない)があります。
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 ところが、哺乳類のメスだけは、この繁殖期に発情と非発情の繰返し周期(性周期)を持っています(オスはメスの発情に誘発されて発情する事が多い)。繁殖期にさらに排卵期を設定して受精同期タイムを絞っているわけです。
 つまり、性闘争本能を残しつつ、最小限にその発現時期を絞り込む。これが、「発情期」で、追従本能(集団原本能)と性闘争本能を両立させる適応戦略です。
③敗従本能による集団の秩序化

 また、性闘争本能は、殺すまで闘ったのでは、種が絶滅してしまうので、敗れた方が勝者に従う敗従本能がセットされている。
この敗従本能は集団統合に関係する為、追従本能(=集団本能)に根ざしていると考えられる。一般に高等哺乳類ほど、序列関係が明確化されていることから、進化するほど性闘争過程においても追従本能を両立させる適応戦略がとられていることが解る。
 哺乳類は、発情期と序列原理⇒(追従本能に根ざした)敗従本能と言う2つの構造によって、集団性を保ちながら性闘争での淘汰適応を図ると言う矛盾した適応を可能にしていると言える。
るいネット「性闘争本能と追従本能の関係性」より引用

 敗従本能は同類同士の激しい性闘争本能=縄張り闘争による、集団崩壊の危機を防ぐための本能として存在します。
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 追従本能を基盤とした敗従本能は弱いものが強いものに従い、種の保存と集団の維持を実現しました。さらには力の序列原理によって個体が順位化され。集団の秩序を保持することまでも可能にしています。
 
 
●まとめ
 
 原モグラから始まる哺乳類は群れを凌駕するほど性闘争本能を強化させ、集団本能を封鎖した「尋常ではないorかなり無理のある」動物でしたが、地上に繁殖の道を求めるにあたって、哺乳類特有の親和本能を強化させていきました。そして、哺乳類の体内保育に由来する親和物質オキシトシンによって親和本能を強化することで仲間との集団を形成し、地上の外圧に適応したのです。
 性闘争本能により封鎖された集団本能に変わる新たな集団本能の中核として産み出されたのが、親和本能だったのです。この親和本能こそ、前回記事で扱った人類の新たな活力源を形成してゆく土台になってゆくのです。
 
 原モグラから性闘争本能の進化を武器にしながら、その限界を乗り越え、新しい可能性に収束することによって哺乳類はサル、そして人類へと進化してきました。次回は、半地下から地上へ可能性を求め、親和本能によって外圧適応に成功した哺乳類が次に可能性を獲得した樹上における進化過程をみていきます 😀

List    投稿者 pandaman | 2013-02-26 | Posted in 13.認識論・科学論No Comments » 

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