2012年06月20日

魔術から近代科学15~直感性能(潜在思念)を劣化させた近代科学は架空観念(数学)で自然を対象化するしかなかった~

 前回(魔術から近代科学14~西欧にとって魔術は科学発展・侵略拡大に必要な観念だった)は、山本義隆氏の『磁力と重力の発見』から「第7章 ロジャー・ベーコンと磁力の伝播」前半の要約を引用しながら、キリスト教世界を取り巻く環境に適応すべく、ロジャー・ベーコンは「武力支配の前に観念支配が必要」、「科学の目標は自然支配にある」という思想の発端を作り、西欧の科学の飛躍的発展及び他地域の侵略に貢献したことを見てきました。
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            画像はロジャー・ベーコン
 
 引き続き山本義隆氏の『十六世紀文化革命』から「第7章 ロジャー・ベーコンと磁力の伝播」後半部分の要約を引用しながら、西洋の自然認識がどこで道を間違えたのか、ベーコンの思想の源流を見ながら、近代科学の問題点について見て行きたいと思います。

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3.ロバート・グロステスト
 ベーコンはきわめて重要な「磁気作用の空間的伝播」という概念を提唱している。そしてその表象を彼は、ロバート・グロステスト(1168-1253)の光学理論を改良し発展させることによって獲得し形成した。実際、経験的で数学的な自然科学という観念をベーコンに先駆けて提唱し、そのことによってベーコンに大きな影響を与えたのはグロステストであった。
 グロステストは1214年にオックスフォードの初代学長に、修道士学校で神学を講じ、イングランド最大管区の大司教を務めた傑出した知識人であり、アリストテレス書籍のラテン語訳をはじめ、『自然学』や『分析論後書』の注釈をも著している。重要なことは『分析論後書』で語られている二通りの認識の区別を認め、自然の探求は経験にもとづく事実の知識にはじまり根拠の探究へと向かわねばならないと考え、感覚に依拠した経験的認識の価値を正当に評価したことにある。しかし、グロステストの科学思想が特筆に値するのは、たんに経験的認識の意義を強調しただけではなく、それと同時に自然認識において数字、なかんづく幾何学のはたす役割を高く評価したことにある。そして彼の幾何学の重視は、とりわけ彼の光の理論-光の形而上学-に由来している。
 グロステストのユニークな光の理論は、オックスフォード時代に書かれたと考えられる『物体の運動と光について』および『光について』で展開されている。
 グロステストのいう〈光〉とは、物理的で可感的な光ではなく、すべての物体に先だって存在するある種の形而上学的存在であるとし、万物を無時限的な第一質料から有体のものとして実現化させる原資であり、それゆえに〈光〉は「物性体そのもの」すなわち「物体的第一形相」だとした。さらに、「物体の運動は〈光〉の増殖伝播の力である」とあるように、〈光〉は物体における運動の原理でもあるとし、自然学の中心的要素の位置を占めるとした。
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            画像はグロステスト
 また、グロステストは―〈光〉によるビッグ・バンとでも言うべき―特異な宇宙開闢説を提唱している。〈光〉の最大限の広がりとして天球が作られ、物体的宇宙の外延を形成し、さらに天球の内側のあらゆる方向へ向かう拡張と濃縮の結果として、惑星や太陽や月の球面、さらには地球自体が順次形成される。アリストテレスの拡張的階層的得調の創世記である。もちろんこの議論は「神は”光アレ”と言った」という『創世記』冒頭に伝えられている光の特殊な役割を踏まえたものであろう。しかし、グロステストにおいては、天地創造が神の意志や計画によるものではなく、自然法則にのっとった自然世界の自己展開として語られている。前章で言ったように、アリストテレス主義がこの時代にヨーロッパにもたらした思想的転換の焦点はまさにここにあった。
オックスフォード時代末期に書いたと考えられる『線・角・図形について』では、〈光〉の形而上学に基づいて、自然におけるすべての作用の伝播をめぐる考察を展開している。作用は球面状に伝播し、すなわち「力能の増殖」ないし「形象の増殖」として行われる。この表象は直後にベーコンが磁気作用の空間的伝播のモデルとして受け継いだことによって、私たちの議論にとってきわめて重要な位置を占めている。
 グロステストは全ての物理的作用の伝播はこのように〈光〉の三次元等方的放射をモデルにして考えられている。その原理として『線・角・図形について』において「自然は可能なもっとも単純な仕方で作用する」という命題を置き、幾何光学の基本法則を導いている。
この一節は「自然という書物は数学の言葉で書かれており、その文字は三角形、円、その他幾何学的図形であり、それらの手段がなければ、人間の力ではその言葉を理解できないのです。」という400年後のガリレイの言葉を確実に先取りしている。
 自然界のすべての作用を「作用者」とその「受け手」の対によってではなく、両者の媒介項として「力能」すなわち「形象」を加えた三項でとらえたところに、グロステストの議論の歴史的意義がある。そしてこの形而上学的な理論を換骨奪胎してより自然学的なものに改作したのが、ベーコンであった。
実際このモデルを下敷きにしてベーコンは作用の近接伝播の理論を作り上げたのである。

