2013年06月28日

新概念を学ぶ14 充足物質エンドルフィンを同一視によって相手発で分泌するようになった原猿

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ミラーニューロンの成せる業「マカクザルの新生児が相手の表情を真似ている」
画像はこちらからお借りしました。
前稿「新概念を学ぶ13 原猿の本能不全によって性闘争が抑止され、扁桃体の仲間認識(追従本能)が解除された」の論点は次の通りである。

【1】扁桃体の危機逃避回路・仲間認識回路が追従本能の中核を成す。
【2】扁桃体の仲間認識を性情動物質が抑止することで性闘争が起きる。
【3】ところが本能不全に陥った原猿は、適応欠乏と危機逃避回路が作動して性情動物質が抑止された結果、扁桃体の仲間認識が復活し、追従本能が復活した。
【4】ところが、それだけでは本能不全を突破できないので、親和本能をさらに強化した。
その中身は、成体雄にも親和物質(オキシトシン)が分泌され、元々は庇護存在(闘争存在)である弱雄同士が親和し合うという、一般生物からすれば異常事態である。
これが「親和本能を更に強化し、追従回路に親和回路が相乗収束した依存本能に収束してゆく。つまり、縄張りを持たない敗者たちが互いに身を寄せ合う」ということの中身である。

ところが、それでも本能不全は克服されたわけではない。
最終的に、原猿の弱雄たちは、この不全感をどのようにして突破したのだろうか?

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一般動物では依存と庇護はセットになっている。雌と子供が依存存在で、雄が庇護存在であるが、原猿では弱雄が全て庇護存在ではなくなり依存存在となってしまった。
つまり、原猿が依存収束したということは、どこにも庇護するもの(答を出す者)がいないということに他ならない。
それゆえに原猿の弱雄たちは「どうする?」⇒「どうにかならないか?」と可能性を相手に求め、互いに相手に期待収束してゆく。

『実現論』「前史ニ.サル時代の同類闘争と共認機能」

不全課題を抱えて依存収束した弱オスたちは、依存し合う中から、「どうする?」⇒「どうにかならないか?」と可能性を相手に求め、互いに相手に期待収束してゆく。こうして、依存収束⇒期待収束し、互いに相手を注視し続ける内に、遂に相手も同じく依存し期待している事を発見し(探り当て)、互いに相手の課題=期待を自己の課題=期待と同一視して理解し合うに至った。自分以外は全て敵で、かつ怯え切っていた原猿弱者にとって、「相手も同じく自分に依存し、期待しているんだ」という事を共認し合えた意味は大きく、双方に深い安心感を与え、互いの不全感をかなり和らげることが出来た。この様に、不全感を揚棄する為に、相手の課題=期待を自己のそれと重ね合わせ同一視することによって充足を得る回路こそ、(未解明だが、おそらくは快感物質β-エンドルフィンを情報伝達物質とする)共感回路の原点である。
この安心感+が、相手+⇒仲間+共感を形成し、原猿たちは不全感の更なる揚棄を求めて、より強い充足感を与える(=得る)ことのできる親和行為(スキンシップなど)に収束していく。そこでは、相手の期待に応えることが、自己の期待を充足してもらうことと重ね合わされ同一視されている。つまり、相手の期待に応え充足を与えることは相手に期待し充足を得ることと表裏一体である。従って、相手の期待に応えること自体が、自己の充足となる。共感の真髄は、そこにある。共感の生命は、相手(=自分)の期待に応望することによって充足を得ることである。
こうして、不全感に苛まれ本能が混濁したサルたちは、その唯一の開かれた可能性=共感充足へと収束することによって、はじめて意識を統合することができた。これが、サル・人類の意識の、第一の統合様式たる共感統合の原基構造である。

