2013年02月15日

新概念を学ぶ8~哺乳類の性闘争=縄張り闘争本能⇒人類の私権闘争

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いままでの主要ポイントを振り返ってみましょう。
【1】生物は外圧適応態として進化してきたこと。従って内圧=外圧であり、逆境こそ進化の源泉であること。
【2】単細胞の時代から今日まで外圧適応態として必要であったすべての諸機能が塗り重ねられてきたのが現在の生物であること。
【3】塗り重ねの原点にあるのは群れること=集団原本能であり、生物はこの集団原本能を土台に様々な集団本能機能を塗り重ねながら集団として適応してきたこと。つまり、生物の成功体験は種(集団原本能)を原点として積み重ねられてきたこと。
【4】生物は安定と変異の軸上での性の差別化を推進する方向で進化してきたこと。
【5】雌雄に分化したのは種や集団が外圧に適応するためであり、逆に言うと、雌雄・男女の役割分化という自然の摂理に則った方が、集団や社会のみんなが適応できる、充足できるということ。
そして前回は、
新概念を学ぶ7 逆境下で進化してきた哺乳類
リンク
では哺乳類は長い長い年月のなか幾度と無く、凄まじい生存圧力に晒され、絶滅の危機を経験してきたこと見てきました。そしてその逆境のなかで生き残る為に、様々に適応、進化してきたことを学びました。
今回は遙か昔の哺乳類から現代の人類を貫く性闘争本能について見ていきたいと思います。
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『実現論』「前史ハ.哺乳類(原モグラ)時代の性闘争本能」から引用

原モグラは、土中に隠れ棲むしかなかった弱者であり、それ故にいくつかの特徴的な本能を発達させている。中でも哺乳類の哺乳類たる最大の特徴は、弱者が種を維持する為の胎内保育機能(それは、危機ゆえに出来る限り早く多くの子を産むという、危機多産の本能を付帯している)である。しかし、卵産動物が一般に大量の卵を産み、その大部分が成体になるまでに外敵に喰われることによって淘汰適応を実現しているのに対して、胎内保育と産後保護の哺乳類には、適者だけ生き残ることによって種としてより秀れた適応を実現してゆく淘汰適応の原理が働き難くなる。
そこで、淘汰過程が成体後に引き延ばされ、成体の淘汰を激化する必要から、哺乳類は性闘争=縄張り闘争の本能を著しく強化していった。実際、性闘争を強化した種の方が適応力が高くなるので、性闘争の弱い種は次第に駆逐されてゆく。かくして哺乳類は、性闘争を極端に激化させた動物と成っていった。モグラの場合、性闘争に敗け縄張りを獲得できなかった個体(=大半の個体)は、エサを確保できずに死んでゆく。
もちろん、性闘争=縄張り闘争の本能は、脊椎動物の前から殆どの動物に存在しているが、哺乳類は、この性闘争(=縄張り闘争)本能を淘汰適応の必要から極端に強化した動物である。その場合、種を存続させる為には、闘争存在たるオスがより闘争性を強めると共に、メスたちの外側で外敵に対応した方が有利である。
従って、とりわけオスの性闘争(=縄張り闘争)本能が著しく強化されることになる。現哺乳類の祖先と考えられているモグラの場合、メスも性闘争(=縄張り闘争)をするが、オスの闘争はより過激で、その行動圏はメスの3倍に及ぶ。従って、概ね3匹のメスの縄張りを包摂する形で1匹のオスの縄張りが形成される。これが、哺乳類に特徴的な首雄集中婚の原型である。

 
上記実現論で重要な言葉は「性闘争=縄張り闘争」「首雄集中婚」「内雌外雄」です。
その3つの言葉の事例として下記を紹介します。
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画像はこちらから(リンク
■モグラの性闘争=縄張り闘争
基本的に集団は作くらず単独生活。無益に争うことは少ない。
繁殖期になると、オスはなわばりの境界をこえて、広く出歩くようになる(繁殖期のオスのなわばりは、メスの3倍におよぶ)。その際、雄や子どもを生む用意ができてない雌に出くわすと縄張り闘争が起こる。縄張り闘争に負けた雄は、縄張りを失うこととなり(食糧を得ることができず)死んでしまう。以上により、雄の淘汰が行なわれ、結果的に内雌外雄の集団形態を作る。
■アザラシの性闘争=縄張り闘争
アザラシの雄は1年中陸に、雌は発情期のみ陸に現れます。
その挑発に誘われて、雄同士の雌を巡る争い=性闘争がおこなわれ、勝った者が、雌を獲得します。集団体系は、一雄一雌型か一雄多雌型のどちらか。
というわけで、アザラシは性闘争をとことん強化して淘汰してきた種だと考えられます。
■ライオンの性闘争と首雄集中婚
集団体系は雄1~2匹、雌4~6匹の集団で、雌は出産時になると、集団から離れて行動し、子供が集団についていけれるようになると、集団に戻ってきます。雄の子供が2歳ごろになると、集団をでて、他の集団をのっとるまで1匹で行動します。
他集団をのっとる時に雄同士の争いが行われますが、ここでは、一瞬で勝負が決まり、負けた雄は集団から追い出されます。
他集団をのっとった雄は次に、その集団の子を殺します。雌は、子を育てているときは発情しないから。
というわけで、ライオンは雄同士の争いに加え、のっとった集団の子を殺し、より強い雄の子を残す事で、淘汰がおこなわれます。
 
