世界の運命は中央アジアが握る！ロシア番外編　～ロシア・プーチンのエネルギー戦略。石油・天然ガスパイプラインの整備で経済破局に備え、破局後の覇権を狙う～

前回の記事(link)で、ロシア・プーチンは、
①上海協力機構に参加し、対NATO対策だけでなく、中国の不法移民対策を画策する。
②経済破局に備え、ユーラシア連合（とその拡大）の実現を目指す。
という基本戦略を取っていることが明らかになった。
では、ロシアの基本戦略を支える力の根幹、原油・天然ガスエネルギーがどのように整備され、今後の基本戦略にどのように組み込まれているのかを確認しておきたい。

■ 欧州向け石油フローの拡大
欧州では、原発の老朽化と3.11福島事故の影響からドイツ・イタリアでは脱原発路線が確定し、フランスが原発維持を堅持するとしても、その将来には懸念が示されるようになってきた。よって、欧州はエネルギー供給の安全保障をいかに確保するかという課題に直面しており、ＥＵレベルでエネルギー政策を急速に発展させる必要性が出てきている。
欧州での1次エネルギー需要において、その7割を占めているのは化石燃料（石油・天然ガス）である。しかし、域内での化石燃料生産量は低下しており、最も信頼出来る供給国であったノルウェーの生産量も低下気味。結果、欧州では他エリアからの輸入依存が急速に強まり始めてきた。
そこに、2006年のロシア・ウクライナガス紛争、2008年のロシア・グルジア紛争で欧州では域内エネルギー供給を安定させる必要性を痛感し、ロシアからのエネルギー供給に積極的となった。

⇒★ロシアのエネルギー戦略と欧州の需要が一致し、ロシアの発言力が強くなってきている。
■ 北東アジア向け石油フローの拡大
ロシアがアジア市場を明確に意識し始めたのは、1990年代末～2000年代始めにかけてである。1998年に民間のYukosが中国向けのパイプラインを構想し、これに対して2000年に国営パイプライン会社Transnetが全行程国内向けの石油パイプライン計画を発表した。
2004年には、プーチン大統領がアジア向けパイプライン構想を打ち出した。こうして、2000年以降、太平洋市場への輸出能力が加わることとなった。こうして、2010年には対太平洋市場において、日量100万バレルの輸出高を実現した。


⇒★プーチンは極東（日本）を引き込もうとしており、ユーラシア連合への取り込みも画策していると考えられる。
■ ロシアの原油で、日本の中東依存度は低下
原油をタンカーで運ぶのに、中東からは20日かかるが、サハリンやナホトカからならほぼ3日で来る。日本近海も安全な海域で海賊等の心配も無く、近距離からの安定的な輸入が実現出来るのが日本としてもありがたい。
また、中東産原油には厳しい規制があり、購入者は転売が出来ないが、ロシア産にはこのような規制が無い等の理由から、日本のロシア原油への依存度は上昇した（逆に中東原油＝アメリカの中東依存度は減少傾向にある。
この、極東に向けた石油パイプラインが構築されれば、日本の依存度は益々上昇すると考えられる。

⇒★日本のロシア原油への依存度が上昇し、逆に中東への依存度が低下し始めた。
⇒★その結果、日本の中東離れ→米国離れが表面化し始めてきた。
■ 朝鮮半島パイプライン構想

2011/8月、金正日総書記がロシア極東を突如訪問し、メドベージェフ大統領と会談した。そして、北朝鮮経由韓国向けガスパイプラインに関して積極的に検討するとした。しかし、同年12月、金正日は心筋梗塞で死去し、金正恩の権力承継が公式に宣言された。
2012/1月 北朝鮮の新リーダーはこのパイプライン事業の実現を約束し、これを受けてロシアのエネルギー省は、パイプラインによる輸送ガス価格の件で、韓国を訪問すると発表。北朝鮮側もパイプラインに関する議論をこれまで通り進めていく方針が明らかになった。
ロシアの北朝鮮に対する態度変更の背景には、対中国で天然ガス交渉が行き詰っているロシアにとって、韓国のガス市場に対するアクセスと北朝鮮に対する経済協力の進展は中国を牽制する手段となり得るからと考えられる。
ロシアにとって、韓国方面への輸出が北朝鮮の暴挙によって遮られたとしても、その量は全体の僅か1/15でしかない。韓国はこのパイプライン計画を念頭に、2008年にロシアと年間100億ｍ3のガスを輸入することで合意している。
⇒★ロシアはパイプラインルート計画を使い、対中国への牽制をしかけている。
⇒★今後、益々パイプラインルートの建設計画を政治的なカードに使用してくるだろう。
■ エネルギー生産国＝消費国⇒経済覇権体制の確立
このように、国際関係の中で石油エネルギーという強いカードを持つ（それしかない）ロシアは、それを強化するパイプラインを様々な国に延ばす形で、その影響を強めていっている。
このパイプライン構想は、現時点でのロシアの影響力を向上させるのはもちろん、経済破局をどのように乗り越えるか？破局後、どういう体制を構築していくか？といった場面でも有効に機能するに違いない。
また、経済破局を見据えるとすれば、その先にはエネルギーだけでなく、通貨をどうする？といった問題は必ず発生する。現段階では、ロシア産石油をルーブル決済に切り替えて手を打つといった方法があるが、それに加えて、ロシアは今、ユーラシア連合の拡大を進めており、これが拡大していけば、同経済圏で原油を生産し、同じ通貨を使う体制が実現することになる。
考えてみれば、これは世界で初めてではないだろうか？
実際、アメリカは基軸通貨「ドル」を供給しているが、そのドルと連動している原油の主要生産国は中東である。そして、ここに大きな「ズレ」が生じる。米国はこの「ズレ」を修復する為、人材・財政支援・軍事等の莫大なコスト支払い、この体制を維持しなければならない。もし、このコストがなければアメリカの財政危機もここまで深刻にはならなかったであろう。
つまり、プーチンは、覇権国アメリカが持つ「通貨供給」と「エネルギー生産」の「ズレ」に目をつけ、この「ズレ」が無ければ、覇権体制を確立し、維持出来ると考えたのだろう。実際、ロシアなら自国で生産、ユーラシア連合域内での消費が可能になる。
今後の経済破局を見据えて先を読むにあたり、ロシアが覇権国家になるべく構想した「パイプライン構築」、「ユーラシア連合」の動きは注目しておく必要がありそうだ。

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List　   投稿者 mtr919 ｜ 2012-08-18 ｜ Posted in 未分類 ｜ 11 Comments »　

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