『近代国家成立の歴史』まとめ1 国家と教会
1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~
株価暴落・現物価格高騰や国家による借金の増大など、様々な「経済問題」が噴出しています。ここで、経済及び市場の問題を考える上で欠かせないのが、国家と市場の関係です。 「国家」とは、何なのでしょうか?
現在の国家、つまり近代国家(と近代市場の関係)は、突然登場した訳ではありません。ある社会状況の下で、作り出されたものです。そして、現在の“アメリカ発金融危機”は、近代市場の末期的症状であると共に、近代国家の末期的症状でもあると言えそうです。ネットサロンで追求した議論を元に、シリーズ記事として、この『近代国家成立の歴史』を紐解いてきました。
■統合するための観念の必要 ローマ帝国のキリスト教国教化
2 国家と教会の結託 ~ローマ帝国を事例に検証する~
今から約5000年前に誕生した古代国家は、「武力支配国家」と言われるように、絶対的な力=武力による序列原理で統合された国家です。しかし、結局は武力によって皇位が決まっていたため、皇帝の暗殺→帝位の転覆が繰り返され、政治的には極度に不安定な状態に陥ります。
政治的な不安定さにより、皇位継承のためのルールを作る必要に迫られます。そこで、庶民に急速に広まっていたキリスト教を国教とし、王は神の代理人=キリスト教の教皇によって任命されることとし、支配の正当性を確立しました。
奴隷身分から誕生→拡大していったキリスト教も、序列体制が強固になるにつれ非現実の世界に可能性を求める人が増えた結果、奴隷以外の身分にも広まっていました。キリスト教による支配の正当化は、序列支配が強固になればなるほど、キリスト教によって任命された皇帝の支配の正統性がより多くの人に認められるという二重性を持ったものとして、以後普遍的なヨーロッパ世界の皇帝のあり方となっていきます。
■教会と結託した金貸しの存在
3 教会支配の拡大と金貸しの台頭
教会のお墨付きによって国王になる訳ですから、宗教(教会)の力が拡大し続けます。とうとう、宗教(教会)が国家を動かし、十字軍遠征が実行に移されます。
農業技術革新による生産力の増大によって戦争を起こす余力がうまれた事を背景に、教会支配は進化し、教皇の権威をさらに拡大させたい教会が、聖地エルサレム奪還という宗教的観念支配によって、略奪による私権拡大を正当化。私権拡大の可能性に突き動かされた諸侯たちが行動に移したという構図が十字軍遠征からは見て取れます。又商人達もそれに乗じて私権拡大狙っています。
私権拡大という目的のための国家と教会の結託が十字軍遠征を生み、それが教会に寄生した商人階級(ex.ハプスブルグ家、フッガー家)の台頭を招きました。
■贖宥状(免罪符)の発行は、金貸しが主導した
4 教会と結託した金貸し支配の拡大~宗教改革~
相次ぐ戦争は教会の財政を圧迫し続け、資金繰りに行き詰ったローマ=カトリック教会は、金を集めるため贖宥状(免罪符)の発行に踏み切ります。この免罪符発行をそそのかし、実際に販売していたのが、教会と結託した商人・フッガー家でした。
■金貸しの世代交代を生んだ宗教改革
5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~
しかし、免罪符販売の中心地域だったドイツ民衆の反発が強まり、その反発を背景にルターの宗教改革が始まります。
「宗教改革」と言われるこの出来事によって、ローマ教皇を頂点とするカトリック教会支配体制が否定され、古代宗教・キリスト教による秩序が崩れ始めます。続いて登場したカルヴァンは、必要以上の金は教会に寄付すべきという従来のカトリックの規律を明確に否定した上で、禁欲・勤勉を推奨し個人の利益蓄積を正当化しました。そのため、カルヴァン派は新興商人が多い地域で爆発的に広がっていきます。こうして私権獲得を止揚し秩序化してきた古代宗教のタガが外れ、私権獲得の可能性が一気に開かれました。
この「宗教改革」によって、ローマ=カトリック教会の権威が失墜し、カトリック教会に任命されることでその正当性を保持してきた国王が没落していきます。また彼らに金を貸すことで勢力を拡大してきた大商人も、彼らに借金を踏み倒され没落していきました。
そして、それまでの大商人が没落し、新しい商人勢力(≒キリスト教新派閥=プロテスタント)が台頭してきます。従来のローマ=カトリック教会支配から脱した新興商人は、商人国家オランダを作り上げるまで勢力を拡大したのでした。
(つづく)
ないとう@なんで屋でした
※『近代国家成立の歴史』シリーズの過去ログです。
『近代国家成立の歴史』1 はじめに ~市場拡大が第一の近代国家~
『近代国家成立の歴史』2 国家と教会の結託 ~ローマ帝国を事例に検証する~
『近代国家成立の歴史』3 教会支配の拡大と金貸しの台頭
『近代国家成立の歴史』4 教会と結託した金貸し支配の拡大~宗教改革~
『近代国家成立の歴史』5 国家と新しい商人の台頭 ~宗教改革~大航海時代~
『近代国家成立の歴史』6 自治権を獲得したオランダ商人
『近代国家成立の歴史』7 商人が国家をつくる
『近代国家成立の歴史』8 オランダ商人が作った近代国家イギリス
『近代国家成立の歴史』9 金貸しが支配するイギリス帝国へ
『近代国家成立の歴史』10 近代国家の理論的根拠=社会契約説とは、何だったのか?
『近代国家成立の歴史』11 国家と個人を直接結びつけたホッブス
『近代国家成立の歴史』12 個人の「所有権」を最大限認めたロック
『近代国家成立の歴史』13 私権社会を全的に否定できなかったルソー
『近代国家成立の歴史』14 そして、市場拡大を第一とする国家理論が出来上がった
『近代国家成立の歴史』15 市場拡大を第一とする国家アメリカ合衆国~独立戦争開始まで~
『近代国家成立の歴史』16 世論を背景としたアメリカ独立戦争
『近代国家成立の歴史』17 司法権力社会アメリカ
『近代国家成立の歴史』18 新たな私権獲得の可能性「フランス革命」
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