2009年09月15日
アメリカ崩壊後、イスラム世界の可能性はあるのか? 1.マレーシア編
※この塔は、クアラルンプールにある超高層ビル「ペトロナスツインタワー」で、イスラム様式でマレーシアのモスクに似せて作られています。
当ブログの過去の記事『アメリカ崩壊後の世界~イスラム世界の可能性は?』で
目前に迫るドル暴落・アメリカ崩壊後の世界において、人々が奪い合い殺し合う事態が起きるのか、調和的な世界に移行するのか、その大きな鍵を握るのが世界人口65億人の約20%を占めると言われるイスラム世界の動向です。民主主義や人権といった西洋的価値観とは相容れず、日本人にもなじみの薄い彼らですが、その本源性には大いに着目すべき点がたくさんあります。
と記しました。そこで、イスラム教の共同体規範について調べてみました。
イスラム教の具体的な規範内容としては、労働せずに預金して富を死蔵することや、金を貸しつけて儲けたりすることが禁止されていたり、一夫多妻制(男に都合の良い制度ではなく、それぞれの妻に対して公平な対応が必要とされており、一対婚制度よりも高い本源性が求められる)が挙げられます。
中でも、今回着目した規範内容としては、イスラム教徒の義務である『喜捨(ザカート)』です。一体、『喜捨(ザカート)』とは、どのような規範内容なのでしょうか?
『喜捨(ザカート)』は、自発的に寄付や施しをする、という意味です。これはイスラム共同体の相互扶助に基づくもので、こうした善行によって、より天国に近づくという意味も持ち合わせています。
また『喜捨(ザカート)』を通じて、富の偏りを均しています。イスラムの富の分配と資本主義および共産主義との違いは、稼いだ後に共同体のための自律的な還流がザカートによって構成員の義務として仕組まれていることです。
インドネシアでの具体的な施しについては、貧しい人が一人1年に米1リットルで許されるのに対し、金90g以上の余剰財産所有者は財産の2.5%を供出する必要があります。これらをイスラム教財団が受けとり一定の基準で貧乏人に配分します。(貧民は『喜捨(ザカート)』を受ける資格があります。)また、義務としての『喜捨(ザカート)』以外に自発的な意志に基づく喜捨もあり、断食明けとメッカ巡礼後の犠牲祭りのときに、金持ちは資力に応じて羊や山羊を喜捨し、解体された肉が貧乏人に配られます。 他にも、土地や資金の寄進を受けて教会や孤児院を建て、社会福祉を行ったりします。
このように、『喜捨(ザカート)』は、事実上の租税として機能しかつ社会保障としての役割を果たしているのです。イスラム教の規範内容の中でも、この『喜捨(ザカート)』という社会制度が徹底されれば、アメリカ崩壊後の社会でも、秩序維持を保つ可能性が高いと思われます。
そこで今回は、東南アジア諸国の中で、イスラム教を国教とし反米色の強い「マレーシア」と、世界最大のイスラム教徒を抱える「インドネシア」の2国における『喜捨(ザカート)』の確立状況を調べ、アメリカ崩壊後の両国家の可能性を探っていきます。
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