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●この相手の課題=期待を自己のそれと重ね合わせ同一視する回路が、ミラーニューロンである。これは、他人の意識や行動をあたかも自分のもののように感じ取る機能を持つ、サル・人類に固有の回路である。『るいネット』「相手と自分を同一視する潜在思念」
ミラーニューロンでは他者の行動をあたかも自分の行動のように感じ取るが、単にそれだけでは安心感や充足感は生まれない。
安心感や充足感を感じるのはエンドルフィンという情報伝達物質が分泌される時であり、それは相手の期待と自己のそれを重ね合わせ同一視した時、すなわち相手の期待に応合した時である。
●エンドルフィンとはモルヒネ同様の作用(鎮痛作用や多幸感)をもたらす情報伝達物質である。βエンドルフィンはモルヒネの10倍の鎮痛作用がある。
マラソンなどで長時間走り続けると気分が高揚してくる作用「ランナーズハイ」は、エンドルフィンの分泌によるものとの説がある。二人以上で走ると効果が高い。また、性行為をすると、β-エンドルフィンが分泌される。「ウィキペディア」
●エンドルフィンを分泌するのは視床下部であるが、視床下部にその指令を伝えるのは、ミラーニューロン→扁桃体だと考えられる。
扁桃体は、危機察知・仲間認識を行う上で、快・不快、有益・有害などの情動判断を行っており、情動反応に基づいて多様な神経伝達物質を分泌、脳の興奮と抑制を制御する。
この扁桃体に、相手の課題=期待を自己のそれと重ね合わせ同一視するミラーニューロンの機能が接続されると、扁桃体で相手を肯定視する情動反応が生起し、その指令で視床下部からエンドルフィンが分泌される。
このエンドルフィンの作用によって安心感・充足感、「自分のことのように嬉しい」「相手の痛みがわかる」といった感覚が生起する。これが共認原回路(共感回路)の原基構造であろう。

『るいネット』「【仮説】扁桃体の危機察知・仲間認識回路に、ミラーニューロンによる同一視回路が塗り重ねられ、共感回路(共認原回路)が形成されたのでは?」

このミラーニューロンと扁桃体は、実は強い結びつきがあり、神経回路のリンクによって同時に活性化することが証明された。(2003年 UCLA マルコ・イアコボーニ)
相手との共感を可能にするには、相手と自分を重ね合わせた(同一視した)上で、情動反応を起こすことが必須となるが、扁桃体による情動反応とミラーニューロンによる相手への同化・同一視が、「共感」を生み出していると考えられる。
誰もが実感するように、相手との同一視による共感は、深い充足感を生み出すが、これを脳回路的分析すると「ミラーニューロンによる同一視が、扁桃体の同時活性化を起こす。扁桃体の活性化によって引き起こされる情動反応が快感物質(βエンドルフィン)や親和物質(オキシトシン)を分泌させ、深い充足感を生み出す」と整理することができる。
興味深いのは、このミラーニューロンによる共感回路が、魚類時代から形成された扁桃体による危機回路との結びつきで形成されている点である。
このことから考えると、魚類段階で本能レベルの危機察知回路として形成された扁桃体に、同時に存在していた「仲間認識」機能を土台として、(本能不全を超える為に形成された)ミラーニューロンによる同一視回路が上塗りされることで、「共感回路(共認原回路)」が生み出されたと仮説立てが出来、具体的な脳回路構造として、本能・共認の塗り重ね構造を見出すことが出来る。

つまり、ミラーニューロンの同一視(応合)がスイッチとなって、扁桃体で相手を肯定視する情動反応が生起し、その指令によって視床下部からエンドルフィンが分泌され、充足を得る。
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前頭前野(ミラーニューロン)が活性化すると、扁桃体では不安、恐怖などの感情が抑えられ肯定的な感情が生起する。同時に、この神経は脳内のいろいろなところに突起を伸ばし、ここでエンドルフィンを出す。
画像はこちらからお借りしました。
●では何故、ミラーニューロンの同一視機能を引き金として、エンドルフィンが分泌されるようになったのか?
【1】まず、エンドルフィンは、元々は痛覚を麻痺させる物質であった。
例えば、外敵に襲われた草食動物が、傷の痛みで動けなくなってはそのまま外敵に食われてしまうので、エンドルフィンによって痛みを鎮めて逃げ延びる可能性を模索する。
しかし、エンドルフィンは感覚機能を麻痺させる危険な物質であり、それが分泌されるのは、生命の危険に晒された非常時、例えば大怪我をした時などに限られているはずである。
本能上の仕組みとしては、痛覚伝達物質の量がある閾値を超えないと分泌されないようになっているのであろう。
また、エンドルフィンが和らげるのは痛覚という内部感覚(内部情報)であり、視覚・聴覚をはじめとする外界認識機能が麻痺されるわけではない。
つまり本能機能上は、エンドルフィンは痛覚という内部感覚発で分泌される。
【2】それに対して、原猿は、相手の期待という外部情報をミラーニューロンで同一視(応合)することによって、すなわち相手の期待という外部情報と内部感覚をイコールで結ぶことによって(云わば、外部情報を内部感覚化することによって)エンドルフィンを分泌させる機能を獲得した。
それまで内部感覚(痛覚)発で分泌される物質であったエンドルフィンを、相手発(相手に応合することによって)で分泌するようになったのが、原猿の同一視(応合)回路である。
それによって、元々は非常時にのみ分泌される痛覚の麻痺物質であったエンドルフィンが、本能不全を和らげる充足物質として恒常的に分泌できるようになったのである。

