中国は世界経済を救えるか ~1.覇権国家を目指す中国~
中国の対外投資が急増している。2007年には外貨準備運用機関として国営ファンドである「中国投資有限責任公司」が設立された。そして、2010年には対外直接投資額は単年度で総計688億ドルに達し、イギリス・日本を抜き世界第5位の投資額に浮上した。リンク
また豊富な外貨準備高を背景に今や中国は、米国債の最大の保有国である。
そして今年に入り、中国はユーロの支援に動き、9月13日にはギリシャ危機についでイタリアの危機が叫ばれるユーロに対して、中国国有投資会社はイタリア国債の購入を表明した。リンク

今や世界経済の命運は中国が握っているかのような感さえある。果たして中国は世界経済の救世主足りうるのか?2回にわたって中国経済の現状を押さえてみたい。
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■資源確保を目的とした中国の海外投資
この中国の直接投資の主目的は、そもそもはまず資源の確保におかれていた。
地域別・業種別の投資額の内訳を見てみよう(2007年段階 図表 クリックすると拡大)。
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地域別で傑出するのは香港・ケイマン諸島、バージン諸島を始めとするタックスヘブン向けのシェアである。これは業種別では投資会社向けを中心とするビジネスサービス業投資と対応しており、いわば各国投資への迂回経路と思われる。では実際の投資地域はどこか?
タックスヘイブンを除けば目立つのはロシア、カザフスタン、インドネシア、パキスタン、オーストラリア、南アフリカ、スーダン、ナイジェリアなどの資源国向け投資である。
中国は中国石油天然ガス集団(CNPC)、中国海洋石油(CNOOC)、中国石油加工(SINOPEC)
という三大石油会社を使って中東・アフリカ・中南米・東南アジア・中央アジア・ロシアなどの広域の地域において石油の採掘権の確保、油田開発などの200近くの自主プロジェクトを手がけている。また、鉄鋼や金属資源においてもオーストラリアを中心に権益確保に動き、2007年には、大手国有企業「宝鋼」が世界第3位の鉄鋼メジャー、「リオティント」の買収に乗り出した。
さらには、アフリカを中心に大規な農地開発のプロジェクトにも着手し始めている。食料生産力の確保である。
中国のODAの特徴は、現地に中国の法人を作り、中国の法人にプロジェクトを発注するという点にある。この点日本などによる現地法人が請け負う、プロジェクトとは異なり、中国人による企業村がそのまま移住したような形になる。したがって現地にはインフラや設備は残るものの、極めて中国による支配権が強いものとなる。
■先進技術と技術者確保を目的とした、欧州への投資
それら資源の確保に留まらない。とりわけ近年中国の投資に変化が見られる。
まず2008年には中国国家開発銀行が企業買収会社TPGキャピタルと資本提携を行った。
そして2010年には海外企業の買収、合弁による再投資が増える傾向にあり、投資額297億ドル前年比と55%の増加を示した。
地域的にはヨーロッパへの投資が倍増。2010年、EUに対する直接投資は59億ドルに達した。リンク
またEUへの迂回融資と思われるルクセンブルグへの直接投資も2009年より急増している。リンク
2011年には自動車、化学、機械製造等の企業の買収を次々と成功させ、中国の投資の矛先は明らかに資源の次に、先進技術(者)の確保へと向かっているように見受けられる。
■覇権国家を目指す中国
中国は国家であるがゆえに、一般のいわゆる投資ファンド(金貸し)と異なり、海外投資の目的に一線を画しているのが特徴だ。金貸しが目先の利益を目的として、ハイリターンの金融商品に向かっているのに対して、明らかに中国は、資源、さらには先進技術に投資を振り向けている。つまりあくまでも現物経済にその主力がおかれている。取得した金融債の内訳でもファニーメイ等のサブプライムローン、CDS債などの比重は小さい。
これらから見て中国の中期的な目的はあくまでも資源と、食料、そして技術(企業買収)によって世界の覇権国家を目指すことにあると思われる。もちろんこの間中国は軍事費も増加させ続けており、1989年以降21年連続で毎年20%以上軍事費を拡大し続けている。
またこの強い「人民元」を背景にすでに北朝鮮・ベトナム・カンボジア・ネパールなどの周辺国は「人民元」を決済通貨とし、「元経済圏」も現出しつつある。
このように中国マネーはリーマンショック以降の金融経済の破綻と崩壊を尻目に、現物経済の拠点を次々と押さえ、今や世界を席巻する勢いであるかのように見える。

先進国経済の失速以前は、この中国の投資資金を生み出した原資はアメリカ向けを中心とする輸出によるものであった。しかし、現在アメリカを始めとする先進国経済は失速し、輸出を機軸とする経済は明らかに転換を迫られている。
では先進国経済失速以降の中国の国内経済の状況は、現在はどのように変化しているのであろうか?次回は現在の中国の内部経済事情の変化と欧米経済の関係を見ていく中で、中国が世界経済の救世主となりうるかどうかに迫ってみたい。
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