☆2001年
米国政府は、日本が「効率的で質の高い医療」の実現を目指すに当たり、小泉首相が医療分野の改革に焦点を合わせていることをおおむね歓迎する。市場競争原理の導入を通じて、革新性、調和性、透明性、予見可能性そして効率性が改善すれば、日本のそうした目標の達成に資する上、経済成長も刺激される。革新的な医薬品や医療機器を迅速に承認し幅広く入手可能にすることで、医療費全体を大幅に削減しつつ医療の質を向上させることができる。
改革の過程において、革新的な製品が医療費を押し上げる要因であると誤って認識され、不適切な費用削減の対象とならないようにすることが極めて重要である。日本の医療費を押し上げている制度の非効率性(世界一の平均入院日数、過剰な数の医療施設、IT化の遅れや専門病院の不足など)に取り組み、この分野での規制や貿易障壁を取り除くことは、資源の有効配分につながり、生命力を高める費用対効果にも優れた製品が患者にもより迅速に提供されることになる。目先の措置ではなく、こうしたアプローチが、日本に長期的な利益をもたらす真の改革のカギとなる。米国の医療機器・医薬品業界を含むすべての関係者が、改革の議論に参加する「意味のある機会」を持ち、その場で提出される要望事項が「真剣に検討される」ことが極めて重要である。
■提言の概要
・ 医療制度改革:市場競争原理を導入し、日本の医療制度を改善するために、一般に対する医療情報開示の水準を向上させ、病院や看護施設での民間の役割の拡大等を含む構造改革を推進する。
・ 医療機器・医薬品の価格算定改革:革新的な医療機器・医薬品が確実に導入されタイムリーに使用されるようにし、「市場の役割を認める価格設定をする」。そのような製品が、革新的な製品の価値を下げる恣意的な価格操作の対象にならないことを保証する。
・ 医療機器・医薬品の薬事制度改革:医療機器・医薬品、特に日本では導入されていないが他の主要国で入手可能な製品、の承認を促進する措置を引き続き取る。
・ 外国臨床データの受け入れ:外国臨床データの幅広い利用を促進するために、薬事規制の医薬品規制整合化国際会議(ICH)のプロセスの枠内で引き続き作業を進める。そして、日本の臨床治験制度のさらなる効率的な利用を促進する。
・ 栄養補助食品の自由化:栄養補助食品の販売規制をさらに緩和する。
☆2002年
日本は従来、医療制度の財政的要求を満たすため、価格の引き下げと患者負担の引き上げを組み合わせて利用してきた。しかしながら現在、日本は医療改革をより包括的なアプローチで行っている。米国政府は、患者の観点や、効率、研究開発、専門化そして革新性の重要性に重点を置くこのアプローチを歓迎する。このアプローチはまた、医療制度のさまざまな分野における異なった価格構造(平均入院日数など)が、どのように相互に影響を与えているか、そして革新的な製品の早期導入がどのようにコスト削減につながるかについて検討する必要がある。
医薬品分野では、日本の医薬品業界の可能性に特に焦点を当てている。例えば、厚生労働省は日本の医薬品業界の構造や、それがより広範な経済成長に与える影響についての重要な提言を発表している。米国政府は、この文書の中で取り上げられている提案についての議論は、将来の革新を促すために必要な資源と動機を創出する価格制度の必要性について、すべての関係者が提言するための重要な機会となっていると見ている。
さらに、医療機器・医薬品に関するすべての制度を規制する薬事法の改定が、制定後40年で初めて実施されている。また、製品審査と臨床治験を管理する規制機関はひとつの機関として統合され、医療機器・医薬品の規制が、開発から最終的な販売承認まで一括して所管されることになる。米国政府は、効率、調和、そして最新の世界科学の理念を取り入れた規制制度を構築するというこれらの取り組みを支持する。また、これらの努力により、日本の規制制度がバイオ・ゲノム時代の新たな課題に適応していくことができる。血液製品を含む、一部またはすべてが生物由来の医療機器や医薬品(バイオ薬品)は、本要望書が今後取り上げていく新たな重要分野である。
■提言の概要
包括的医療改革:包括的な医療改革に関する首相の審議会を設け、外国企業を含むすべての関係者に、意見を表明し議論するための意味ある機会を与える。そのような機関は、全体的なコストを抑制する一方で高齢者に質の高い医療を提供し続けるため、制度全体の効率を高める方策を検討すべきである。
