米国の圧力と戦後日本史(総集編5) ~従米政治家と政治支配~
前回は、日本が米国の状況変化による一方的な要求を受け入れることで実現した沖縄返還を始め、米国が日本に求める立ち位置が、どのように変化していったのかを確認した。
今回は、従米路線に転じた中曽根以降~小泉の日本について扱う。
特に当初は対米自主を目論んでいたと思われる中曽根が従米に転じたのはなぜか? アメリカの日本への要求が従来に増して直接的になった背景は? マスコミとより一体となって政治支配を行う手法などに焦点をあてる。
米国の圧力と戦後日本史19
~米国に見透かされていた中曽根の核開発~
★中曽根は、軍事・外交面では秘密裏に核開発を進め、さらに日本独自の資源確保ルートの開拓を行っていた。経済政策では輸出規制を受け入れる等、アメリカに擦り寄る姿勢を見せる一方で、円高交渉には応じない等、全面的には米国に擦り寄らなかった。中曽根は核開発と、独自の資源外交によって対米自主の基盤を確保しようとしていたと考えられる。
★海軍将校として敗戦をむかえた中曽根は、太平洋戦争の敗北の原因を資源の不足と核兵器が持てなかった事だと総括していたのではないだろか。
秘密裏の核開発を実現する上で重要なのは、「米国の監視圧力をどう潜り抜けるか」という課題であったが、後の日航機事件で明らかなように、それは米国に見透かされていた。核兵器さえあればアメリカに対抗できるという安直な発想や、それを実現するための米国の監視圧力を潜り抜けるためにどうする?という実現思考の欠落も、東大卒の試験エリート故の稚拙な短絡思考と言わざるを得ない。
米国の圧力と戦後日本史20~
1985年以後急速に米国に擦り寄った中曽根:冷戦後米国の最大の脅威は日本だった~
★1980年代に入ると、米国の対日貿易赤字が大きく膨らみ、日米貿易摩擦がピークを迎える。同時に米国の対日経済圧力も激しさを増すが、この背景にはソ連の弱体化に伴い、米国にとっての最大の脅威が日本の経済力へと移りつつあった事だと考えられる。もはや、日本に共産主義の防波堤としての役割を期待する必要も無かったのである。
★上記の経済的圧力を実現するために、米国は日本の弱小派閥である政治家(中曽根)の弱みを握り、エージェントに仕立て上げ、支援し、長期政権を実現させて日本を従米路線に導いていった。この構造は後の代表的な従米政権である小泉政権にも同様にあてはまる。
★中曽根は、日本経済にとって不利なプラザ合意を受け入れると同時に、国益を切り売りする農産物輸入自由化と公社の民営化に踏み切った。さらに、前川レポートを契機としたバブル経済→バブル崩壊によって日本経済にとどめを刺されるなど、従米路線に突き進んだ結果、日本はとことん弱体化していった。
米国の圧力と戦後日本史21
~バブル崩壊→日本のアメリカ化改造計画を本格始動させた「年次改革要望書」~
★バブルの発生はプラザ合意が背景となっているが、直接的に株高・土地投機が進んだ契機に元日銀総裁が作成した「前川レポート」がある。そして、バブル崩壊の契機となったのはヨーロッパ発のBIS規制。つまり、日本のバブルを生み出したのも、それに幕を引いたのも、ロスチャイルド系勢力だったということになる。
★この過程で、アメリカ(ロックフェラー系勢力)も少なからず被害を蒙ったと考えられる。つまり、バブル発生→崩壊とは、ヨーロッパ(ロスチャイルド系勢力)からアメリカ(ロックフェラー系勢力)への金融戦争だったと言うこともできる。
★即ち、それまでの「武力戦争」から「金融戦争」への大きな転換点が、’90日本のバブル崩壊であった。以降、世界全体を巻き込んだ、ヨーロッパ(ロスチャイルド系勢力)とアメリカ(ロックフェラー系勢力)の争いが熾烈さを極めていくことになる。
