2009年04月28日

国民が国家に対して金を貸す

『政府が国民から金を借入れ、市場拡大の原資とする』 
国民の勤勉性と貯蓄志向、更には国(家)への信認の強さを活かすのが「日本式経済システム」の真髄ではないか?

『経済コラムマガジン』09/4/27(567号)「中央銀行の国債購入」からの引用。
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日銀による毎月の国債購入の増額(買い切りオペの増額)が実施されることになった。
ずっと本誌で説明しているように、政府紙幣発行と日銀による国債の買い切りオペの増額は実質的に同じことになる。日銀の国債購入は広義のセイニア-リッジ政策と言える。考えてみれば日本ではこの事実上のセイニア-リッジ政策が昔から続けられてきた。
筆者が注目するのは、今回の世界的な不況対策の財源確保のために日本だけではなく、いくつかの国で同様の施策を実施することである。今のところ米国と英国の中央銀行が国債購入に踏出す。英国はEUの一国であるが、ユーロには参加せず、依然と自国通貨(ポンド)を発行している。ユーロに参加に参加していないことが幸いし、英国はこの中央銀行による国債購入が可能となっている。
中央銀行による国債購入は非伝統的政策と認識され、日本を除き各国が避けてきた政策である。特にインフレを警戒する国が多い欧州では、この国債購入による通貨発行増大によるインフレを危惧する(実際にインフレが起るかどうかを別にして)。また米国でもグリーンスパン前FRB議長が踏み出せなかった政策である。このような非伝統的政策に打って出るというのだから、各国の経済状態が最悪であることが窺える。
話を進めるため、ここで各国の国債を誰がどの程度の比率で保有しているのかを示す。

各国の主体別国債保有比率(%)
     政府  中央  金融  海外  個人
          銀行  機関        他
日 本  40.2   14.5  37.2   4.0   4.2
米 国  14.5   16.3  16.5  39.9  12.8
英 国   4.0    5.5  68.6  12.2   9.7
ドイツ   0.0    0.3  38.6  40.3  20.7
フランス 0.3    0.0  68.0  26.2   5.5

まずこの数字は、国によって03年から04年頃のものでありいささか古い。しかし各主体の保有割合はあまり変わっていないと見る。ただ米国の海外居住者の保有割合が少し大きくなっていると思われる(中国の保有がかなり増えている)。
この表を見て分ることは、国によって国債を主に保有している主体がみごとにバラバラということである。日本は「政府」の保有が大きいが、この政府とは財投、公的年金、郵貯などである。英国とフランスは金融機関の保有比率が突出して大きい。
どのような保有比率が理想的なのか一概には言えない。ただ米国やドイツのように海外居住者の割合が高いことは、後ほど触れるように色々な意味で問題が起こり得る。ところで日本は「海外」の比率が極めて低く、「政府」「中央銀行」「金融機関」でほとんどを保有している。

筆者が特に取上げたいのは二番目の「中央銀行」の保有比率である。日本は日銀による国債買い切りオペを増額してきており、これによって15%程度の保有比率になっている。米国の16.3%という比率は、何度も取上げているが、1951年のアコード締結までFRBが青空天井で国債を買っていたなごりと考えられる。これまでこれが氷付けされているのである。
さすがにインフレ警戒が強い欧州各国は、中央銀行の国債保有はほとんどない。もっともユーロを採用しているドイツやフランスは、事実上、中央銀行による国債購入は無理である。一方、英国国債は、今回中央銀行が購入に踏切るということで格下げ観測が話題になっている。

最後は米国FRBが米国債購入を決定したことの各国に対するインパクトについてである(先ほどから説明しているように再開と言った方がが適切)。まず日銀の今回の国債購入の増額(買い切りオペの増額)の決定に少なからず影響を与えたと見ている。しかし筆者が一番注目しているのは中国の反応である。
中国は米国の今回の決定に予想以上の反発をしている。表向きの理由は、中国が大量に保有している米国債の価値が下がるからというものである。実際のところFRBが米国債を買えば、国債の利回りは下がり、国債の価格は上昇する。この点では中国の言い分は通らない。また中国は米ドルの価値がこれによって下がると主張している。しかしこれについては不明である。米国の景気が良くなると思われれば、米国に資金が流れ、米ドルは高くなる可能性がある。
筆者は、中国の本音は、米国の今回の決定で中国が米国を脅す武器の効果がなくなったことと考えている。以前から米国は、中国が人民元を安くなるよう不当に為替操作していると批難している。しかしこれに対して中国は、米国債を買って米国財政に協力していると反論している。
民主党政権に代わり為替政策に対して攻撃が強まると、中国はとうとう「米国債を売ってしまう」と反撃に出ていた。しかしこの武器が有効だったのは、米国FRBが国債購入に踏出すことに躊躇していた時代である。ところが一旦、国債購入を始めれば話は変わる。
現在、米国FRBは6,000億ドル(3,000億ドル+3,000億ドル)の国債購入を決定している。後、1兆ドルほど増額し、中国の保有する国債をそっくり買ってしまうことは簡単なことである。困るのは中国の方である。それにしても「米国債を売ってしまう」と中国に脅されるなんて、米国は情けない国になってしまったものである。