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画像はこちらから(リンク
■シマウマの性闘争=縄張り闘争と首雄集中婚
群れは一頭のオスと数頭のメス、それにその子どもからなるが、これとは別に独身オスだけの群れもつくられる。群れのメスは、ふつう生涯を通じて同じ群れに留まるが、主雄は年老いたり病気になったりすると、若く健康的なオスにとって代わられる。群れのオスの子どもは、2~3歳になると主雄から追い出されるように群れを出るが、彼らも独身オスの群れの一員となる。 群れの主雄は、群れを統率し、捕食者から群れを守ろうとする。リカオンやハイエナなどの捕食者の追跡にあうと、いくつもの群れの主雄たちが集まって群れの最後尾を固め、撃退することが観察されている。

こうして、哺乳類のオス・メス関係を特徴づけるオスの性闘争の激しさと内雌外雄の摂理(本能)、および群れの全てのメスが首雄(勝者)に集中する首雄集中婚の婚姻様式(本能)が形成された。このオスの性闘争の激しさと内雌外雄の摂理と首雄集中婚は、多くの哺乳類に見られる一般的様式であり、もちろんサル・人類もそれを踏襲している。(学者の中には、首雄集中婚を「ハーレム」と呼び、オスの天国であるかの様に表現している者がいるが、それは全く見当違いである。オスはメスよりも数倍も厳しく淘汰されるというのが事の本質であって、その帰結が首雄集中婚なのである。)

では次に哺乳類の性闘争本能は人類にどう受け継がれたかを見ていきましょう。
性闘争本能はすべての動物に備わっていますが、哺乳類はこの性闘争本能をトコトン強化した種です。なのでオス同士の性闘争は血みどろになるまで行われます。
しかしそのままでは際限なく性闘争が続き、集団統合力が衰弱してしまいます。それでは外圧に対して適応できません。そこで集団化した哺乳類には性闘争を決着させる本能として、敗従本能がセットされています。負けを認め、力の弱い者が強い者に従うという本能です。
集団化した哺乳類は徹底した力の原理=力の序列原理によって集団が秩序化され、統合されています。又、メスが安全に出産・育児するための縄張りの確保=縄張り闘争と一体になっています。
人類の場合もこの縄張り闘争が私権闘争になっただけで、人類の男女・夫婦の関係も、この性闘争・縄張り闘争とそれに基づく本能的な役割分担を踏襲しており、基本構造は全く同じです。
性闘争⇒縄張り闘争の全てが序列原理によって統合されているのも、全く同じで、人類社会の身分制度も、この序列に士農工商や、社長・部長・課長という名前をつけただけで、性闘争⇒縄張り闘争を力の序列で秩序化し統合するという動物の序列原理と全く同じです。(私権時代3000年間は文明社会と言われていますが、実は動物的な本能原理=序列原理の社会にすぎません)
81849 力の序列が秩序原理となる仕組み(リンク
81923 力の序列が秩序原理となる仕組み②(リンク
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以上のことをまとめると
①哺乳類は性闘争本能を強化し、性闘争=縄張り闘争を最大の活力源とし、進化してきました。とりわけ集団化した哺乳類は序列統合という統合原理によって集団を統合しています。
②私権時代の人類も(性闘争=縄張り闘争⇒)私権闘争を最大の活力源とし、序列原理という統合原理によって集団や社会が統合されてきました。
「哺乳類の性闘争=縄張り闘争⇒序列原理」「人類の私権闘争⇒身分制度」もその前提となっている圧力は生存圧力です。
性闘争=縄張り闘争本能⇒私権闘争は力の原理=序列原理によってしか統合できません。従って、生存圧力が働いている限り、身分制度は絶対不動で、変えることはできません。それが社会が変わらなかった根本原因です。実際、世界中、どの国も、力の原理が支配する身分社会であったことは例外がありません。
ところが1970年頃、人類が飢餓を克服し、生存圧力が働かなくなり、私権闘争活力が衰弱しました。生存圧力が働かなくなった’70年代以降の社会では序列原理と身分制度が無効化し、身分序列によって統合されてきた国家も企業も学校も家庭もガタガタになり、社会全体が統合不全に陥りました。
私権闘争以外に人類に活力源が無いのであれば、人類は活力を失い、社会は混迷を深めていく一方です。
そこで今、新たな活力源(私権圧力に替わる圧力源)と統合原理(序列原理に替わる統合原理)が求められています。
その答え(ヒント)は、人類の進化過程にあるはずです。
そのためには、人類進化の前提であるサルの進化過程や、その前にある哺乳類の進化過程を押さえる必要があります。
そこで次回は、哺乳類が集団化していく過程でさらに獲得したもの、適応の方法をさらに追求していきたいと思います。
『実現論』「前史ハ.哺乳類(原モグラ)時代の性闘争本能」には、人類の活力源や統合原理にも繋がる重要な認識が存在しました。
さらに哺乳類の歴史事実を追求することで上記のような問題の答えを導き出せる可能性がありそうですね。

List    投稿者 KAWA | 2013-02-15 | Posted in 13.認識論・科学論No Comments » 

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