価格算定改革:革新的な医療機器・医薬品が医療制度にタイムリーに導入され、それらの製品が、透明性が高く予見可能な価格算定過程の中で適切な評価が受けられるよう保証する。また、この価格算定過程は将来の開発と革新を促進するものでなくてはならない。
薬事制度改革:国際的に共通する慣行を最大限に考慮し、より迅速でより効率的な製品承認を保証するため、医療機器・医薬品に関する薬事制度の改革を継続する。
バイオ薬品:生物由来製品(医療機器・医薬品)の価格設定が、規制要件を満たすための投資コストを反映し、また、恣意的ではなく科学的根拠に基づいて行われることを保証する。
栄養補助食品の自由化:栄養補助食品の販売規制をさらに緩和する。
☆2003年
日本は、医療制度に非常に大きな負担をかける人口統計上の問題と直面しながら、重要な医療改革を推し進めている。現在の労働人口は退職者1人に対し5人であるが、25年後には、その割合は退職者1人に対しわずか2人となることが予測される。日本はその課題に対し、医療保険制度体系の変革、新たな老人医療保険制度の創設、診療報酬体系の見直しに焦点を合わせた、広範囲な医療改革計画で対応している。また、日本は医療機器・医薬品産業の国際競争力の改善に焦点を合せた「産業ビジョン」という本格的な政策文書を発表した。
米国政府は、医療改革計画と産業ビジョンを、日本が最も革新的な医療機器・医薬品の早期導入を促進することに全力を傾けているという証拠として歓迎する。米国政府は、財政、薬事規制、保険償還、知的財産権の制度を改革することにより、日本が産業ビジョンを政府の政策とするよう求める。
産業ビジョンの中で、価格算定制度改革への包括的な手段を述べている。その中には、業界と医療機器・医薬品の保険償還についての協議をし、革新の価値を認識する価格算定政策を実施することが含まれる。米国政府は、このアプローチを歓迎する。また、米国政府は、日本が診療報酬、長期入院期間、そして、高い医療費など相互の関連性を含む構造的な問題を検討していることに意を強くしている。米国政府は、日本政府に対し、短期的な財政削減を目的として実施され、革新性を減退させる結果となる恣意的な政策を排除するよう求める。
もうひとつの医療制度改革の重要な措置として、日本は薬事法を改正し、医薬品・医療機器の市場導入前および承認を所管する新たな機関を設けた。米国政府は、承認審査の迅速化、医療行政の改善、そして、日本がバイオ・ゲノムの新しい時代に対応できることが期待されるとして、医薬品医療機器総合機構の設置を歓迎する。日本が、信頼性、効率、調和、そして、最新の国際的に認められた科学の理念を取り入れた医療制度の構築に向け努力するに当たり、米国政府は、これらの原則を基に早急に新たな措置を取るよう求める。
■提言の概要
価格算定改革:革新的製品の価値を十分に認める医療機器・医薬品の価格算定ルールを確立し、革新的で安全な製品をより早く必要とする患者ニーズを考慮する。医薬品研究や医療技術の進歩に報酬を与え、促進するため、加算ルールを含む価格算定ルールを最大限に利用する。革新性の価値を罰する、または、認識をしないルールを廃止する。
薬事制度改革:新たに設置される医薬品医療機器総合機構を通して、医療機器・医薬品の承認および市場導入前の期間の迅速化をはかる。同機構が設置されるに当たり、引き続き業界との開かれた対話を続ける。実績、透明性を基準とし、承認過程の速度と質の向上ならびに市場導入後の安全性の改善に直結するような手数料体系を確立する。
血液製剤:需給計画の実施が外国製品を差別せず、価格ルールが公平に透明性をもって適用されることを確保する。
栄養補助食品の自由化:栄養補助食品の販売規制をさらに緩和する。
2に続く~
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Hiroshi | 2008.01.04 20:41
>自民党はもちろん、民主党ほか既存政党から、国益派はほぼ排除されてしまった…
>ドル脱却を目論む国際金融家たちの魔手から日本の資産を守ることはできるのだろうか?
今のようにマスコミに洗脳された状態じゃ、たぶん難しい。
むしろ日本の資産がむしられて殆ど無一文になってようやく気がつくのでは?中南米やイラクぐらいひどい目にあわないとわからないのだろう。