日本は政府保有の国債割合が40%と異常に高いのは、財投、公的年金、郵貯郵貯の保有が多いからである。2008年07月23日の記事「『国民が国に金を貸す』郵貯+年金⇒財投は日本ならではの仕組み?」で提起された通り。しかも、海外の割合が4%と異常に少なく、96%、つまりほとんどが国内で保有されている。
(本郷猛)
上記の表を再編集すると以下のようになる。政府と個人を国民、中央銀行と金融機関を国内金貸し、海外を海外金貸しとして再編集。
各国の主体別国債保有比率(%)
      国民  国内  海外 
           金貸し 金貸し
日 本   44   52    4  
米 国   27   33   40
英 国   14   74   12 
ドイツ   21   39   40
フランス   6   68   26

List    投稿者 hongou | 2009-04-28 | Posted in 07.新政治勢力の結集に向けて13 Comments » 

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コメント13件

 ベーシックインカム | 2009.08.06 12:21

ベーシックインカムの導入を支持しています。その中でその財源に関して政府通貨を検討している人もいます。
いずれにせよベーシックインカムも政府通貨も検討すべき課題だと思います。

 匿名 | 2009.08.06 15:46

>アジア通貨単位 – 東南アジア諸国連合 (ASEAN) 、中華人民共和国、日本、大韓民国。
中華人民共和国、日本、大韓民国 ← この組み合わせは絶対嫌!

 ルミナリティ | 2009.08.06 17:21

欧州貴族が、ブロック経済を形成したときのプラスとマイナスで、どんな事が予想されるのでしょうか?

 のりか | 2009.08.06 19:52

どれも10年以内を目標にしているんですね(@。@)
こんなに沢山あるなんて知りませんでした。。。
どこの国と共同関係を作るのかが、ポイントになりますね!

 hop | 2009.08.07 2:22

私は四国に住んでいますが、不景気で商店街など悲惨な状況になっています。そこで、地方自治体が地域通貨を発行したら良いのではと思っています。その地方でしか使えないと中央の大規模店、ネット店からお金が吸い取られる事に、多少でも抑制が出来るのではないでしょうか。しかも大規模店で使えばまた地方に還ってきます。地方公務員の給料10分の1位から発行していくとか。
このままではコンビニ、ユニクロ、スーパー以外は食堂と床屋位しか残らないような気がします。
考えすぎかもしれませんけど?

 米流時評 | 2009.08.07 11:09

帰郷・独房生活140日の悪夢の果てに

 ||| W e l c o m e H o m e |||
 米人記者2名 140日間の独房生活から一転して喜びの帰郷、家族と感激の再会
 ビル…

 匿名 | 2009.08.08 20:15

>私は四国に住んでいますが、不景気で商店街など悲惨な状況になっています。(hopさん)
根本的には、「国家紙幣の本当の意味~新しい社会的活動(仕事)の創出」http://blog.trend-review.net/blog/2008/10/000891.htmlに根本的な解決策が提示されています。
「社会に本当に必要とされる活動は市場原理の下では採算に乗らないものが多い。農業しかり、介護しかり、子育てしかり。」
「これらの活動では市場原理下では飯が食えないがゆえに、多くの人々が従事すること(供給者になること)を断念し広がらなかったのである(誰もがその必要性は感じているにもかかわらず)。」
「国家紙幣を発行することは金貸しによる国家支配の終わりであり、お金をどこに投入するかの判断は国家が握ることになる。市場原理に拘束されることなく、社会的に必要な活動の供給者の育成にお金を投入することができる。そうすれば、市場原理の下では誰も手を出せなかった新しい仕事(役割=活力源)が次々と生まれて、社会活力が再生されていく。」
「供給者の育成にお金を投入し、新しい仕事と活力源を生み出すことで、市場の軟着陸させ社会活力を再生する。これが国家紙幣発行の本当の意味であり、金融破綻⇒国有化はその絶好のチャンスなのである」。

