2008年04月02日
『アメリカの共和党と民主党』11・・・アメリカ移民の歴史(3/3) :まとめ
『アメリカの共和党と民主党』9・・・アメリカ移民の歴史(1/3) :独立~1880年代と
『アメリカの共和党と民主党』10・・・アメリカ移民の歴史(2/3) :1880年代~現代の
まとめです
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■第一期 植民地時代(~1780年代)
・1790年時点で、アングロサクソン・プロテスタントのイギリス系が60%を占める。
(→1900年初めには30%に減る)
■第二期 旧移民時代(独立戦争1799~1880年代)
・ドイツ系(30%)>アイルランド系(28%)>イギリス系(19%)
・イギリス系主流から、ドイツ・アイルランドを主とする西欧・北欧からの移民が主流に。
アイルランドを除いて、主流はプロテスタント。
・この時代の移民の特徴:定住・資産有→中西部の農村地帯に定住。
・カトリックアイルランド系:当時アイルランド人口の半分・貧農→東部の都市→民主党のマシンの基礎となる。
★フロンティアの終了、世界一の工業国アメリカの確立→私権獲得の閉塞までのアメリカは、ここまでの移民が形成
■第三期 旧移民時代(1880年代~現代)
・ドイツ系(17.1%)>アイルランド系(10.0%)>イギリス系(6.5%)
★移民の出身順位は変わらないが、移民人種の多様化→マイノリティの声が大きくなってゆく
・南欧・東欧、カトリック・ユダヤが多い
★対立の時代=都市vs農村、アングロサクソンvs新移民、プロテスタントvsカトリック
・この時代の移民の特徴:生活程度も教養も低い→都市の賃金労働者。
■現在
ドイツ系>アイルランド系>アフリカ系>イギリス系>アメリカ人>メキシコ人>イタリア人
(15.2%) (10.8%) (8.8%) (8.7%) (7.2%) (6.5%) (5.6%)
このなかで、南北戦争時に南部11州のイギリス出身の移民は生粋のアメリカ人であると考えているので、イギリス系+アメリカ人=イギリス系15.9%とすれば、
イギリス系>ドイツ系>アイルランド系>アフリカ系>メキシコ人>イタリア人
(15.9%) (15.2%) (10.8%) (8.8%) (6.5%) (5.6%)
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※表は『社会実情データ図録』さんからいただきました
【イギリス系】
ボストンより北側のニューイングランド+ユタ州(モルモン教が多い)を中心とする地域が多い。
⇒ユタ州は、アメリカ国防省と関係が深い。共和党の牙城!
【ドイツ系】
全土に広がっている。
⇒西部自営農民(資産有、プロテスタント)
【アイルランド系】
ニューヨーク北側。
⇒金融ビジネス。
【イタリア系】
シカゴ、ニューヨーク
⇒東部・中西部の工業地帯の労働者(カトリック)
【ユダヤ系】
⇒第三期が主流で遅れ組のため、産業資本に入り込めず。商業、金融。
【ヒスパニック(スペイン・メキシコ)】
⇒’60年代の黒人の台頭と共に声が大きくなる
このように、各移民の特徴と、分布から見る支持政党は、
イギリス系 → 北部・中西部 → 共和党
ドイツ系 → 中西部・農村中心 → 共和党
アイルランド系 → 東部 → 民主党
アフリカ系 → 東部 → 民主党 ※ただし’60年以降
ヒスパニック → 南部 → 民主党 ※ただし’60年以降
ユダヤ系 → 民主党 ※イスラエル政策など状況により共和党に流れる場合もあり
となっています
ところが、1980年代以降、マイノリティの声が大きくなるにつれ、中心層をおさえておけば勝てる状況ではなくなりました。
また、私権欲求が顕在化した各民族は、自分に都合のいい政策を出してくれる党に流れ、安定支持者ではなくなってしまいました。
その流れを受け、1990年代後半頃からは、民主党から転換した「ネオコン」の登場や、共和党の「キリスト右派」取り込みなど、変容が激しくなっています。
(参照『アメリカの共和党と民主党8』)
そこで次回からは、アメリカ史に戻って、第二次世界大戦以降、アメリカは、そして共和党・民主党はどうなってゆくのかを見ていきたいと思います。
お楽しみに~ 😛