米国の圧力と戦後日本史4 冷戦直前の占領政策。アメリカGHQの内部対立に翻弄される日本
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米国の圧力と戦後日本史シリーズ3の前回の記事(「アメリカは占領期であっても、閣僚を完全にコントロールできていた訳ではない」)では、戦後の米国による占領政策においては、米国の完全支配などというものは実現しておらず、むしろ米国の顔色を伺う日本の政治家が(日本の政治家が作り出す圧力が)、「自主独立」を目指す政治家の芽を潰してきたということが明らかになった。
今回は、米国がどのような手法で日本を支配しようとしてきたのかに着目して見ていきたいと思う。
※以下、文章引用元は全て「戦後史の正体」(孫崎亨)
■なぜ社会党の片山政権ができたのか?
1947年4月25日、新しい日本国憲法のもとではじめての総選挙が行われ、片山哲率いる社会党が第一党になり、片山哲が首相となる。片山哲は、クリスチャンでGHQ内の左派グループに支持されて首相になった。
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社会主義のソ連と敵対している中、社会党が第一党となることをマッカーサーが許したのは、日本の民主化を実現するために、その基盤となるキリスト教を広めたかったからである。すなわち、社会党の党首である片山哲がクリスチャンであるところに目をつけて日本の民主化に利用しようとしたのである。
「日本人の精神生活は戦争で空白になっているから、キリスト教を日本人に布教するのは、今が絶好の機会である」
「片山氏が日本の首相として出てきたことの政治的な意味に劣らず重要な点は、精神的な意義である。歴史上、実に初めて日本は全生涯をキリスト教徒として過ごした指導者によって指導される。国際的にいっても重要なことである。東洋の三大国が、中国では蒋介石、フィリピンではロハス、日本では片山哲をもつのである」
こうしてできた片山内閣だったが、早々に総辞職することになる。
「片山内閣、芦田内閣と革新内閣が誕生すると、GS(GHQ民政局)は大喜びだった。(しかし)片山内閣が成立したときには、平野を農相として承認したのに、(その後)GSは平野追放に必死になった」
(中略)
そして片山首相は、要求にしたがい平野農相を解任し、その結果、片山内閣は平野派四〇名の支持を失って総辞職に追い込まれていくのです。
日本が社会主義に染まり、ソ連化するのは避けたかったGSは、極端な左派だった平野を警戒し、切った。その結果、片山内閣も崩壊することになる。これは、社会党政権である片山内閣をGHQの左派勢力であるGS(民政局)が応援する一方で、その片山内閣をつぶしたきっかけを作ったのもGSの介入であったということ。つまり、「米国からの圧力」というものが、けっして一枚岩ではないし、合理的で長期的な展望に基づくものではないことを示している。
★米国が目指していたのは、日本の民主化であり、そのためにその民主主義を支える観念(愛、自由、平等など)が必要となる。その観念を広めるためには、キリスト教を使った方が手っ取り早かった。つまり、キリスト教の布教によって、自由・平等などの観念を根付かせ、民主主義体制を確立しようとしたのである。
★これと同様のことが、日本だけでなくフィリピンや台湾でも行われた。つまり、キリスト教は民主主義のための観念を普及させる『装置』として使われてきた。だから、2000年前の古い観念であるにもかかわらず、キリスト教は未だに生き残っているのである。実際、フィリピンは東南アジアではめずらしくキリスト教を信仰している人が多い。(一方で、日本でキリスト教がそこまで広まらなかったのは、縄文体質故の『お上捨象』『観念捨象』が残存しているからであろう。しかし、民主主義に代表される旧観念は、学校制度によって広まっていった。)
■日本における自主と追随のせめぎあい
日本の戦後は、首相よりも米国と直接接する外務大臣が重要な時代。この外務大臣という側面から見ていくと、敗戦後約10年間は「自主路線」と「追随路線」とが激しくせめぎ合っているのが見えてくる。
■芦田内閣が昭和電工事件で総辞職に追い込まれたのはなぜか?
片山内閣が総辞職したあと、外務大臣だった芦田均があとをついで組閣。この芦田均は、対米自主路線の代表である重光葵と同じ年に外務省に入った元外務官僚であり、重光と同じように自主路線をとった代表的政治家である。
しかし、この芦田内閣は、昭和電工事件というスキャンダルに巻き込まれてしまう。昭和電工事件とは、戦後の農業再興のための復興金融公庫からの融資に関し、大手化学工業会社だった昭和電工の日野原社長が、政治家・官僚・財界に賄賂を送った容疑で逮捕され、芦田内閣も総辞職に追い込まれたという。ちなみに、この事件の裁判では、実刑判決はゼロであり、戦後最初の冤罪事件であった。
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冤罪であったにもかかわらず、芦田内閣が総辞職、その後、芦田均自身も逮捕されるという大事に至った背後には、GHQが深く関与していたという事情がある。
「これ(昭電事件)を摘発したのは、主として他ならぬG2(GHQ情報担当部局)であった。被告日野原の陳述によれば、金品の贈賄は日本の政界ばかりでなく、占領軍筋にも及んでおり、GS(民政局)が主な対象だった」
(図はコチラ)
民政局(GS)と参謀第2部(G2)は対立しており、昭電事件とは、「G2-吉田茂-読売新聞・朝日新聞」(米・共和党系)V.S.「GS(民政局)-芦田均-リベラル勢力」(米・民主党系)という戦いだった。G2-共産主義との対決を最優先し、GSは日本の民主化を最優先した。そしてこの戦いは、G2が勝利し、決着がつく。
この背景にあったのは、国際政治の大きな変化だった。
冷戦が始まり、東西陣営の対立が深刻化するにつれ、米国は日本の民主化よりも、日本を共産主義勢力との戦いのために利用するという方針に転換したのです。
★米国(GHQ)も決して一枚岩ではなく、G2vsGSといった対立が存在する。特に、他国を支配しようとするとき、その対立が深刻化する。米国にとっての外圧(国際政治)が変わると、どこが主導権を持つかが変わる。そして、それに伴って日本の路線も変わってくる。
★2000年以降、日本の総理大臣の在任期間はどんどん短くなっているが、これは米国の外圧変化があったことを物語っている。それは、米国も時代を読んだ答えを持ってないということであり、このようなタイミングこそが日本が動き出す絶好のチャンスであるとも言える。
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コメント2件
FAKE oakleys | 2014.03.27 22:36
日本を守るのに右も左もない | 金貸し支配の構造8~まとめ(金貸しは如何にして世界を支配し、如何にして崩壊してゆくか)
FAKE oakleys
ycyljoxxy | 2014.03.26 12:24
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