米国の圧力と戦後日本史26 ~TPP→グローバリズム・バブルの影で、共同体企業のネットワークが拡大していく~
1970年、「豊かさの実現」以降、根底的な大衆の私権活力は衰弱し続けてきました。さらに、2002年の収束不全、2008年のリーマンショック、2011年の311原発事故と、段階的に私権活力は衰弱し続けています。
これと連動するように、市場は縮小せざるを得ない状態に追い込まれていきますが、市場拡大を絶対命題とする政府・官僚は、政府に大量の国債を発行させ、市場に金をつぎ込んできました。それが、今や1000兆円にまで膨らんだ国債累積残高です。
また、市場の閉塞に対する突破口として、『グローバリズム』が提唱され、さらにそれが「逆らえない必然的な流れ」であるかのように喧伝され始めたのが、1990年代以降でした。各国政府による規制が否定され、各国の”市場”が繋がり一体化していきます。閉塞しかけていた市場は、新たな別の”市場”を発見する事で、何とか生きながらえてきました。
その意味で、「あらゆる貿易障壁を撤廃して、市場を一体化させ、さらに政府機能をその下に置こうとするTPP」は、1990年以降のグローバリズムの延長線上にある、必然的な帰結だということもできます。
つまり、
【大 衆】私権活力の衰弱→市場の衰退
【金貸し】グローバリズムの推進→市場の(強引な)拡大
この二つの潮流が進んでいく事になります。この矛盾する潮流は、どうなっていくのでしょうか?
■大衆の『自衛』意識
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今後の潮流を読み解く上で、「グローバリズム」や「アベノミクス」などの言葉に対する期待感が年々薄くなっていることは注目に値します。実際、中小企業の経営者からは、「マスコミは”アベノミクス”で騒いでいるが、自分たちには何の関係も無い」といった言葉や、「アベノミクス後の不況は、かなり深刻になるだろう」という予測が飛び交っています。
つまり、政府・官僚・マスコミ、さらにはその背後の国際金融資本家(金貸し)が必死に市場拡大を推進しようとすればするほど、大衆側の警戒心(不安心理)がどんどん強まっていきます。市場拡大のための政策や方針は、『大衆の自衛心理を強めていきます』 。
これは、一庶民レベルで言えば、
「政府官僚の政策を信用する訳にいかない(政府官僚が描く夢のような未来が来るわけではない)」から「自分達の身は自分で守る」という意識が上昇することを意味します。例えば、単なる健康ブームではなく、産地に拘った野菜やお米=安心・安全な農産物を購入するなどに代表される『自衛』の流れは着実に進行しています。
新しい活力源=周りの期待に応える充足
健康志向の広がりは「個人主義観念」の行き詰まりを示している。
■グローバリズム・バブルから抜け出せない大企業
大衆の私権活力の衰弱(物的欠乏の衰弱)が進行する中で、グローバリズムを初めとする市場拡大政策(→市場へのマネー供給)が進めば、実体経済に回らないマネーが増え、市場は必然的にバブル化します。
水脹れして余ったマネーは、最大の利益機会を求めて世界中を巡ることになります。マネーにとっての最大の利益機会とは、「他のマネーが殺到しているもの」ですから、限定された利益機会に、世界中のマネーが殺到することになります。
そして、その利益機会の中で、最大の利益を上げるためには、「他のマネーが離脱するギリギリ直前に、離脱する」=「他の投資家が売り抜ける直前に、売り抜ける」必要があります。つまり、マネーが”一斉に”逃避し、『バブル崩壊』が起こります。つまり、バブルが緩やかに崩壊するなどと言う事は、原理的に有り得ません。
”グローバル世界”で利益競争をしているグローバル企業は、この状況から抜け出すことはできません。この土俵から降りる事は、すなわち敗北を意味するからです。つまり、グローバル企業は、グローバル市場が如何に危険かが仮に分かっていても、敗北が確定するまで抜け出せない構造に陥っているのです。
バブルはなぜ崩壊するのか3 バブル=ねずみ講 だから必ず崩壊する
■『自衛』を強める中小企業
