2014年01月06日

農協による農家支配とその突破口

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(画像はこちらよりお借りしました。)
 
前回、「減反政策の歴史を振り返る」を紹介しましたが、減反政策の歴史を調べると、農協の問題に行き着きました。
農業の将来を見据えるに当たり、「農協」の存在を触れずにはいられません。
 
農林水産省によると、農協法では農協の目的として、「農業者の共同組織の発達を促進することにより、農業生産力の増進及び農業者の経済的社会的地位の向上を図り、もって国民経済の発展に寄与すること」と謳われています。
 
しかし実態は、その目的から乖離しており、まさに農業におけるガンのようなものであるとの指摘が各方面から上がっています。
 
そして、TPP問題を契機に、農協の経団連との提携も発表されました。
以下、JA全中会長「農業改革待ったなし」経団連と共同設置の作業部会初会合 より引用します。

経団連とJAグループは11日、国内農業の競争力強化に向けて共同で設置した作業部会の初会合を東京都内で開いた。(TPP)の交渉が妥結すれば農産品の関税削減や撤廃が予想されるため、経済界の持つ技術や流通網、販売手法の生産現場への導 入などで競争力の向上を目指す。政府もコメの生産調整(減反)廃止など農業政策の見直しに着手しており、意見の対立が続いてきた経済界と農業界の本格連携 が軌道に乗れば、農業の改革が加速する可能性もある。
 会合で、全国農業協同組合中央会(JA全中)の万歳章会長は「(高齢化など)われわれは待ったなしの状況に置かれている。(生産者が販売・流通も手掛ける)6次産業化や輸出について情報を交換したい」と述べ、経済界と手を組む意義を強 調。経団連の米倉弘昌会長は会員企業の農業連携が約290に上ることを紹介し、「これまでの取り組みを効率化して強力に推進していきたい」と応じた。

これは一体どういうことなのか、果たして、農協とは何者なのか。
 
今回は、農協の実態に迫りたいと思います。
 

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以下、「システム論アーカイブ~農協は農業に必要なのか(永井俊哉氏)~ 」、および「徽宗皇帝のブログ~農協と経団連の握手~」」より、部分引用させて頂きました。
 
◆巨大な農協が、小さい農家から利益を搾取
・農家は小さいが農協は巨大だ。取り扱う農作物は十兆円を超え、貯金も六十兆円以上だ。こんな巨大企業に独占を許していたら、弱い立場の農家は搾取され放題になる。
・農家が農協から購入する農薬や肥料などの資材はかなり高額で、例えば、全農を通じて国内メーカーから購入する肥料の価格は、同じメーカーが輸出する肥料の価格の三倍もする。
・肥料価格安定臨時措置法が制定された六四年には、国内向け価格と輸出価格はほとんど変わらなかったが、この価格カルテルを認めた臨時措置法がその後全農の働きかけで計六回も延長された結果、日本の農家の七割が使わなければならない肥料の価格は異常な高値となってしまった。
・本来農協は農民のためにメーカーに対して価格引き下げ交渉をしなければならないはずなのだが、逆に指定してやったメーカーからリベートをもらって価格をつり上げる。リベートの割合は、農薬の場合売上高の15%程度で、全農の懐に落ちる農薬のリベート総額は、年間二百八十億円と計算される。日本の農業が過剰な農薬と化学肥料で汚染されているのは、それらを売れば売るほど農協が儲かるからだ。
・農協が農家に売りつけるのは農業資材だけでない。販売手数料などの収入が落ち込むと、農家を戸別訪問し、生活指導と称してエアコンや宝石やソーラー温水器などなど農業とは関係のない物品を押しつけ販売する。
 
 
◆農家が農協に抵抗すれば村八分
農民の中には、特別栽培米を手がけて消費者に直接米を販売したり、農業資材を海外から直接輸入したりして、コストダウンを計るところが出てきている。だが農協からすれば、農家の農協離れは手数料収入の減少につながるのでおもしろくない。品質検査をわざと遅らせたり、プロパンガスの供給を止めたり、融資の回収を迫ったり、補助金の支給を拒否したりといった陰湿な村八分で自立しようとする農家にいやがらせをする。
 
 
◆農家が減少したにも関わらず、農協の組合員数が増加しているという不思議
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(画像はこちらよりお借りしました。)
農家は減っているが、農協の組合員数は准組合員の増加によって増えている。特に大都市では、准組合員が半数以上になっている。
また本来の組合員の方でも農業の副業化が進み、農家総所得に占める農業所得もわずか17.5%に過ぎないようになってしまった。それに伴って農協は、事業のウェイトを農業外に移しつつ規模を拡大してきたわけだ。
農民にしても農協は収入が安定した魅力的な転職先だから、職員数はどうしても増えてしまう。
今日農協信用事業を主として支えているのは、農業所得ではなく、兼業先の給与、家賃などの農業外所得や年金あるいは農地売却代金などで、また農協の農業資金向け貸付けも、全体の2割程度だ。こうした傾向は望ましいことではない。
 