 ニシ | 2009.08.08 23:54

ベーシックインカムさん、コメントありがとうございます(^▽^)
「無条件に(資力調査も就労条件も課さずに)交付」となると、生産活力は大丈夫なんでしょうか??
誰も働かなくなったら、お金はあっても買えるモノがなくて意味がなくなりますし(笑)
本質的には、外圧がなくなったら充足も進化もなくなってしまうので、ベーシックインカムによって生きるための圧力が全くなくなってしまうとすれば、「新たな外圧をどうするのか?(それに主体的に取り組むという根拠は?)」という問題なのかな~と思います☆
ベーシックインカムを支持されているとのことですが、それについて何か突破口(大丈夫という実現基盤)があれば教えて下さい♪
それが解決できれば、財源は政府紙幣でもいい気はします(^_^)

 ニシ | 2009.08.08 23:58

匿名希望さん(?)、コメントありがとうございます☆
>中華人民共和国、日本、大韓民国 ← この組み合わせは絶対嫌
主観的に嫌かどうかではどことも(誰とも)相互扶助関係は形成できませんが、少なくとも事実として、あまりにも思考性や目的が違えば、やはり難しいでしょうね(^_^)
その「嫌」がどこから来るのか、良ければまた教えて下さい♪

 ニシ | 2009.08.09 0:07

ルミナリティさん、ありがとうございます☆
コメントとっても嬉しいです(^▽^)
>欧州貴族が、ブロック経済を形成したときのプラスとマイナス
「欧州貴族が主導で、世界のブロック経済を形成した場合」という意味でよろしいでしょうか?
それとも、「欧州で形成されているブロック経済(EU)との違い」ということでしょうか?
理解不充分でごめんなさい。。(>_ルミナリティさん、ありがとうございます☆
コメントとっても嬉しいです(^▽^)
>欧州貴族が、ブロック経済を形成したときのプラスとマイナス
「欧州貴族が主導で、世界のブロック経済を形成した場合」という意味でよろしいでしょうか?
それとも、「欧州で形成されているブロック経済(EU)との違い」ということでしょうか?
理解不充分でごめんなさい。。(>_<) もし良かったら質問の意図をもう少し詳しく教えていただけると嬉しいです(^^)

 ニシ | 2009.08.09 0:11

のりかさん、いつもコメントありがとうございます☆
とっても励みになります(^▽^)
>こんなに沢山あるなんて知りませんでした。。。
そうなんです!
まずこれだけでもビックリ。。。っていうか、ホントにマスコミは肝心なことを何も伝えていないんだなぁって思います。
この事実を知るだけでも、「考えよう」って普通に思えるようになりますよね。
一緒に
>どこの国と共同関係を作るのか
を考えましょう♪
それから、もっとたくさんの人にも考えてほしいので、これからも応援よろしくお願いします☆

 匿名 | 2009.08.09 0:27

hopさん、現実に根付いた視点、とっても有難いです☆
ありがとうございます(^^)
匿名希望さんが答えてくれていますが、投資などの幻想産業が儲かって、本当に必要な産業が潰れていくのって、やっぱりおかしいですよね(>_hopさん、現実に根付いた視点、とっても有難いです☆
ありがとうございます(^^)
匿名希望さんが答えてくれていますが、投資などの幻想産業が儲かって、本当に必要な産業が潰れていくのって、やっぱりおかしいですよね(>_<) 景気回復なんて抽象的な(古い)目的のために国債を乱発するくらいなら、政府紙幣(地域通貨)で地域に根付いた産業を守る方が大事だと思います☆ 国内でも、ブロック経済化する方がいいかどうかは、意識潮流次第かな~と今は感じています。 地元収束も強まっているので、実現可能性は芽生えていると思いますが、もしかしたらまだ危機感が弱いかもしれませんね。。

 ニシ | 2009.08.09 0:30

匿名希望(?)さん、コメント(というか答え☆)ありがとうございます(^▽^)
私がスッキリしちゃいました(笑)
もしかしてるいネットで勉強されてる方ですか?!
とっても心強いです♪
これからもまだ追求が続きますので、これからも応援よろしくお願いしますい☆

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