★ヨーロッパ(ロスチャイルド系勢力)が金融戦争を仕掛ける一方で、アメリカ(ロックフェラー系勢力)としては「戦争」とそれが生み出す経済効果は手放せない。結果、武力戦争が作り出されていくことになった。しかし、金が無ければ戦争もできない。その金の源泉となったのが、日本経済であった。
★さらに、アメリカ(ロックフェラー系勢力)としてもヨーロッパ(ロスチャイルド系勢力)が仕掛ける金融戦争は無視できない。そこで、CIAの役割を大きく転換させ、金融戦争への対応戦略を整えていった。
★追い詰められたロックフェラーは、日本に対して年次改革要望書を通じて直接的に要求を伝えるようになり、日本の官僚もこれに従った。ここには戦後民主主義教育を通じて「洗脳が完了した」というアメリカの状況認識があった。そのような状況認識があったからこそ、今までの”密約”主導の日本改造ではなく、”オープンな場”での直接的な要求に切り替えたのだ。その方が、正確に、かつ速くアメリカ化が進むことになる。
★「アメリカによる日本支配」を突破する上で最大の壁が、この「アメリカ型教育による洗脳」だと言える。しかも、学校教育以降は、マスコミが洗脳機関として君臨している。
★そうである限り次代の教育を現実の基盤の中から提起し、実現していくことでしか、「アメリカ支配」の壁を突破していくことはできない。その意味で、教育業界に託された役割は自分達の想像以上に大きく、かつ次代の日本を導く最強の実現基盤だと言える。
米国の圧力と戦後日本史22
~マスコミを通じて分かりやすい対立軸に嵌めて思考停止に追いやる政治支配の手法~
★分かりやすい対立軸であおる
毒舌政治家を起用し、分かりやすい対立軸をセンセーショナルな言葉でマスコミが煽って世間の注目を浴びれば、実際の民意以上に圧勝する。
実際2001年に首相となった小泉は、2005年の郵政選挙で、自民党をぶっ壊す!などとぶち上げ、郵政民営化賛成か反対か?を迫りこれに反対する勢力を抵抗勢力として吊るし上げた。
官邸と結託した電通を通じたマスコミは小泉を持ち上げ、そのセンセーショナルな言葉を繰り返し報道した。そして、現実に小泉自民党は選挙で実際の民意(得票数)以上に圧勝した。
★小泉純一郎=役者としての能力がアメリカの意図と合致
小政党乱立で政治的支配困難⇒マスコミ操作し やすい二大政党制の実現で政治支配というアメリカの目論見の中で、彼のマスコミ受けする毒舌キャラクターは、アメリカの意図と見事に合致している事に気づく。
つまりアメリカは、役者としての小泉に目をつけて、彼は見事その役割を果たした事になる。
政治家はいかに注目をあびるかが重要となり、マスコミを通じた政治支配の元では役者としての能力が最大限評価される時代となった。
★メディアリテラシーの罠
ちょうどこの時期、学者を中心にメディアリテラシーという言葉が使われるようになったのは偶然だろうか?様々な情報メディアを主体的に読み解いて、そのその真偽を見抜き活用する能力が重要という主張だが、これ自体、情報発信側の罪を問題とせず、騙される読み手が悪いという前提に立った傲慢な理屈と言わざるを得ない。
マスコミを通じた政治支配をと重ね合わせて考えると、マスコミが発信するゴマカシや嘘を正当化する理論とも言え、裏で学者とマスコミが結託していた疑いが濃厚である。
★マスコミを通じてわかりやすい対立軸に嵌めて、思考停止に追いやる支配の手法
特に2005年の郵政選挙以降、沖縄普天間基地の辺野古移転の是非、原発に賛成か反対か?TPPに賛成か反対か?尖閣を巡る中国との領土問題への対処、などわかりやすい対立軸がマスコミを賑わしている。
マスコミは思考の焦点を生み出す機能を有しており、AかBかという単純な対立軸に思考の枠をはめる事によって、もっと本質的な(支配者に都合の悪い)問題を思考の枠外に追いやる事が出来る。
よくよく考えればこれは、賛成か反対かだけをを多数決で迫る民主主義の構造そのものだとも言える。
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