『アメリカの共和党・民主党』22・・・要約版(1/2):建国前~現代
このシリーズで、共和党と民主党を軸にしながら、建国前夜から現在に至るまでのアメリカを追求してきました。
(※【(21):総年表とリンク集】がシリーズの目次にもなっているので参照してください 🙄 )
そのなかで、『アメリカとは?』
近代ヨーロッパ発の市場拡大を目的として建国された【(プロローグ):市場拡大のための国家】
ということが鮮明になりました。
再度、ここまでの内容を俯瞰してそのことを確認してみよう 😀
続きを読む前に応援よろしくお願いします
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
■建国前夜:アメリカ大陸はヨーロッパ列強国の市場拡大のための餌場
15世紀中頃の大航海時代(商業経済)の幕開けから、スペインにはじまりオランダ、フランス、イギリスなどのヨーロッパの列強により、“アメリカ大陸”の金銀の略奪が行われた。
その金銀が大量にヨーロッパに流れ込みヨーロッパ市場は拡大するとともに、ヨーロッパでの覇権を獲得するためにアメリカ大陸の原資をめぐる戦いが激化していく。
そして、金銀の略奪が一区切りつきだすと、アメリカ大陸は重要な植民地対象として、ヨーロッパ列強国が競って先住民の虐殺と土地の略奪を行ってゆく時代に突入していく。
そして、アメリカ大陸において植民地間の覇権闘争が繰り広げられ、それがそのままヨーロッパ本国間の覇権闘争の成果に転写されていく。
そして、英仏の1756~1763年の7年戦争を堺に、大陸の北米そしてヨーロッパでのイギリス覇権が確立されていく。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
□独立戦争は本国と植民地のイギリス人同士の私権獲得をめぐる内戦を国際戦争にすり替えた戦争
そんななかで、私権獲得の可能性を求めて植民地アメリカ大陸に渡ったイギリス人(WASPなど)が、ヨーロッパ大陸の需要(主には戦争)を足場にアメリカ大陸で市場を拡大させていった。
そして、遂に、植民地人がさらに市場拡大するうえで邪魔な本国からの強制圧力の解放を目的にした【(1):アメリカの独立戦争(1776)】が起こる。
この戦争の実態は、本国と成長した植民地のイギリス人同士の私権獲得をめぐる内戦であったが、植民地側が勝つにはイギリスの宿敵フランスから援助を受けることが不可欠であった。
そのために内戦を国際戦争に転化させる必要があり、アメリカを国家として承認する独立戦争を起こしたのである。
このように、アメリカ建国前の状況をみても、アメリカはヨーロッパの市場拡大のための大陸であり、市場拡大のために建国された国であることがわかる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
□南北戦争は市場拡大のための奴隷労働者の獲得をめぐる戦争
そして独立後に起こったアメリカ最大の戦争、【(2):アメリカの南北戦争(1861)】が起こるのだが、
それも、
ヨーロッパに比べ工業化が遅れていた為に保護貿易を守り、大陸の南部・西部の資源を確保したい北部と、農業生産品をイギリスなどヨーロッパに輸出する為に土地を守り自由貿易にしたい南部との、市場での私益の獲得をめぐる闘いであった。
そして、工業化を進めていくうえで移民だけではまかなえなくなり国内低賃金黒人労働者を確保したい北部と、農業を進めるうえで黒人奴隷を確保している南部の、市場拡大のための奴隷労働者の獲得をめぐる闘いであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
■アメリカの市場拡大の歴史は略奪史! そのなかで産業資本が拡大し自前の化け物資本家が肥大
そして、工業化を進める北部の勝利の後、共和党を軸にして、農業資本から産業資本へ転換し、【(4):世界一の工業大国から経済大国】にまで市場を拡大させたが、
それも、
①大陸で先住民の土地と資源を略奪したこと(【(3):市場拡大の歴史は略奪史】)
②ヨーロッパ戦争=第一次大戦(1914~1918)の戦争市場による。
そして、産業資本の拡大によりアメリカ自前の化け物大財閥(→国際金融資本家=金貸し)、鉄鋼王:JPモルガン、石油王:ロックフェラーなどを生んでいったのだが、その代表である、ロックフェラー(【(15):どちらが政権をとってロックフェラー】)が大きくなっていく契機を見ると、
世界一の経済大国になるまでもそれ以後も、アメリカの市場拡大が、戦争(略奪)を最大のバネにしてペテン(だまし)の手法を加えておこなわれてきた構造が見て取れる。
・大陸の略奪史で市場を拡大
・ヨーロッパ戦争=第一次大戦による戦争市場
・1929年~世界大恐慌のなかで倒産する企業の買占め
・中東(特にサウジアラビア)の石油利権の獲得
・2回のオイルショック
・そして、第二次大戦後の冷戦の捏造→軍産複合体の肥大
・そして冷戦以後の世界各地での戦争誘発(テロの捏造)
・そして、極め詰けは、1913年に民主党のウィルソンを担ぎ上げて連邦準備銀行(FRB)の成立
(※ただし、主導権は英ロスチャイルドに握られている)
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
■私権意識と排他意識の塊のアメリカは、略奪を続けることでしか市場を拡大できない