 
◆二流金貸しに成り下がった農協が、世界の金貸しに騙された「住専問題」
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農協が本業を逸脱して起こした一番有名な事件は住専問題だ。バブル崩壊後、総量規制の対象外だった農協マネーが銀行の子会社であった住専を通して不動産投機に使われ、不良債権化し、住専の経営が行き詰まって明るみに出てきた。
政府の住専処理策では、農協系金融機関の負担額は、1兆2100億円だったが、農協系組織が加藤紘一氏をはじめとする農政族議員を総動員して負担を5300億円に減らし、不足分6800億円に住専処理機構運営費50億円を加えた額を公的資金で穴埋めすることにした。
結局住専設立母体行が貸付債権を全額放棄したのに対して、農協系金融機関は元本の9割を回収することに成功した
 
 
◆利益を求め、経団連にすり寄る農協
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冒頭の、JA全中会長「農業改革待ったなし」経団連と共同設置の作業部会初会合 で紹介した通り、農協と経団連の連携が発表されました。
 
日本の農業に経団連が入ってくるのは、最初から殺人者を医者として扱うようなものではないか。「6次産業」などと耳触りのいいことを言うが、それができるのは大資本でしかない。小規模農家は大資本の下請けの下請けになるしかないだろう。その構造の中で 下請けや孫請けが搾取されずにいられるはずがないのは、たとえば原発労働者の給与の中抜きを見れば一目瞭然ではないか。「農協が経団連の下部組織になった」ということだと見える。
 
私も、農協の経団連との提携は、農協が経団連に魂を売ってしまった言っても過言ではなく、日本の農業に対する破壊行為であると思います。
 
このようになったのは、農協の出自そのものにも問題があります。

  
◆富裕層を中心に発足したのが原点

RIETI:山下一仁氏より)
農協は本来、直接民主主義に基づく組織であり、農協組合員の意思決定に基づく運営を基本としている。しかし、日本の農協のそもそもの生い立ちを振り返ってみると、必ずしも下からの発意=組合員の意思で始まったとは言えない経過をたどっている。
 
農協組織の起源は1900年の産業組合法に基づく組織「産業組合」で、これが農協の前身となった。この組織は当初、地主と上層農を中心にした信用組合だった。当初は信用事業と他の事業の兼営は認めず、のちに購買、販売、利用、信用の4つの事業ができるようになったが、ほとんどの組織が信用事業だけを行っていた。しかも当時、零細な農家は加入せず、富裕階層農家を中心として発足した。これが日本の農協の原点となっている。その後、農業恐慌が勃発した。そこで1932年、時の政府は産業組合を使って農業恐慌を克服しようとした。5カ年計画で産業組合に農家を全戸加入させ、信用事業だけでなく、販売、購買、農協施設利用の4種すべてを行わせた。ここに全農家を組織し、かつ農業・農村に関するすべての事業を営む総合農協の原型ができ上がった。

 
 農協とはそもそも、農地解放と言いながら地主達が特権を継承する場として、作られました。しかし本質は、農家=小作という存在であり、農家の儲けの上前をはね取る搾取対象であるという意識が残存しています。
 
その結果、先に説明した通り、農協のやりたい放題となっているのが現状です。
農協とはもはやリベート産業であり、農協の歴史とは、農民を裏切り続けてきた歴史であると言えます。
一方で、農協は今や日本の農業に必要とは言えない存在に成り下がってしまい、世代が代替わりする中で、農協の運営も資産をどう運用するかにその中心軸が移ってきました。
 
しかし、所詮は二流の金貸しであり、世界の百戦錬磨の金貸しに騙されて、大きな損失を出したのが、住専問題であると言えるのです。
そして農協は、いまや経団連にすり寄って、生き延びようとしているのが実態です。
このような農協は、今や百害あって一利なしという存在となっているのです。
 
 
もはや、農協に期待してはいけないことは自明です。
では、脱農協は可能なのでしょうか。
 
 
◆脱農協により農作物価格が数倍に
毎年集荷手数料約300億円の他、実態不明のリベートや奨励金などが、全農系の手に落ちるが、この費用をもっと圧縮することはできないだろうか。
日本の米の小売価格は、外国と比べて10倍高いと言われているが、小売価格は農家の出荷価格より10倍高いわけだから、農家→農協→経済連→全農→卸売業者→小売業者→消費者という従来の食管法のルートを短縮すれば、日本の米も価格面で競争できるようになる。
 
このように考えれば、脱農協に可能性がありそうですが、問題は農家側にもあります。
 
多くの農家は、国からの補助金にあぐらをかき、経営者としての意識が希薄であるため経営感覚もない、自ら消費者のニーズを掴もうともしない、当然、新たな企画を立案することもないというのが、これまでの実態です。これでは、活力も上がらないし、成果が出ないのも当然です。
脱農協だけでは、突破口にはなり得ません。
 

いま農業は全体として見渡せば衰退傾向にあり、いわば斜陽産業だ。しかし、そうした中でサクセスストーリーがたくさんある。売上高1億円以上という農家も出現している。そうした農家は農協任せにしないで、自分で資材を調達し、自分で販売している。(RIETI:山下一仁氏より)

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(画像はこちらよりお借りしました。)
 
今や、意識生産の時代であり、農業も6次産業としての意識が必要です。自ら、安心安全を求める社会の意識をつかみ取り、顔が見える農業へ移行するなど、農家自身が意識を転換し、これらを実現できることができれば、今後の日本の農業に可能性が開けるのではないでしょうか。

List    投稿者 kumasuke | 2014-01-06 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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