2013年02月24日

次代に求められる共認形成力とは 第8回~日本企業に向けられた最先端の期待~

今回のシリーズでは「次代が求める生産力=共認形成力をテーマに、その能力について追求しています。
 
~プロローグ~
第1回~共認とは何か?~第2回~私権時代の共認の中身とはどのようなものか~
第3回~世界的な本源回帰の潮流と世界を先導する日本への期待~
第4回~共認形成力の根幹、共認回路を育む日本の子育て~
第5回~幼少期の“遊び”の本質とテレビ脳の危険性~
第6回~「自らが村を守ってゆく自主性」を育んだ共同体教育とは~
第7回~共同体の集団統合=全員一致とはどのようなものか~
 
今回のテーマは「日本企業に向けられる最先端の期待」です。
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「実現論:序2.私権時代から共認時代への大転換」より
【私権原理から共認原理へと転換】
70年以降、最も深い潜在思念の地平で、日本人の意識は次々と私権収束から脱して共認収束を強めていった。この共認収束の潮流は、半世紀以上は続く大潮流であり、現在は転換の途上であるが、すでに10年以上前から、大多数の人々にとって、周りの期待に応える充足こそが、(私権充足に代わる)最大の活力源になっており、いまやこの期応充足の土壌から生み出された課題収束が、最先端の意識潮流として、顕現している。
さらには、このような共認収束の大潮流の中から、共認原理に則った戦略・体制に舵を切る(共同体を志向する)企業も次々と生まれてくるようになった。
 
【必要なのは地に足をつけた共同体企業の建設】
今必要なのは、遠く離れた抽象的な「社会」ではなく、現実に密着した生活の拠点たる職場を共同体に作りかえること、つまり、企業の共同体化である。この企業の共同体化から、地に足をつけた新しい共同体社会の構築が、着実に進行してゆく。

 
 
共認収束⇒共同体志向が加速していく時代。これは日本に留まらず、今後100年は続く世界的な大潮流です。そして「日本企業」にこそ、この潮流をより具体的な形にしていく先導役たり得るのではないかという提起です。
 
そして共認収束の先にある最先端の期待、すなわち日本企業に向けられた最先端の期待とは「共同体化の実現」にあります。これこそが共同体社会実現の第一歩となります。
 
企業を共同体化するというと、非常に壮大な話のようにも感じてしまいますが、実は日本の企業と共同体とは深い関わりがあるのです。
 
 

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■「老舗企業大国」日本
 
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上記の表からもわかるように、日本の老舗企業数は世界と比較しても群を抜いています。
またグラフからは、老舗企業は都心だけでなく全国各地に存在していることがわかります。
 

「老舗企業の技術革新・・・「老舗企業大国」日本(1/3)」より
我が国は、世界で群を抜く「老舗企業大国」である。創業百年を超える老舗企業が、個人商店や小企業を含めると、10万社以上あると推定されている。その中には飛鳥時代、西暦578年に設立された創業1400年の建築会社「金剛組」だとか、創業1300年になろうかという北陸の旅館、1200年以上の京都の和菓子屋など、千年以上の老舗企業も少なくない。

 
 
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なぜ、これほどにまで老舗企業が多いのでしょうか。
 
■長寿企業の秘密は社会的役割意識
 

「長寿企業の秘密は社会的役割意識」より
創業1400年という企業もあるが、たかだか100年前に創業した企業にしても、村落や都市の共同体の中で生まれたことになる。また、資本主義や近代市場が成熟する以前の話なのでその規模は小さい。そして、その企業が存続するには、川下の問屋、小売、消費者、だけではなく、川上の原材料の供給者、中間加工を依頼するなどの企業など、数多くの地域内の小集団との関わりが必要だった。
 
とりわけ、村落共同体内では、原材料供給から加工生産、そして小売までが社会的分業として完結し、それぞれの役割を果たすことで、村社会は成立していた。ここには、現代の市場社会のような、利益を多く取った方が勝ちという意識はなく、村全体が潤いそれぞれの役割が持続されることに最大に価値がおかれていた。
(中略)
つまり、彼らはなぜ、こんなに長く活動を続けてこられたのか?の答えは、『社会的役割を果たすため、存続すること自体に価値を置いていたから』ということではないだろうか?

