2009年05月23日

『近代国家成立の歴史』まとめ2 市場拡大を通じて覇権を達成したオランダ・イギリス

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■オランダ・イギリスが大航海に乗り出した背景
5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~
十字軍遠征の失敗により、イスラム帝国に主要な交易路を押さえられていたヨーロッパは、世界史的に捉えれば片田舎に過ぎませんでした。そのままでは市場拡大の可能性が閉ざされてしまうヨーロッパは、新たな原資と交易路開拓のため大航海に乗り出していきます。大航海時代初期は、ローマ=カトリック教会の許可があって初めて出航できたため、カトリック教会支配の強いポルトガルとスペインがいち早く大航海に乗り出します。
しかし、宗教改革以後、オランダ、イギリスと、カトリック教会に支配されないヨーロッパ諸国が誕生し、教会の許可無くこぞって大航海に乗り出していきました。宗教改革は、市場拡大を目指すオランダ、イギリスにとっても都合のいいものだったのです。
■近代民主主義国家の原型は、商人国家・オランダ
6 自治権を獲得したオランダ商人 
7 商人が国家をつくる
2度の宗教改革によって登場したピューリタントは、利益蓄積を正当化していたため、交易が盛んな地域で広まり、新興商人の圧倒的な支持を得ていきます。そして、ヨーロッパ内に一大潮流を作り出し、とうとうネーデルランド共和国(オランダ)という商人国家を作り上げるまでに至ります。
こうして誕生したオランダは、やがて世界の流通・金融の中心となっていきます。オランダの貨幣は、世界のどの通過よりも信用が高くなり、貿易における最大の武器となりました。また、オランダ・アムステルダム銀行は、あらゆる通貨での預金を認めたため、世界中の商人の預金が集中し、貿易決済銀行として機能し始めます。また、この莫大な預金をヨーロッパ中の企業に貸し付けていったため、オランダは絶大な力を持ち始めます。
商人自身が作った国家ということもあって、ネーデルランド共和国(オランダ)はわずかな軍事力しか持たなかったにも関わらず、当時のヨーロッパで強力な力を持つに至ります。最先端の造船技術と航海技術を用いて世界各地に進出し、最先端の金融技術を用いてヨーロッパ各国に強い影響力を持つようになります。商人国家・オランダは、市場拡大を通じて覇権を達成したのです。
■イギリスの議会制民主主義は、オランダから輸入されたものだった
8 オランダ商人が作った近代国家イギリスと、最大の特権=通貨発行権を獲得したイギリス商人
この経済覇権国家オランダの影響を強く受けて、イギリスが力を付けていきます。イギリス革命の主役となったのが、ピューリタントの中商人たちでした。
彼らはイギリス国家に、自分たちを政治体制の一部として組み込み、オランダと同様の政治体制=議会制民主主義を取ることを要求し続けます。これが立憲君主制を成立させていきました。 「国家権力の濫用を防ぐ」という名目で登場した三権分立の実態とは、国家権力の一部を金貸しが運用できるようにした制度に他なりません。
オランダ、イギリスと相次いで成立した国王の力が弱く議会の力が強い『立憲君主制』の国家において、世界をまたに駆ける商人たちも(国王によって財産を剥奪される危険がなくなり)安心して商業拡大→利益蓄積を続けることができるようになりました。
■議会が将来の徴税権を担保に国債を発行
9 金貸しが支配するイギリス帝国へ
国家のあり方が大きく変容したため、国家の金の借り方も大きく変化していきます。戦争を遂行するために必要な資金も、それまでのように国王が私的な借金として借りるのではなく、議会が将来の徴税権を担保に借りるようになっていったのです。
この仕組みにより、債務不履行のリスクも減少し、ほぼ無制限に国債発行が可能となります。そして大量の国債発行を可能とするため、逆に商人から国家への大量貸付を実現するために、商人それぞれが国家に金を貸すのではなく、商人が結託して作った巨大銀行から金を貸し付ける仕組みを作り上げます。それが、中央銀行制度でした。
将来の徴税権を担保に発行された国債は、リスクが低いと判断され、商人たちにも人気の債券となります。商人たちがこぞって購入した為、低金利の国債がヨーロッパ中で取引され、現在の金融経済システムの基礎を作ることになりました。
こうして中央銀行制度が確立され、国家はほぼ無限に金を借り戦争を続けることができるようになりました。この中央銀行制度をいち早く確立したイギリスは、大量の国債を発行して資金を確保し覇権闘争=戦争を勝ち抜き植民地を拡大、やがて覇権国家となっていきます。
(つづく) 
ないとう@なんで屋でした
※『近代国家成立の歴史』シリーズの過去ログです。
 『近代国家成立の歴史』1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~
 『近代国家成立の歴史』2 国家と教会の結託 ~ローマ帝国を事例に検証する~ 
 『近代国家成立の歴史』3 教会支配の拡大と金貸しの台頭
 『近代国家成立の歴史』4 教会と結託した金貸し支配の拡大~宗教改革~
 『近代国家成立の歴史』5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~
 『近代国家成立の歴史』6 自治権を獲得したオランダ商人
 『近代国家成立の歴史』7 商人が国家をつくる
 『近代国家成立の歴史』8 オランダ商人が作った近代国家イギリス
 『近代国家成立の歴史』9 金貸しが支配するイギリス帝国へ
 『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか?
 『近代国家成立の歴史』11 国家と個人を直接結びつけたホッブス
 『近代国家成立の歴史』12 個人の「所有権」を最大限認めたロック
 『近代国家成立の歴史』13 私権社会を全的に否定できなかったルソー
 『近代国家成立の歴史』14 そして、市場拡大を第一とする国家理論が出来上がった
 『近代国家成立の歴史』15 市場拡大を第一とする国家アメリカ合衆国~独立戦争開始まで~
 『近代国家成立の歴史』16 世論を背景としたアメリカ独立戦争
 『近代国家成立の歴史』17 司法権力社会アメリカ
 『近代国家成立の歴史』18 新たな私権獲得の可能性「フランス革命」

List    投稿者 tnaito | 2009-05-23 | Posted in 未分類 | 1 Comment » 

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コメント1件

 kenya | 2009.09.08 20:00

ロスチャイルドがFRBを中心とした金融機関を支配していると言われていますが、ドルの信認性は失墜状態になりつつある。金主がより安全なもへのシフトがGOLDを高騰させているのでしょう。
日本も中国もドルからGOLDへの動きはないのだろうか。

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