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国民が国家に対して金を貸す

『政府が国民から金を借入れ、市場拡大の原資とする』 
国民の勤勉性と貯蓄志向、更には国(家)への信認の強さを活かすのが「日本式経済システム」の真髄ではないか?

『経済コラムマガジン』09/4/27(567号)「中央銀行の国債購入」 [1]からの引用。
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日銀による毎月の国債購入の増額(買い切りオペの増額)が実施されることになった。
ずっと本誌で説明しているように、政府紙幣発行と日銀による国債の買い切りオペの増額は実質的に同じことになる。日銀の国債購入は広義のセイニア-リッジ政策と言える。考えてみれば日本ではこの事実上のセイニア-リッジ政策が昔から続けられてきた。
筆者が注目するのは、今回の世界的な不況対策の財源確保のために日本だけではなく、いくつかの国で同様の施策を実施することである。今のところ米国と英国の中央銀行が国債購入に踏出す。英国はEUの一国であるが、ユーロには参加せず、依然と自国通貨(ポンド)を発行している。ユーロに参加に参加していないことが幸いし、英国はこの中央銀行による国債購入が可能となっている。
中央銀行による国債購入は非伝統的政策と認識され、日本を除き各国が避けてきた政策である。特にインフレを警戒する国が多い欧州では、この国債購入による通貨発行増大によるインフレを危惧する(実際にインフレが起るかどうかを別にして)。また米国でもグリーンスパン前FRB議長が踏み出せなかった政策である。このような非伝統的政策に打って出るというのだから、各国の経済状態が最悪であることが窺える。
話を進めるため、ここで各国の国債を誰がどの程度の比率で保有しているのかを示す。

各国の主体別国債保有比率(%)
     政府  中央  金融  海外  個人
          銀行  機関        他
日 本  40.2   14.5  37.2   4.0   4.2
米 国  14.5   16.3  16.5  39.9  12.8
英 国   4.0    5.5  68.6  12.2   9.7
ドイツ   0.0    0.3  38.6  40.3  20.7
フランス 0.3    0.0  68.0  26.2   5.5

まずこの数字は、国によって03年から04年頃のものでありいささか古い。しかし各主体の保有割合はあまり変わっていないと見る。ただ米国の海外居住者の保有割合が少し大きくなっていると思われる(中国の保有がかなり増えている)。
この表を見て分ることは、国によって国債を主に保有している主体がみごとにバラバラということである。日本は「政府」の保有が大きいが、この政府とは財投、公的年金、郵貯などである。英国とフランスは金融機関の保有比率が突出して大きい。
どのような保有比率が理想的なのか一概には言えない。ただ米国やドイツのように海外居住者の割合が高いことは、後ほど触れるように色々な意味で問題が起こり得る。ところで日本は「海外」の比率が極めて低く、「政府」「中央銀行」「金融機関」でほとんどを保有している。

筆者が特に取上げたいのは二番目の「中央銀行」の保有比率である。日本は日銀による国債買い切りオペを増額してきており、これによって15%程度の保有比率になっている。米国の16.3%という比率は、何度も取上げているが、1951年のアコード締結までFRBが青空天井で国債を買っていたなごりと考えられる。これまでこれが氷付けされているのである。
さすがにインフレ警戒が強い欧州各国は、中央銀行の国債保有はほとんどない。もっともユーロを採用しているドイツやフランスは、事実上、中央銀行による国債購入は無理である。一方、英国国債は、今回中央銀行が購入に踏切るということで格下げ観測が話題になっている。

最後は米国FRBが米国債購入を決定したことの各国に対するインパクトについてである(先ほどから説明しているように再開と言った方がが適切)。まず日銀の今回の国債購入の増額(買い切りオペの増額)の決定に少なからず影響を与えたと見ている。しかし筆者が一番注目しているのは中国の反応である。
中国は米国の今回の決定に予想以上の反発をしている。表向きの理由は、中国が大量に保有している米国債の価値が下がるからというものである。実際のところFRBが米国債を買えば、国債の利回りは下がり、国債の価格は上昇する。この点では中国の言い分は通らない。また中国は米ドルの価値がこれによって下がると主張している。しかしこれについては不明である。米国の景気が良くなると思われれば、米国に資金が流れ、米ドルは高くなる可能性がある。
筆者は、中国の本音は、米国の今回の決定で中国が米国を脅す武器の効果がなくなったことと考えている。以前から米国は、中国が人民元を安くなるよう不当に為替操作していると批難している。しかしこれに対して中国は、米国債を買って米国財政に協力していると反論している。
民主党政権に代わり為替政策に対して攻撃が強まると、中国はとうとう「米国債を売ってしまう」と反撃に出ていた。しかしこの武器が有効だったのは、米国FRBが国債購入に踏出すことに躊躇していた時代である。ところが一旦、国債購入を始めれば話は変わる。
現在、米国FRBは6,000億ドル(3,000億ドル+3,000億ドル)の国債購入を決定している。後、1兆ドルほど増額し、中国の保有する国債をそっくり買ってしまうことは簡単なことである。困るのは中国の方である。それにしても「米国債を売ってしまう」と中国に脅されるなんて、米国は情けない国になってしまったものである。

日本は政府保有の国債割合が40%と異常に高いのは、財投、公的年金、郵貯郵貯の保有が多いからである。2008年07月23日の記事「『国民が国に金を貸す』郵貯+年金⇒財投は日本ならではの仕組み?」 [2]で提起された通り。しかも、海外の割合が4%と異常に少なく、96%、つまりほとんどが国内で保有されている。
(本郷猛)
上記の表を再編集すると以下のようになる。政府と個人を国民、中央銀行と金融機関を国内金貸し、海外を海外金貸しとして再編集。
各国の主体別国債保有比率(%)
      国民  国内  海外 
           金貸し 金貸し
日 本   44   52    4  
米 国   27   33   40
英 国   14   74   12 
ドイツ   21   39   40
フランス   6   68   26

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