そして、ヨーロッパを主戦場にした第一次大戦後の1920年代初めには、経済大躍進→黄金時代、狂乱の1920年代を迎え、建国以来のここまでの原動力になった共和党は国内でも無敵の様相を示した。
しかし、実態は、共和党政府を誘導し、大企業の利益優先政策を取ることで一部特権階級を中心とした「経済力による階級社会」を確固としていく時代であった。
そして、1920年代の中盤~後半になると、過剰生産→投機→衰退の過程、→1929年~アメリカのバブル崩壊から信用収縮を経て、「アメリカ発の大恐慌」へ向かって行った。
大恐慌を迎え私権獲得の機会が閉塞していくなかで、白人中産階級から私権獲得の機会より保障を求める声が大きくなり、民主党を基盤にニューディール政策が登場する。
しかし、私権を求めた移民の国+近代以降に建国され近代しか知らない共同体的基盤を持たない国、
つまり、私権意識と排他意識の塊のアメリカでは、国家主導で平等に福祉を施すニューディール政策は成功しない。
そして、産業が衰退し、ニューディールが成功しないので、結局、略奪(戦争)を続けることでしか市場を維持・拡大できず、産業資本と深く結びついた軍産複合体が肥大していく。
【(6):アメリカ(人)の意識(1/3)】
【(5):戦争することでしか、平等も市場拡大も不可能な国】
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
□冷戦は、「米VSソの対立」と「自由VS共産の体制の対立」の二重のペテン
そして、軍産複合体は、第二次大戦以降の戦争市場が弱まると、実際に戦争を起さないでも戦争市場を拡大させるため、『米ソの「力の対立」をでっち上げ』、さらにそれを『自由社会ⅤS共産社会の全地球的な「体制の対立」への摩り替え』の二重のペテンを行い“冷戦”をつくりあげる。
結果、冷戦が権力政治的にはまだ戦争ではないにも関わらず、イデオロギー的にはまさしく戦争状態として捉えられ、平時においても戦時状態の軍事力最優先主義が適用されることになり、世界的に軍事需要が定常的に発生することになる。
さらに、冷戦後は、戦争状態がないばかりでなく敵の存在すらない「テロ戦争」をでっち上げ戦争市場を拡大させていった。
【(12):軍産複合体はペテンの戦争脅威で儲ける(1/3)】
【(13):軍産複合体はペテンの戦争脅威で儲ける(2/3)】
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
■貧困層を恒常的に生み出すことが、市場拡大の原動力
一方、ここまでのアメリカの市場拡大を見て忘れてはならない視点がある。
【(9):アメリカ移民の歴史(1/3):独立~1880年代】
【(10):アメリカ移民の歴史(2/3):1880年代~現代】
【(11):アメリカ移民の歴史(3/3) :まとめ】
アメリカは移民国家であるが、このことからも市場を原理的に見れば次のようなことが指摘できる。
「市場は貧乏人がいてこそ拡大する」
市場とは、搾取対象の存在を不可欠とし、人工的な格差こそ「市場拡大の原動力」であると。
つまり貧困層を恒常的に生み出すことが、市場拡大の原動力として不可欠の要素なのである。
だから、市場拡大のための国家アメリカは、移民国家であり続ける必要があった。
そして、急激な移民を吸収することを可能にした近代しか知らない国家であったからこそ、ここまで急激に市場を拡大させることが出来たのである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
■共和党も民主党も、略奪・騙しの市場原理主義の基本は変わらない
そして、このシリーズを通じて、アメリカの政党についても随分明らかになった。
まず、「市場拡大のための国家アメリカ」においては、共和党も民主党も、市場原理主義の基本は変わらない。
そして、どちらも裏で支配する国際金融資本家=金貸しの意向で動いていることも変わらない。
そして、ニューディール以降、どちらの政党も軍需企業を潤す事を念頭に置かないとなりたたない。
【(14):軍産複合体はペテンの戦争脅威で儲ける(3/3)】
違いがあるとすれば市場拡大の戦略と背後についている国際金融資本家(=金貸し)の違いだけである。
まず政党の力関係の大きな流れは、
建国から南北戦争の1860年のリンカン当選以来、ニューディールの1932年F・D・ローズベルト当選まではほぼ共和党の多数党の時代であった。
そして、1936年のローズベルト連合が形成され、広く低所得者層、都市大衆が支持者になり、1932年の選挙戦以来から第二次大戦を背景にほぼ民主党の多数党の時代が到来した。
そして、1969年のニクソンそしてより顕著に’82年のレーガンから今のG・W・ブッシュに至るここ約30年ほどの間の共和党の変容で錯綜するが、
議会まで含めれば基本的には民主党が多数党を占める状況が‘90年頃まで続いた
そして、‘90年台後半頃から民主党の転換組の「新保守主義(ネオ・コンサーヴァティヴ=ネオコン)」と「キリスト教右派」を取り込んだ共和党が、’94年上下両院で多数党を占め、以降共和党の多数党時代が現在に至っている。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
Q.そのなかで、共和党と民主党の特色は?
