2010年11月11日

歴史学の騙し~インド=ヨーロッパ語族というのは作り話ではないか?

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『るいネット』に古代インドのアーリア人についての投稿が載っている。
「印欧語族=アーリア人の起源と移動」
「インドーイラン人に別れたアーリア人の足跡」
「インドーアーリア人の侵入~ドラヴィダ人との激しい戦争はなかったのではないか」
「インドーアーリア人の移住、さらに混血化」
「インドの婚姻制~アーリア人は母系制だった?」
ところが、このインド=ヨーロッパ語族(アーリア人)とは、ヨーロッパによる世界支配の正当化のために捏造された作り話である疑いが濃厚である。
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以下、岸田秀氏の著作『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』(新書館)から引用する。

●アーリア人種
そもそも、アーリア人とは何なのか。今一度、アーリア神話が発生し、発展し、猛威を振るった過程をさらに詳しく検討してみよう。
まず、通説によると、18世紀末、サンスクリット語と、ギリシア語、ラテン語、ペルシア語、ゲルマン語などとのあいだに類似点が見つかり、これらの言語は、かつて存在したはずのインド=ヨーロッパ語とかいうものを共通の祖語とし、そこから派生した同系の言語であることが「発見」されたのが、ことの始まりであった。仮定上のこの共通の祖語を使用していたとされる人々はインド=ヨーロッパ語族、または(ドイツでは)インド=ゲルマン語族またはインド=アーリア語族と名づけられた。
19世紀の半ば過ぎ、どういう根拠からかは知らないが、人種と語族とが同一視され、このインド=ヨーロッパ語族が特定の人種ということになった。つまり、言語論が人種論に転換した。そこで、この人種が「アーリア人種」と呼ばれるようになったということのようである。このアーリア人種は人類を支配すべき高貴な人種であるという誇大妄想は、ドイツ人だけでなく、ヨーロッパ人一般に多かれ少なかれ共有されていた(いる?)ようである。
(中略)
ヨーロッパに成立したこのアーリア神話は、近代日本に伝えられ、いまだに事実と信じられている。例えば、2003年発行の高校の教科書、『詳説・世界史』(山川出版社)では、「アーリア人の進入とガンジス川流域への移動」という項目に、「前1500年ころから、カイバル峠をこえてインド=ヨーロッパ語系の牧畜民アーリアが西北インドに進入しはじめた。・・・前1000年をすぎると、アーリア人は西北インドからガンジス川流域への移動を開始した。・・・アーリア人は、移動した土地で農耕に従事する先住民とまじわり、定住農耕社会を形成した」とあり、同じく2003年発行の高校の教科書、『詳説・世界史』改訂版(山川出版社)では「アーリア人の侵入」という項目に、「中央アジアで半農半牧の生活を営んでいたアーリア人は、イラン高原をへてインドに侵入し、前1500年ごろまでにパンジャーブ地方に住みついた」と記述されている。
日本の世界史教科書は、アーリア人についてだけでなく、ルネサンスや大航海時代などに関しても、ヨーロッパ製の世界史を無批判に丸写ししているところが多いが、いささか怠慢過ぎるのではなかろうか。(中略)要するに、戦前の国史が日本神国説の正当化のためのものであったように、ヨーロッパ製の世界史が近代ヨーロッパの侵略と植民地主義の正当化のためのものであることは明白であるにもかかわらず、日本の教科書の編纂者がそのことに気づかず、そのまま受け売りして知らず知らずのうちにその片棒を担がされているのは、あまりに情けないではないか。
しかし、このアーリア神話は、ちょっと考えればすぐわかると思うが、あまりにうまくでき過ぎている話ではなかろうか。18世紀、19世紀はヨーロッパ諸国による他国、他民族の植民地化と支配と搾取が最高潮に達した時期であり、ちょうどその時期に、インド=ヨーロッパ語が「発見」され、アーリア人種が出現し、さらに人種差別と植民地化と支配と搾取を正当化するような過去の「歴史」がつくられているのである。(中略)アーリア神話は、遠くは、黒人にアフリカ大陸から追っ払われ、近くはローマ帝国に侵略され、植民地化されたヨーロッパ民族の屈辱を埋め合わせるためのものであったと考えられる。(中略)アーリア人というのは架空の存在ではないかと、わたしもかねてから主張しているが、何はともあれ、日常生活における投資や商取引の話と同じく、歴史におけるいろいろな学説に関しても、詐欺に引っ掛からないためには、あまりにもうまくでき過ぎている話は眉に唾をつけて疑ってかかることが肝要である。

