2013年07月30日

米国の圧力と戦後日本史(総集編4) 米国の状況変化に呼応する対日戦略、それに振り回され続ける日本

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前回の記事では、米国の巧みな戦後民主主義教育が、日本人の無意識レベルに従米意識を埋め込み続けていることを明らかにしました。こうして、日本人は徹底した従米路線を歩むことになり、米国の都合の良いように振り回され続けていきます。
 
今回は、日本が米国の状況変化による一方的な要求を受け入れることで実現した沖縄返還を始め、米国が日本に求める立ち位置が、どのように変化していったのかを確認していきます。
 

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15 ニクソンショックの緩衝材となることで実現した沖縄返還
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沖縄返還にあたり、米国は日本に5つの密約を交わすよう迫った。
① 緊急時には、再び核を持ち込めるとする密約。
② 繊維の輸入規制を行うという密約。
③ 米軍の移転費並びに駐留費を日本が支払う(後の思いやり予算)。
④ 円と通貨交換したドルを無利子でFRBに預金する。
⑤ ニクソンショックによるドル暴落の緩衝材として、外国為替市場を開放し続ける。
 
 
特筆すべきは、⑤の密約であり、ニクソンショックの際、日本だけが、外国為替市場を開放し続けた。この結果、日本は約7億ドル=2200億円以上の損害を出したと言われている。ただ、この出来事は見方を変えれば、ニクソンショックは、日本がいなければ実現し得なかったということになり、日本が反米にさえ転じれば、米国の世界戦略も行き詰る、ということを意味している。
 
ここから読み解けることは、米国は金や軍事の「目に見える力」から、信用創造やマスコミの「目に見えない力」の行使に大きく転換した。それに伴い、日本の役割は「防波堤」から「資金源」へと転換した、ということである。
 
16 「角栄=反米」という幻想からの脱却!
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ニクソンショックの密約を反故にした佐藤は辞任し、田中角栄が首相になった。田中は「日本列島改造計画」を打ち出し、土地や公共事業を利用した自前の政治基盤を作っていった。
 
田中は、私権を精力的に拡大していく中で、「石油利権」「中国との国交回復」という、2つの大きな私権拡大の可能性に踏み込む。しかし、これらの方針は米国の逆鱗に触れてしまった。怒り狂った米国は、岸首相の時と同様にマスコミを使って攻撃し、田中首相を辞任させた。
 
さらに、米国は田中を徹底的に潰すべく「ロッキード事件」を引き起こす。まず、ロッキード社が巨額の賄賂をばら撒いたという書類が、何故か米国議会に誤送された。次に、従米派の三木首相がフォードにその書類を提出するよう要求し、結果、司法取引にて田中は有罪→政治生命を絶たれた
 
田中は、私権を基盤にした共認形成力によって圧倒的な国民支持を獲得し、独自外交のシンボルとなっていた。このままいくと、田中は米国にとっては明らかに脅威となる。だから、田中を政治的に潰すよう決定したのだ。
  
こうして見ると、田中の辞任劇は「対米自主」を目指していた訳ではなく、「徹底した私権追求」の果てに、米国を無視し続けた結果と言える。よって、田中角栄をいくら研究しても「対米自主」の実現基盤は発掘出来ないばかりか、CIAの暗躍によって葬りされれたという絶望的な事実しか出てこない。
 
これは、見方を変えれば、「脱米国を目指した田中角栄」という幻想が、反米意識の気運を減速させる装置として機能していることを意味している。よって、過去の政治家に幻想を見るのではなく、現実の中から新しい実現基盤を発掘する必要がある。
  
17 米国の世界戦略の動向に振り回される日本
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三木の退陣後、福田赳夫が首相になる。この時代は、ベトナム戦争の終結によって、米国は「アジア離れ」を開始し、日本に対する軍事的な役割は薄れていた。福田は日中平和友好条約の締結を最優先し、これまでの日米関係を最優先した日本外交から、さまざまな地域の問題に主体的に取り組んでいく「全方位平和外交」を表明した。
 
その後、大平政権が発足する。この時代になると、イラン革命や第二次石油危機、ソ連のアフガニスタン侵攻等が起こっており、「新冷戦時代」と呼ばれていた。そのような情勢への対応として、米国は、日本を「同盟国」と呼ぶことで、日本に防衛予算増額を閣議決定させた。大平は福田の「全方位平和外交」を転換し、徹底的な従米路線を採った。
   
その後、鈴木政権が発足する。鈴木の外交哲学は、他国に対して軍事的な協力は行わない、といったものだった。一方、米国としては、日本の海軍力をソ連との戦いに利用したいと考えており、鈴木の外交哲学とは相反するものだった。米国は、再びマスコミを利用して鈴木を潰しにかかる。鈴木の発言を捻じ曲げて「総理の器ではない」と批判させ、排除しようとした。
 
このように、日本の外交は米国の世界戦略によって振り回され続けた。
 
18 豊かさの実現が引き起こしたパラダイム転換。アメリカの戦略転換と翻弄される日本
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世界の先進国は、貧困の圧力を克服し、ほぼ豊かさを手に入れた。それに伴い、物的需要は衰弱し、市場も縮小していかざるを得ない状況になった。誰もが私権に収束しきれなくなった結果、国民的な私権拡大の手段と考えられてきた「戦争」にも、大きなブレーキがかかる。また、私権獲得を正当化する観念群(資本主義、共産主義等のイデオロギー)も輝きを失っていく。
 
こうして、米国ですら、世界的な共認圧力に晒され、世界世論が許さなければ戦争出来なくなっていった。しかし、米国にとって、「戦争」とは市場拡大の切り札である。米国・マスコミは捏造を繰り返し、もっともらしい大義名分をでっち上げることで、目先的な戦争を世界中にふっかけていった。
 
一方、米国は、ニクソンショックを起こすことで、金ドル兌換を停止し、ドルの不換紙幣化に踏み切った。これは、米国の力の基盤が「米ソ対立」から「ドルへの信任」へと変化したことを意味する。ただし、これは「世界中の人間がドルを信認している」ということを前提にしないと成立しない。
 
「世界中の人間がドルを信認している」という状態を作り出す為、米国は「石油を買うにはドルが必要」という状態を作り出した。これで、中東の石油利権を押さえ、ドルと石油を繋いでおくことは、米国にとって、死活問題となった。
 
このように、 「私権原理から共認原理への転換」「ドルの不換紙幣化」という2つのパラダイム転換によって、米国の世界戦略は変化し、それに伴い、米国が日本に押し付ける役割も変化していった。
 
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米国は、日本に「米国の為に『力』を行使すること」を求めてきた。しかし、この構造は逆から見ると、「米国は日本がいなければ、支配構造を維持出来ない」ということになる。ならば、米国支配逆転の実現基盤は日本にある、ということで、米国発の騙しを見抜けるようになることが、日本の未来を変えていく鍵となる。
 
★★
 
このように、日本は米国の圧倒的な力に振り回され続けます。しかし一方で、米国内では、ドルが基軸通貨になったことで、その力は衰退の一途を辿り始めます。米国の力が少しずつ限界に達していく中、次第に、日本がいなければ米国はその力を行使出来ない、という状況が出来上がってきました。従米日本から抜け出す鍵はここにあります。日本人が米国発の騙しを見抜く力を育むことが必要です。
 
次回は、米国に秘密裏に核を開発していたと言われている中曽根康宏からの動きを見ていきます。
 

List    投稿者 mtr919 | 2013-07-30 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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