【仮説】戦争は儲からなくなったのでは?
※このグラフは「Historical Tables, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2008」のデータより作成
9月5日の記事「ドル支配の基盤は軍事力では?~軍事力本位制仮説」で、ドルの価値を裏付けているのはアメリカの軍事力ではないか?という仮説が出てきたところで、続けて武力とお金との関係を追求していきたい。
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『ドル覇権の崩壊』(徳間書店)で副島隆彦氏は次のように書いている。
2003年3月かのイラク戦争で、アメリカは、たしかに、世界の原油の11%の埋蔵量を持つイラクの石油を自分のものにした。このように、戦争をすることのほうが、国民が勤勉に働き世の中の必需品を地道に生産して販売することよりも、ずっと手っ取り早く、「合理的な代替手段」である。
(歴史上の帝国を見ても)外国を征服することは、母国にゴールドなどの財貨だけでなく、直接サービスを提供する奴隷をももたらした。さらに侵略して、征服した土地でそこの国の人々から税金を取り立て属国として管理、運営することも帝国建設の動機となった。
さらに副島氏は『戦争経済に突入する日本』(祥伝社刊)で「戦争も公共事業の一種(公共”破壊”事業)であり、日本も戦争経済による統制国家に突入している」と書いている。
戦争が最も儲かる事業という認識。これは卓見である。
市場拡大の原理として4つある(8/11なんでや劇場「ブログ『晴耕雨読』の市場論に学ぶ」の論点)
①戦争による掠奪
②だまし共認の形成
③科学技術の発達→生産効率の上昇
④勤勉性
①~④では、「生産性」の高さに大きな差がある。
相手にこの品物が大きな可能性を与えてくれると信じ込ませる(=騙す)ことさえ出来れば、額に汗して働くよりも交換によって得る益の方が、はるかに大きい。しかし、それよりも戦争による掠奪の方がはるかに「生産性」は高い。「生産性」の高さは、①戦争による掠奪>②だまし共認>③科学技術→生産効率の上昇>④勤勉性の順である。
ここまでは副島隆彦氏の指摘する通りである。
しかし、それは過去の話なのではないだろうか。
9月19日の記事「米国一極支配の崩壊①~米国経済データより~」に、貴重なデータが掲載されている。
※このグラフは「Historical Tables, Budget of the United States Government, Fiscal Year 2008」のデータより作成
1960年代まではアメリカの財政支出の大半が軍事費で占められているが、1970年前後を境に軍事費と社会保障費の割合が逆転(このとき、ちょうど40%)。そして、その後も社会保障費の割合が増加し続け、1996年以降は財政支出の60%超に達している。一方、軍事費は2002年以降若干増加しているが、それでも財政支出の20%にすぎず、長期的に見れば低落傾向にあることは間違いない。
このアメリカ財政支出の長期トレンドが意味するのもは何か? 一つの仮説が浮かび上がる。
1970年までは、金融資本(FRB)にとって戦争は一番儲かる事業であった。
ところが、1970年以降は軍事に対する投資効率が落ち、儲からなくなったのではないか。社会保障(福祉)が一番儲かる事業になったからこそ、軍事費の比率が下がり、社会保障費の比率が上がっているのではないだろうか。
このデータから、デビッド・ロックフェラーVSジェイ・ロックフェラー+ロスチャイルド連合の争いの趨勢も占うことができるだろう。8月24日の記事「自民大敗の背後にあるもの~アメリカ闇の勢力の路線対立」参照。
デビッド・ロックフェラー派(とアメリカ共和党勢力)は軍事力によって石油利権とドル支配の延命を目論んでいるようだが、長期的にその凋落は避けられない。軍事力という不採算事業を看板にしているのだから。それに対して儲かる事業(社会保障=福祉)を抱えているジェイ・ロックフェラー派(とアメリカ民主党勢力)が勝利するのは必然である。
では、戦争⇒軍事力は儲からなくなり、それに代わって社会保障が儲かるようになったのは、なぜか?
次回以降、この仮説を検証したい。
(本郷猛)
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コメント6件
匿名 | 2007.10.17 22:28
敵対的M&Gって何?
匿名 | 2007.10.18 5:49
敵対的M&Gって何だろうか?
1990年初頭とはバブル経済崩壊までのことか?
良くわからないが、多分、マネーゲームではなかろうか?敵対的マネーゲームで企業買収などのことか?地上げか?良くわかりませんが・・・
通じない言葉は説明がいりますね。
匿名 | 2007.10.18 10:46
M&Aの間違いでしょう。
モンクレール ダウン 2014 メンズ | 2013.10.16 17:43
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くまがわ直貴 | 2007.10.17 19:19
日米両国民が、レーガノミックス以降の経済において敢えて見ない様にしている現実というのは、「お金はある一定の範囲内を廻り回っている」という小学生にも分かる論理です。
マネーゲームに狂奔する我が国のヒルズ族や、『L&G』の円天事件とも深い地下水脈で繋がっているはずです。
1990年代初頭まで、我が国の銀行が企業の敵対的M&G資金を融資していた現実は今もう一度見直されて然るべきだと思います。