【(7):アメリカ(人)の意識(2/3)】
【(8):アメリカ(人)の意識(3/3)】
共和党は、もともとは建国前からの北部移民(WASPなど)を中心につくられ、反カトリック=プロテスタントの色合いが強いが、イギリス・ヨーロッパを価値的に否定する色合いがある。
その意識から『孤立主義(→モンロー主義)』であり、反ヨーロッパの裏返しとして『アジア主義』の面をもつ。
そして、孤立主義の裏表にある『膨張主義』→アメリカの大義=世界の大義の意識から『世界主義(世界的に価値観を染め上げる)』に収束しようとする面がある。
また、市場拡大の戦略は、建国から世界一の工業化・経済大国を牽引してきた産業資本から軍需産業を基盤としており、『武力を中心とする略奪による富の収奪』が基本である。
だから、保守財閥の産業資本家→金貸しまで領域を伸ばしたロックフェラーなどの影響が強い。
そして、冷戦構造の米ソ二極化が崩れ米国の力が突出すると、結果的に他国からは「一極主義」に見えるが、アメリカの赤字が急激に上昇しアメリカ一極(の基軸通貨)では行き詰まってくるなかで、本質は儲かれば国に拘らずどこの国でも寄生する金貸しの意向のもと、もともとある世界主義も相まって、今は『(世界覇権主義の中での)多極主義』を推し進める原動力になっている。
一方の民主党は、もともと農業でヨーロッパとの貿易を進めていた南部を基盤としながら、鉄鋼、石油など主要産業はWASPなど旧い移民に占められるなかで、遅れて入ってきた移民の受け皿として機能してきたため、意識的にもカトリック・ユダヤの色合いが強くなっており、東部を中心にした金融資本の『経済系』の面がある。
その意味では欧州のロスチャイルド系金融資本とのつながりが深いだろう。
そのため『親ヨーロッパ』で、ヨーロッパを対象にしているという意味で、『国際(=ヨーロッパ)主義』であり、『反アジア主義』の面をもつ。
だから、国際主義を御旗にしているので欧米以外からは「多極主義」に見えるが、本質はヨーロッパの国々を中心にした世界形成をおこなう『欧米一極主義』である。
そして、市場拡大の手法は、表向きは国際協調主義なので、武力による略奪というよりは、理念的に共認形成をはかろうとする。つまり、『欺瞞観念を駆使して、だまし共認による富の掠め取り』である。
ただし、軍需と金融は深い関係があり、軍需産業と組んで戦争市場も作動させる。
その時は国連など国際合意を捏造して戦争を正当化させるため、一旦、民主党が戦争市場を作動させると規模が大きくなり、理念に拘わざるを得ないため長期化し、欧米以外の国に対しては容赦がない(例えば、第1次+大2次大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争など20世紀の四大戦争)。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
<要約版(2/2)につづく>
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://blog.nihon-syakai.net/blog/2008/10/867.html/trackback
コメント6件
匿名 | 2009.01.10 21:16
コメントを入力してください
>「残存する私権的能力収束と社会的課題収束の綱引き状態!!」という捉え方は、非常に面白かった。また、若者の勉強収束の動因が「役に立ちたい⇒社会に貢献したい!」であれば、それを実現するための、(今までに無い)場と答えの形成が求められるのだと思う。
imayou | 2009.01.15 22:53
さいゆーさん他、コメントありがとうございます。
東大生でも昨年末の金融恐慌が起きるまえまでは国家公務員志向から外資系民間企業への志向が高かったですよね。
国家公務員試験のキャリアシステムを廃止しようという議論
http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20080228M/
もありましたが(その後どうなったかはフォローしていませんが・・・)若者の意識としては、敬遠する意識はあるように思います。
よっし~ | 2009.01.15 22:59
>そもそも反の意識での活動はいまやウケない。
いまだに、反骨精神のみで活動をしている団体を見受けますが、何がしたいのか?の部分が全く伝わってきません!
可能性発で実現の理論を提示できるか?が人をひきつける力になると私も思います☆
hermes handbags belgique | 2014.02.01 9:17
hermes house band 日本を守るのに右も左もない | なんでや劇場レポート3 ‘08.12.29「金融危機と意識潮流の変化」 ~勉強収束の行き着く先は?~
mbt kimondo | 2014.02.22 14:44
mbt-shop 日本を守るのに右も左もない | なんでや劇場レポート3 ‘08.12.29「金融危機と意識潮流の変化」 ~勉強収束の行き着く先は?~
さいゆー | 2009.01.08 19:38
>国家とは学歴序列制度の総本山
日本は、よく「官僚国家」と呼ばれるように省庁の力が強い統治機構を持っています。その中心が官僚。官僚は国家公務員試験でその「資格」を与えられますので、直接的にはこの登用試験に受かる能力が必要です。更には受かった後の省内の学閥を想定すれば、旧帝大卒などの学歴も必要です。
私権的能力主義の根幹はまさに国家の中心にある、というわけです。
これ、なくならんでしょう。社会的課題収束の最終的な壁はこの官僚統治機構かもしれません。