●アーリア人は存在したか
アーリア人発祥の地がバラバラで二転三転するのも不信を募らせる。アーリア人発祥の地に関しては、もともとアーリア人はインドにいたのであって、どこか外からやってきたのではない(インド人の説)とか、アーリア人はアフガニスタン南部からきたとか、ペルシア東部からだとか、地中海沿岸からだとか、中央アジア、西アジア、南ロシアからだとか、西北ヨーロッパからだ(ドイツ人の説)とか、諸説ふんぷんであって、最も信頼できる説は、アーリア人なるものは存在したことがないという説である。いずれにせよ、ネアンデルタール人が存在したことを示す考古学的証拠となる遺蹟や遺物はたくさんあるが、アーリア人が存在したことを示す考古学的証拠はどこにもない。
津田元一郎『アーリアン』とは何かによると、インド人は百年も前から「アーリア学説虚構説」を唱えているそうで、この学説の捏造こそ、西欧の植民地支配と最も本質的にかかわっており、この学説は「西欧優越の意識化を狙った植民地洗脳学説」だそうである。少々長くなるが、津田元一郎の文を引用してみよう。
・・・アーリアンが西北インドからインドに進入し、原住民を駆逐し、古代の輝かしいインド文化を創造したとするアーリアン学説は、インドに対して、次のような諸点で格別な文化工作的意味をもっていた。
1.インド人の祖先アーリア人もイギリス人と同様に、インドに植民地侵入をしたのであり、イギリスも同じことをしただけである。
2.ヨーロッパ人と上層インド人はもともと同一の種族であるとすることによって、上級階層をイギリス側に引き寄せることができる。
3.インドは北と南で人種が異なり、南の人びとは北の人びとに駆逐されたと主張することにより、北と南との敵対意識を醸成し、分割統治に有利となる。
4.インド上層階級の容貌はヨーロッパ人に近く、下層原住民系の人々と異質であり、したがって、上層階級の人びとはヨーロッパ側の人間であり、下層大衆との間には断層があるのだという意識を醸成し、分割統治に有利となる。
5.ヒンズー教の聖典ヴェーダはインド土着のものではないという考えを広めることによって、ヒンズー教の聖典とインド大衆のナショナルな意識の靱帯を断ち切ることができる。
アーリアン学説は、このようにして、アーリアン西北インド侵入説によって、北インドと南インド、上層階級と下層階級の間に分裂的、敵対的感情を醸成し、植民地分割統治にきわめて効果的な文化工作的な意味をもった。
イギリスの植民地支配は単に軍事力によるだけではなく、思想戦略というか、情報操作を用いることがいかに巧妙であったかがよくわかるであろう。

アーリア人がBC1500年頃、インドに侵入し、輝かしい古代インド文明を創造したという物語がつくられたのは、アーリア人の末裔であるゲルマン民族、ドイツ人がローマ人に蛮族と蔑まれた未開の野蛮人ではなく、パレスティナを発祥の地とするヘブライ文明に対抗できる、それに穢されたことのない独自の優れた文明を創造した優秀な民族であったとする必要があったからであろう(近代ヨーロッパでは、古代ギリシア文明がヨーロッパ文明の源流とされていて、古代ギリシア人の著作をヨーロッパの「古典」と称したりしているが、これも、他民族の古代文明を横領し、それを自民族の先祖の文明だと詐称しようとする同じ動機に発すると思われる。このことについてはすでに述べたが、ただ、ちょっと付け加えると、アーリア神話では、古代ギリシア人も北方からギリシアに侵入してきたアーリア人ということになっている)。
アーリア人が金髪碧眼人種とされたのは、黒髪が多い地中海人種、ローマ人と区別するためであろう。しかし、それでは、どうしてインド人は黒い髪、黒い肌なのかということになるので、先住民のドラヴィダ族という混血したということにしたのであろう。アーリア人とドラヴィダ族が混血して、アーリア人の血の割合が多いほど上層階級で、少ないか、または欠けているのが不可触民だというのは、それこそアーリア人に好都合な話ではなかろうか。そして、アーリア人が金髪碧眼人種だとすると、その原住地は西北ヨーロッパに違いないということになったのであろう。