【1】西洋の自然認識の底流にある、架空観念絶対、感覚捨象or軽視の陥穽
グロステストの形而上の〈光〉によるビッグ・バン説は、キリスト教『創世記』の架空観念「光アレ」が原点であり、それを物理学的に改作したのがベーコンである。
このように、近代科学は架空観念が出発点となっている。
プラトン:「イデア」の世界においてのみ真の意味での厳密な認識が可能で、人間の感覚で捉えられる世界に対しては真に厳密で客観的な認識はありえず、不確かな感覚は真の認識を誤らせる恐れさえある。叡智的世界にたいする数学的で論証的な知と感覚的世界に対する経験的で帰納的な知は。その真理性という点で優劣が有るだけではなく、背反的な関係であると説いた。
ベーコン:グロステストの形而上学的な理論を物理学的なものに改作し、自然学に対しても数学的認識が可能で、かつ、必要なことを論証する。天界の事物はただ量を通してのみ認識されると語った。
ガリレイ:自然という書物は数学の言葉で書かれており、それらの手段がなければ、人間の力ではその言葉を理解できないと語った。
近代科学に大きな影響を与えたとされるこれらの科学者に共通なのは、まず架空観念(その中核が数学)ありきで、それに都合良く観察し、実験するという近代科学の源流がある。
(近代科学は決して、自然を虚心坦懐とするがままに観察しているのではなく、限定した条件のもと数学で置き換えた架空観念といえる。)
 
 要するに観念は正確で、感覚は信用できないということ(だから近代科学では数量化や測定が重視される)。これが西欧人の自然認識の底流にあるが、観念は正確で感覚は信用できないというのは本当なのであろうか。

「数十倍に増えたのは専ら観念情報であり、自然を相手に五感を動員していた頃より、総情報量は少ない。五感情報の処理機能は数億年かけて出来上がっているのに対して、観念情報の処理機能がまだ出来ていないのが原因と考えられるが、観念情報の処理は、観念機能自身で当たるしかない。」
【情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口】より引用

「人類が文字を使った観念思考を始めたのは、私権時代以降である。従って、人類がいまだ観念情報を統合する機能を持ち合わせていないのは当然で、これまで人類は、ほとんど観念思考をしたことがない。」
【大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機】より引用

「我々人類は、生まれながらにして、数十億年に渡る実現体験を積み上げてきた種だと言えるでしょう。数十億年に渡って可能性に挑戦して、しかも成功し続けてきた、このことは驚くべきことです。我々の下部意識はそれぐらい優れものです。その下部意識の指し示す方向に従って、先端機能である共認内容・観念内容を組み替えること、それができれば人類の進化・適応・実現は成るはずです。何と言っても下部意識は数十億年に渡って成功し続けてきたのですから。」
「下部機能は成功体験の塊」より引用

