2011年04月04日

『白人の源流~ギリシア・ローマ編~8』 人種的には異なれど、近代ヨーロッパは、古代ギリシア・ローマの文化(略奪性)と文明(正当化観念)を受け継いでいる

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いよいよこのシリーズ最終回です。

『白人の源流~ギリシア・ローマ編~1』プロローグ:大転換の予感⇒人類史を追求する意義
『白人の源流~ギリシア・ローマ編おいよ~2』 オリエントの文明の発祥である 『エーゲ文明~クレタ文明』
『白人の源流~ギリシア・ローマ編~3』クレタ文明を滅ぼした『ミケーネ文明』
『白人の源流~ギリシア・ローマ編~4』ミケーネ文明を滅ぼした、傭兵と奴隷集団『海の民』
『白人の源流~ギリシア・ローマ編~5』ギリシアの『ポリス社会』
『白人の源流~ギリシア・ローマ編~6』 ギリシャとエトルリアに挟まれたローマの起源
『白人の源流~ギリシア・ローマ編~7』 古代ローマは、共同体が崩壊した山賊だから、『略奪によって私益を拡大する』ことへの集団収束力が強固であった 

今回は、最終回として、このシリーズの核心に迫ります。

 

■ギリシア→ローマへと至る地中海文明は、近代ヨーロッパ人とつながっているのか?

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古代ギリシア(セム・ハム系+印欧語族のアカイア人・ドーリア人)および古代ローマ(印欧語族のラテン人)と、近代ヨーロッパ人(ゲルマン人、ケルト人)とは、人種的には直接のつながりはないだろう。後に、ギリシア・ローマ文明を、教会・文献やアラブ人・ユダヤ人などを媒介にして学んだにすぎない。

にもかかわらず、例えば、ヨーロッパの「中世」と呼ばれる時期は、一般的には4世紀末(ローマ帝国崩壊によるゲルマンの部族国家の成立、あるいは800年のシャルルマーニュの戴冠の百年戦争終結)から15世紀の半ばまでを指すが、これは16世紀のルネッサンス以降になって文明的にようやく台頭してきたヨーロッパ人たちが、自分たちの時代を「近代」として、ヨーロッパの起源だとするギリシア・ローマ時代を「古代」とし、その中間の時代という意味で「中世」と命名したからだ。
つまり、このことが典型的に示しているように、ヨーロッパの4世紀(あるいは9世紀)から15世紀までを指して「中世」と呼ぶという行為には、自分達たちヨーロッパ人は「古代」のギリシア・ローマ人と歴史的に連続し、その文明を継承しているのだという認識が強く主張されている。
この古代ギリシア・ローマ以来、文明は連続して発展しており、現代ヨーロッパはギリシア・ローマ文明の正当な嫡子だという主張こそ、ヨーロッパ至上主義の典型的な表現である。

Q.それはなぜか?

ヨーロッパ人は、近世・近代以降から現代に至るまで、略奪と謀略により覇権を続けた。
コロンブスのアメリカの発見やバスコダ・ガマのインド航路の開拓によって始まる大航海時代以降は、ヨーロッパ人が世界に打って出て、いわば世界を自己の利益のために開拓し、他民族を支配し、自然と人間を収奪してきた歴史にほかならない。
それまでのヨーロッパ人は、ユーラシア大陸の西端部分に生息する周辺的な民族であり、文明的にも中心的な役割を担っていたのではない。しかし、この時期以降、一転して世界に君臨したのである。

そして、ヨーロッパ人たちの世界支配の道具は、第一に、非ヨーロッパ民族を物理的にねじ伏せた強大な軍事力であり、第二に非ヨーロッパ民族を征服することを正当化する強烈な観念(=ヨーロッパ至上主義)であった。そのヨーロッパによる世界支配を支える観念の基盤が、キリスト教であり、そこから発展したヨーロッパ近代思想である。
ヨーロッパによる世界制覇の特徴は、軍事力だけでなく、近代思想(キリスト教)という、支配を恒久化するための二の矢・三の矢があったことである。

武力による侵略後に持続的に支配するために、この観念(自由、個人、民主主義など近代思想)と引き換えに、(その観念で洗脳し手懐けて)隷属を強要する手法《観念と隷属の等価交換》は、すでにギリシア・ローマ文明において、支配者が非支配者を統治する方式として確立されていた。

そして、ヨーロッパ人自身も、ローマ帝国がガリア(今のフランス)を征服して、ゴール人(当時のフランスに居住していた主としてケルト系の住民たち)を奴隷化したとき以来、彼らヨーロッパ人の大部分はその統治方式を(奴隷として)肌で知っていたのである。

モンゴルのように、軍事力で征服して隷属させるのとは大きく異なり、この観念(近代文明)と隷属との交換は、その後のヨーロッパによる世界制覇の思想的バックグランドになり、それを支えた。

つまり、近代ヨーロッパ人が、古代ギリシア・ローマと繋がっていると主張するのは、古代ギリシア・ローマの支配の文明(観念と隷属の等価交換)を模倣しているだけであることを正当化するためである(※ギリシア・ローマ文明の正当な嫡子で繋がっていれば模倣にならない)。
そして、その文明を賞賛することで自らの略奪性を正当化しているのだ。

Q.なぜ、文明と隷属の交換などという(無茶苦茶な)欺瞞を正当化できる意識が生じるのか?