確かに、『詳説世界史研究』(山川出版社 1995年版)には、「前2000年の少し前頃、インド=ヨーロッパ語族がバルカン半島や小アジアに侵入してきた。彼らがギリシア人の祖先であり、その一部のアカイア人がミケーネなどに王国をつくった」と記載されている。
どうやら、世界史の世界では、「古代ギリシアに侵入した部族と古代インドに侵入した部族は、インド=ヨーロッパ語族という同じ部族であり、それをアーリア人と呼ぶ」というのが常識化しているらしい。それに対して、「インド=ヨーロッパ語族は神話」という説を岸田秀氏は提起しているわけだが、それは十分ありうる話だと思う。
というのは、「6/27なんでや劇場日本人はいつ物を考え出すのか?」で提起されたように、近代社会は金貸しによる騙しで成り立っているということは、歴史学にも騙しがまかり通っていると考えた方が自然だからである。岸田秀氏の著作のタイトルにもあるように、ヨーロッパ製の世界史は嘘だらけなのではないだろうか。実際、インド=ヨーロッパ語族発祥の地は未だに不明で諸説紛々であるらしいが、そもそも、そういう部族がいないのであれば原住地を特定できないのも当然である。
もちろん、古代インドに何らかの部族が侵入したことは否定できないし、古代ギリシアにヨーロッパ人の祖先部族が侵入したのは事実であろう。しかし、両者がインド=ヨーロッパ語族(アーリア人)という同じ部族であったというのは作り話ではないか。
実際、『るいネット』「西洋の自我・私権性の源流~海賊国家ギリシャ」では、古代ギリシア人は海賊民族であるとされているが、これは古代ギリシア人が交易を生業として、大量の奴隷を使用したこととも符合するが、古代インドに侵入した部族の出自が海洋民族(海賊民族)であったとは考えにくい。あるいは、『るいネット』に「インドの婚姻制~アーリア人は母系制だった?」とあるが、これもインドに侵入した部族が古代ギリシアとは全く別部族であると考えた方がはるかに論理が整合するのではないか。
このように、古代ギリシア人(西洋人の祖先)と、古代インドに侵入した部族は全く違う部族だと考えた方が、はるかに歴史事実と論理が整合するではないだろうか。逆に言うと、インド=ヨーロッパ語族という作り話に嵌っている限り、至る所で論理矛盾が発生し、決して歴史の真相は見えてこないと思う。歴史を追求する上でも、ヨーロッパ発の歴史学の騙しを見抜くことがことが肝要だろう。
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List    投稿者 staff | 2010-11-11 | Posted in 05.染脳国家日本13 Comments » 

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コメント13件

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「第一桜丸」 尖閣諸島へ出港! 7.3 漁業 経済活動による実効支配強化へ・集団漁業活動報告 [桜H23/7/6] You Tube

You Tube の解説より
【草莽崛起】7.3 尖閣防衛、集団漁業活動報告[桜H23/7/6]
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 通りがけ | 2011.07.09 8:05

共同体再生には地位協定を破棄することが大前提だ。

 国民の生活が第一は人づくりにあり | 2011.07.10 12:13

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 日本は技術立国であり・総ての分野で日本は世界のリーダーとの主張が本当なら、(本年6月20日に発表された世界最速のスパコンを根拠の一つにしている)、ストレ…

 志舫 | 2011.07.24 23:18

たいへん参考になりました。
ありがとうございます。
外国金融資本が参入してないエネルギーは、地熱発電でしょうか?勉強不足でよくわからないのですが…。
将来、石油を作り出す藻の大量生産で日本が産油国になったとしても、そのエネルギーを狙われては元も子もありません。
とはいえ、
言いなりにならない、奴隷にならない政治は、しがらみのない人が適任。そして
民意を反映する場をつくること。それが共同体再生のカギではないかとも思います。

 みゆ | 2011.07.26 3:31

こんばんは
わたしはある保守系のコミュニティに参加しています。
ユダヤ金融のことを 書くとただ言われることは陰謀論者と言われて耳を傾けてくれません。
一般の人は、アメリカがやってきたことを信じてないのです。
早くきつかせたい!
しかし アメリカの悪いところを指摘すると 逆に反論を食らいます。
なぜならば彼らは、中国や韓国北朝鮮の脅威しか頭にないからです。なんとしてでもアメリカの日本に対しての植民地化を避けたい!!

 tomo | 2011.08.29 14:21

自由報道協会8月19日放送の上杉氏のコメントによりますと、放射性物質は岩盤の固さにもよるが、年間17m沈むそうです。このことから、日本での温泉、地下から汲み上げているミネラルウォーターはNGでしょうね。そして、地熱発電はそうした放射性物質がどう影響するのか????、また、地震大国日本において、あちこち堀り始めたら地盤沈下を促進させ被害を拡大させないのでしょうか?
広瀬隆さんの講演内容の中に、ガスコンバインドサイクルという発電方法があり、すでに全国の発電所で稼働しているそうです。つまり、我々はまず埋蔵電力・発電についての正確な情報と精査をし、中小の企業を中心に基盤を構築していくべきだと思います。

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 しろうと考えの名無し | 2014.05.21 2:01

岸田秀氏の説はたしかに一理あると思うが、しかし、それならなぜ、サンスクリット語と英語に共通の単語があるのか?たとえばネームと南無とか、単純に西洋人とインド人とナゼ顔が似ているのか?そえいう疑問を解決できない。
岸田氏は西洋社会の植民地主義批判がまず先にあり、そのためにアーリア人説批判をくりひろげていて、なぜ両者が似ている部分もあるのかという素朴な気持ちを考慮していない。
インド・ヨーロッパ民族がナン、パン、ピザ、スパゲティ、マカロニみたいなもので、ぜんぜんちがうように見えても、じつはもとは小麦の原種みたいな、大元の民族がいたのかもしれない。

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