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一方で、グローバリズム・バブルを冷静な目で見ている中小企業(の経営者)は、大企業経由の仕事を受注する一方で、それがいつか打ち止めになることを見越して、「その次」を考え始めています。具体的には、バブルが崩壊した後も生き残っていくための基盤作りに着手し始めることになります。
すなわち、
・いかなる状況に置かれても、生き残っていける組織作りを志向し、
・さらに、同じような集団との連携を強める
ことになります。
「いかなる状況に置かれても、生き残っていける企業」には、様々な形が考えられます。仕事のポジションを見直す企業もあるでしょうし、異業種に参入する企業もあるでしょう。
しかし、どのような形を取るにせよ重要になるのは、
・いかなる状況でも、その状況を読み解き、突破口を見つける武器=概念装置
と
・どんな状況でも、突破口を開こうとする社員の意識や繋がり
です。
これは、多数の中小企業が『共同体的な企業』を志向する事を意味します。現在は、先見の明がある企業が先行している状況ですが、グローバリズム・バブルの崩壊→大企業の没落が顕在化するにつれ、級数的に増加するはずです。
また、自企業が共同体化に向けて組織改革に着手したとしても、それだけでは生き残っていく基盤になりえません。将来的な事業展望などを考えても、発展性はありません。ですから、同じような志向性を持つ企業同士の連帯が強まっていくはずです。これは、今までのような「経済取引を前提とした企業関係」とは全く違う、「助け合いを前提とした企業関係」となります。そのような『共同体企業のネットワーク』が、裾野を広げていくでしょう。既にその萌芽は、至る所から出始めています。
『共同体経営とは?』総集編1 -共認原理の組織統合から、ネットワークを通じた社会統合へ-
『共同体経営とは?』総集編2 -共認原理の組織統合から、ネットワークを通じた社会統合へ-
『共同体経営とは?』総集編3 -共認原理の組織統合から、ネットワークを通じた社会統合へ-
特別企画 新概念を応用したプレゼン講習会
第2期 新概念勉強会 合同成果発表会(前編)
第2期 新概念勉強会 合同成果発表会(後編)
■まとめ
未来論になりますが、上記の流れをまとめると、以下のようになります。
<現在~1,2年後>
・全大衆的に私権追求の活力が衰弱し、自衛志向が強まっていく。
・大企業は、特権階級が作り出すバブルに乗っかり、利益を拡大させていく。
・中小企業は、大企業からの仕事を請けつつも、それに完全に乗っからず、独自の路線を模索する。
<2~10年後?>
・アベノミクスが崩壊し、グローバリズム・バブルの限界が顕わになる。
・大衆の自衛志向⇒自給志向がますます強まっていく。
・大企業は、バブルが限界点を迎えつつある事が分かっていても、そこから離脱する事ができない。
・中小企業は、「いかなる状況でも生き残っていく組織」=「企業の共同体化」に舵を切っていく。同時に、同じ志向性を持った共同体企業との関係を強めていく。
<10年後?~>
・グローバリズム・バブルが崩壊し、大企業が軒並み倒産していく。
・共同体化を進め、ネットワークを作り出していった企業は、その状況の中でも業態を変化させ続けながら生き残っていく。
<15年後?~>
・既存の政府・官僚・マスコミ、及び大企業は、完全に没落していく。一定の秩序は保たれるが、政府機能はほとんど無意味に。
・その状況の中、共同体企業ネットワークは、政府機能を自ら担っていく(=自給する)ことになる。
焦点となるのは、 (崩壊に向かって突き進んでいる)現在のバブル期に、「将来に向けて、何をどう準備するのか」 ということです。
アベノミクス=グローバリズム・バブルに乗っかりながら、崩壊を乗り越える術を考えるのか。
崩壊に向かって進んでいく中にあっても、新しい可能性を発掘し、自らがそれをになっていくのか。
どの企業も、その判断を求められる時代に、突入しているのです。
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