 このように、とりわけ文字を使った観念思考はわずか数千年の歴史しかなく、観念情報の処理機能はまだ出来ていない。それに対して、潜在思念は数十億年の実現体験の塗り重ね(塊)である。このように潜在思念(感覚)にくらべて、観念機能の対象化能力ははるかに未熟で、いまだ観念情報の統合機能を持ちえていない。
にもかかわらず、西洋では観念が絶対視されてきたが、一方で西洋以外の古代人は直観性能(潜在思念)を重要していた。
【2】西洋人は直観性能(潜在思念)を著しく劣化させている。
 
 西洋人が観念機能を重視した文化を築き上げたのに対して、直観性能を重視した文化である「日本の上古代人の潜象科学=カタカムナ」があります。この文化を研究した楢崎皐月氏は、『日本の上古代文化』(アシヤ文化研究会編、正しい教育を守る会発行)の中で、次のように述べています。
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            画像は楢崎皐月氏
 

「現代人は、上古代以降の後代人と同様に、直感性能が劣化的に退化し、思考性能が上古代人より、優進的に進化したのは事実である。そして直感性能の劣化に基き、自然理(自然法則)の基礎であり元である、時空の本質本性に対する理性判断が、鈍化したことも事実である。そのために自然理の追求が、真理に結び着くことなく、甚だしく迂遠の道をたどったことを認識していない。」
「カタカムナ人は現象背後の“潜象”の作用を共振的に知覚し、われわれの知らない自然認識へと導いた。これはカタカムナ人が、超感覚的知覚に加えて高度の抽象的思惟力をもっていることを意味する。要するに、カタカムナ人においては、後代の人間とは知覚、思惟、意識の回路そのものがまったく異なっていた、と考えてもらってさしつかえない。」
「楢崎皐月氏のカタカムナ説(1) 宇宙から素粒子に至るまで、万象は共通構造(相似象)を示す」より引用

 直観性能が劣化・退化したのは私権時代人共通だが、とりわけ共同体を破壊され強く自我収束した西洋人は、直観性能=潜在思念の劣化が著しいと考えられる。
その現れが、プラトンの架空観念絶対・感覚捨象or二の次である。
言い換えれば、西洋人は直観性能が劣化してしまったので、潜在思念によって事前を対象化することができなくなった。だからこそ、観念によって自然を対象化するしかなくなったのである。それが、近代科学が数学によって自然を記述する根本的な理由であろう。
 
それに対して

「原始人は、本能と共認機能をもって大自然を対象化しており、彼らが獲得した観念原回路も、本能と共認機能を駆使して形成されたものである。さらに、その観念原回路を使った精霊信仰も、本能と共認機能によって精霊を対象化しており、決して、言葉を使って対象化したわけではない。」
「大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機」より引用

その代表が、日本の上古代人(カタカムナ人)の自然認識である
 他の科学分野において疑い無き真理に到達できるのは、数学という土台の賜物であると語ったベーコンが活躍したこの時代の西洋と、日本の上古代人(カタカムナ人)の自然認識では大きな違いがみられる。まず架空観念ありきで、それに都合良く観察し、実験するという近代科学の源流が西洋で生み出されたのである。その根底には前回扱った「武力支配の前に観念支配が必要」、「科学の目標は自然支配にある」という社会背景のもと、数量化(観念への置き換え)が必要であったと考えられます。 
次回は引き続き、なぜ、「感覚」よりも「数学」という手法で数量化や測定すること(観念)は正確で感覚は信用できないという認識に至ったのかというところに迫っていきたいと思います。

List    投稿者 pandaman | 2012-06-20 | Posted in 13.認識論・科学論13 Comments » 

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