 
 
日本が、世界でも稀に見る本源性(共同体)を維持してきた国であることは『時代に求められる共認形成力とは 第3回~世界的な本源回帰の潮流と世界を先導する日本への期待~』で見てきた通りです。
日本の企業はそれら村落共同体の内から生産集団として生み出され、村落共同体の本源規範を下敷きとした企業理念、体制規範、行動規範を基に生産活動を続けてきたのです。
 
 
江戸時代の「イエ」が、まさにその象徴的事例でしょう。
  

「江戸時代の思想7 イエという経営体(共同体)を母胎に観念追求がなされた江戸時代」より
●世俗的な秩序化-イエ
士農工商という身分の相違にかかわらず、人々の生活はイエを単位に営まれ、芸能の世界で擬制的なイエ制度(家元制度)が確立していった。そこでのイエは、中国や朝鮮の「家」が男系の血縁集団であるのとは異なり、家職・家業や家産・家名などの維持と発展を目的とする経営体としてのイエである。経営体としてのイエの特質を示すものは独特の養子制と隠居制であって、イエの維持と発展のために、優れた後継者を養子として迎える一方、活力の衰えた家長は隠居として退くのである。
(中略)
つまり、日本のイエとは、経営体・生産体である。そこで何よりも大事なのは家業が存続し発展することであって、血統は二の次である。これが、父系の血縁の存続を絶対課題とする中国や朝鮮の父系観念と全く違う点である。あるいは、明治初年に洋行から帰国した森有礼は「実は、血統を重んじるのは欧米人の方だった」と記している。
つまり、日本における経営体・生産体としてのイエは共同体の末裔であって、中国・朝鮮や西洋の父権血縁集団とは似て非なるものである。イエとは江戸時代の共同体企業(家業)であると言っても過言ではないだろう。

 
 
 
あるいは、江戸時代の商人の家訓からも、その本源性を垣間見ることができます。
 

近江商人の「三方よし」の起源は江戸時代中期の近江商人である中村治兵衛が孫に残した書置きにあるとされ、そこには「たとえ他国へ商内に参り候ても、この商内物、この国の人一切の人々、心よく着申され候ようにと、自分の事に思わず、皆人よき様にと思い」とあり、自分の事よりもお客の事を考え、みんなの事を大切にして商売をすべき、という風に書かれています。

 
 
 
一方、欧米諸国の企業のルーツはどのようなものでしょうか。世界初の株式会社と言われている東インド会社の例を見てみましょう。
 
■世界初の株式会社は略奪集団発

イギリス東インド会社は、産業革命と前後してインド征服と中国へのアヘン売り込みとやりたい放題始めます。東インド会社の成功を見たイギリスの他の商業資本も、東インド会社の独占貿易を崩して進出しはじめます。
 
イギリス国内で茶の需要が急増すると、イギリスは銀を代価としていたので、中国への銀支払いが急増します。そこで目をつけたのがインド産アヘンです。
インドに対して、イギリスから機械織りの綿製品を輸出し、その代金でインド産アヘンを買い、そのアヘンを数倍の値段にして中国に売りつけます。
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さらに中国がアヘン禁止令を出すと、イギリスは中国に開国と自由貿易を強要するべく戦争を仕掛けます。
この戦争に敗れた中国(清)はイギリスに香港を割譲、賠償金を支払い、福州や寧波などの五港の開港を認め、貿易を認めさせられました。

 
株主の利益を第一価値とし、そのためなら平気で他国を食いつぶす。株式会社の起源は略奪集団発だったのです。
 
欧米企業に象徴的なM&A(企業買収)や大幅な人員削減(リストラ)などは、まさにその典型でしょう。
逆に日本の悪しき風習として欧米から徹底的につぶされた「終身雇用」や「企業内組合」「談合」などは、古来からの共同体(成員)の存続、共存を旨とする共同体発の本源規範に基づく仕組みだったのです。
 
略奪集団発と共同体発。現代でもその違いはわかりやすく現れています。
 
***
 
 
ここまで見てきたように、日本の企業は共同体から生まれたものであり、そして未だ数多く存在する(老舗)企業群を中心に、その本源性が色濃く残存しているのです。
 
つまり、現代における「企業の共同体化」とは、その本来の形に回帰していくことを意味しており、欧米(略奪集団)発の私権制度を無理やり導入することに比べて、はるかに容易なことであるという認識が、今我々に必要であるように思います。
 
加えて、世界的な本源回帰の潮流からも、日本企業に対する共同体化の実現に大きな期待がかかっているのです。
 

List    投稿者 yankaz | 2013-02-24 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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