◆西アジアからの圧力と奴隷制社会のなかで形成された「自由」という観念
古代ギリシア・ローマが奴隷社会であったのは間違いがない。しかし、遊牧民によるいくつもの征服国家とは違う側面がある。それは、「自由」が価値あるもとして賞賛され、専制統治国家にはない「民主主義」を作り上げたからである。
それが、古代ギリシア以来の「民主主義」の後継者を任ずる近代ヨーロッパ人の自信の根拠となっている。
ただし、その「自由」・「民主主義」は奴隷の労働に依拠しており、労働から免れたごく少数の人間たちが行う独善的な自由である。

にもかかわらず、この独善的な自由を正当化できる背景に奴隷制社会がある。
ギリシアの奴隷制においては、債務奴隷の中にはギリシア人もいたが、戦争で捕虜になったバルバロイ(異邦人)が奴隷のほとんどを占めていた。
このギリシアの奴隷制社会を正当化したのが、プラトンやアリストテレスなど、ギリシアの哲学者たちである。彼らにとってバルバロイは、知的な面で劣った者と映った。バルバロイへの軽蔑感が「バルバロイはそもそも劣った連中だから、奴隷にされても当然だ」という奴隷天性論の理論的支柱になり、奴隷制を肯定する思想的支援になった。
そして、アリストテレスを始めとするギリシア人が、奴隷使用を正当化するために開発した思想の核にあるのが「自由」という観念である。

つまり、劣っているから奴隷になり、優秀である者は自由を獲得できる。生まれながらに自由を獲得できる身分にあるギリシア人は優秀である。という論理である。
そして、自由を獲得できる文明をもつ自分たちは、人種的・民族的に優秀であると言い、ギリシア人至上主義につなげるのである。
そして、自分たちが持つ高価な文明(自由という観念)を教えてあげる代りに、劣った連中が我々に隷属するのは当然であるという、文明と隷属の交換を正当化し強要する。

このような「本質的には奴隷に依存した自由という観念」の基盤から、さらにヨーロッパ対アジアという構図も生まれた。
この構図において、ギリシア人たちは、自分たちは自由であるのに対して、アジア人(この場合はペルシア人)は専制統治下にあって不自由な立場にあるので、自分たちの方が決定的に優れているという確信を抱くようになる(まさに自家中毒としか言いようがない状態)。

このように、奴隷制社会と西アジアからの圧力の中で「自由」という正当化観念が生じ、それが古代ギリシアから古代ローマに伝承されたのだが、その後のヨーロッパが抱く「ヨーロッパ文明の優位性、そしてヨーロッパ至上主義」の思想的根拠がここにすでに表れている。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
時代とともに様々な人種は混ざり合う。また戦争時には特に混ざり合うのであって、オリエント~ヨーロッパは、5500年前の戦争の起源から連綿と略奪戦争を繰り広げてきており、特に人種は混ざり合っている。
そして、何々人という中身は、人種的な面もあるが、文化(思念、規範、行動)と文明(観念、価値)の継承が重要である。

古代ローマ帝国は、ギリシアの観念体系を応用し、“分割して統治せよ”を支配の手法に用いた。
近代ヨーロッパ人は、武力で侵略した後、バラバラに集団を解体し、観念(キリスト→近代思想)で洗脳して手懐け、支配を恒久化する手法を用いたが、この手法の起源こそ、古代ギリシアの観念体系を継承する「古代ローマ」に見てとれる。
(※欧米による戦後の日本の統治体制は、まさにこの手法に則っている。)

「武力」「侵略した集団の解体」「文明と隷属の等価交換」による略奪・支配の手法、そして支配者(市民)と奴隷という二極の社会構造こそ、近代ヨーロッパが古代ギリシア・ローマ文明から継承している中身である。

その意味で、人種的には異なれど、近代ヨーロッパは、共同体が崩壊したギリシア・ローマの文化(略奪性)と文明(思考・観念体系)を受け継いでおり、近代ヨーロッパ人と古代ギリシア・ローマは同根で、つながっている。

~ 了 ~

※参考文献:ヨーロッパ《普遍》文明の世界制覇 中川洋一郎

List    投稿者 kirin | 2011-04-04 | Posted in 未分類 | 3 Comments » 

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コメント3件

 金 国鎮 | 2012.01.01 22:22

西洋の歴史の事実に関する情報ですね。
この種のブログは非常に少ない。
何か不思議なものを見たような印象です。
戦後教育を受けた日本人というのはいわゆる洗脳された世代ですので、彼らに対してはその役割は地味ですけど大きいと思います。
南北朝鮮の戦後世代も同様に違った意味で洗脳されていますが、彼らがここにたどり着くのは何時かなと思っています。

 三便宝 | 2013.05.15 17:23

西洋の歴史の事実に関する情報ですね。
この種のブログは非常に少ない。
何か不思議なものを見たような印象です。
戦後教育を受けた日本人というのはいわゆる洗脳された世代ですので、彼らに対してはその役割は地味ですけど大きいと思います。
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