視覚・聴覚をはじめとする外界の認識機能(五感)は一定の波動(周波数)情報をキャッチする機能だが、共感機能も何らかの波動情報(気?)と同調(応合)することによってキャッチする機能だと考えられる。
そして、
共感機能には相手の発する波動と自己のそれとの共振(共鳴)による波動の増幅機能があるのではないか。
すなわち、ミラーニューロンの同一視(応合)によって相手の不全感や期待の波動と自己のそれが共振(共鳴)し増幅される。その増幅された波動が内部感覚化され、エンドルフィン分泌の閾値を超えて、扁桃体→視床下部のエンドルフィン分泌回路を作動させる。これが同一視によって恒常的にエンドルフィンが分泌され充足を得る仕組みではないだろうか。

●共感回路の形成仮説をまとめる。
【1】依存収束⇒期待収束し、互いに相手を注視し続ける内に、遂に相手も同じく依存し期待している事を発見した。この相手の課題=期待を自己のそれと重ね合わせ同一視する回路が、ミラーニューロンである。
【2】ミラーニューロンの同一視と扁桃体の情動反応が結びついて安心感や充足感を生起させ、相手+⇒仲間+共感が生まれる。その安心感・充足感を生み出す情報伝達物質がエンドルフィンである。
【3】本能機能では痛覚情報(伝達物質)がある閾値を超えないとエンドルフィンは分泌されないが、原猿はミラーニューロンによって同一視(応合)すれば恒常的にエンドルフィンが分泌されるようになった。
元々、内部感覚(痛覚)発であったエンドルフィンを、相手発(相手の意識を自分の内部感覚と同調させることによって)で分泌させるようになったのがミラーニューロンであり、その同一視によって不全感や期待の波動が共振(共鳴)し増幅され、扁桃体→視床下部を作動させエンドルフィンが分泌されるようになった。
これが、原猿の共感回路の原基構造であろう。

補:六〇〇〇万年~三〇〇〇万年も昔の原猿時代に形成されたこの共感機能は、その後真猿時代の共認機能(規範や役割や自我を形成する)や人類固有の観念機能を生み出してゆく。逆に云えば既に無数の規範や観念に脳内が覆われた現代人には、原基的な「共感」をイメージすることが極めて困難である。しかし、ごく稀にそれに近い感覚を体験することはある。
例えば阪神大震災の時に、多くの関西人が体感した感覚が、それである。大地が割けたかと思う程の大揺れに見舞われ生きた心地がせず、足が地に着かないような恐怖に慄いている心が、外に出て誰かと言葉を交わすだけで(それ以前に、生きている人々の姿を見るだけで)、すーっと安らぎ、癒される感覚、その時作動していたのが意識の深層に眠る原猿時代の共感充足の回路ではないだろうか。特に留意しておきたいのは、その凄まじいほど強力な安心や癒しの力は、自分の家族や知人からではなく(そんな意識とは無関係に)、誰であっても誰かが居りさえすれば湧き起こってくるものであったという点である。

こうして、不全感に苛まれ本能が混濁したサルたちは、その唯一の開かれた可能性=共感充足へと収束することによって、はじめて意識を統合することができた。これが、サル・人類の意識の、第一の統合様式たる共感統合の原基構造である。
しかし、この段階では、元々の縄張り確保という課題を突破したわけではない。原猿たちは、どのようにして縄張りを確保したのだろうか?
(続く)

List    投稿者 staff | 2013-06-28 | Posted in 13.認識論・科学論No Comments » 

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