物流拠点も効率化だけでは人が集まらない。倉庫の可能性はモノだけでなく情報も集約できること。
物流拠点も効率化だけでは人が集まりません。倉庫業にも新たな価値創出が必要なのではないかと考えます。特に運輸と比べ倉庫業は「単なる品物の保管・管理」と見なされ、最小人工に抑える企業が多いです。日本の物流業界は99%が小規模零細企業で、完全自動化には程遠く、とにかく人が欲しいという状況でしょう。
とはいえ超大手資本の米アマゾンも倉庫業も四半期で35万人以上採用し続けるも、離職率は毎年約150%。すぐに辞める人が多いとニューヨーク・タイムズが報じています。大型化・自動化が進んでいる企業でさえも厳しい状況ですから、業界全体が暗い=活力が低い、の一言に尽きます。
しかし、かねてより物流は、偉人にとって重要性のある業界だと認識されています。
・「わが国の商工業を正しく育成するためには、銀行・運送・保険などとともに倉庫業の完全な発達が不可欠」
渋沢栄一(1897)そして自ら澁澤倉庫部を創業。
・「流通・物流は最後の暗黒大陸」ピーター・ドラッカー(1962)
→飛脚を通じて物流の可能性を考察してきましたが、物流拠点にも新たな価値を見出す必要がありそうです。
まずは倉庫がどのような機能を果たしていたかを探ります。
最古の倉庫は古代エジプト(3500年前)に存在し、当時から備蓄だけでなく「情報管理」とその有用性を発揮していました。穀物の備蓄と合わせて出土した大量の陶板に、何を・何時・何処で・誰が・どれだけ奉納および貢納したか、ナイル川が何時・どのような条件の際に氾濫したのかという情報が記されていたのが、その証拠となります。これらの情報からナイル川の氾濫を予測し、それに適した備蓄ができるようにされていたと推測されます。また穀物倉庫は「銀行のような役割」も果たしていました。(遠く離れた人にモノを移動させずに取引する為替業や、国や地域ごとに異なる通貨を交換して手数料を得る両替業など。)これは日本の江戸時代でも同様の潮流が見られます。
現代でも倉庫業を超えて新たに価値を見出した倉庫業は多くあります。例えば寺田倉庫では、美術品を集めて倉庫をアート展示場にしたり、ワインを集めて倉庫を世界屈指の熟成場にして販売も手掛けたりしています。またIKEAなども倉庫での家具販売を確立しています。
ここでのポイントは、モノだけでなく一緒に集められた情報を集約し、新たな価値として「情報発信」していることにあります。
このように情報が集まる倉庫業には、蓄積されたモノと情報から新しい価値を見出せる可能性があります。その価値を新たな業種(銀行など)として確立したり、広告塔として魅力を発信して新たな人・モノ・情報を繋いでいけるという可能性です。この基盤になる倉庫というのは、いわば何にでもなれる存在なのです。
よって、人材不足も、肝心のラストワンマイル問題にとっても、モノを集める/情報を集める/そして人々も集まる場が突破口ではないかと考えます。倉庫もまたそういった場へと発展することが、新たな価値の創出、活力の創出に繋がるのではないでしょうか。そういった場であれば、倉庫という枠組みにこだわる必要もないのかもしれません。そこは追求ポイントです。
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