医療機関が保険会社の下僕になる!
9月22日に「米国の医療保険会社が日本市場を狙う理由」というタイトルで、京都大学名誉教授 本山美彦著の『姿なき占領ーアメリカの「対日洗脳工作」が完了する日』ビジネス社発行を紹介しましたが、今日はその続きを紹介したいと思います 😮
今日はタイトルのように「医療機関が保険会社の下僕になる」についてです。
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日本にマネージド・ケアが導入されると、医療機関は、医療を提供するだけの商品供給者になる。しかも、その価格は保険会社によって決められてしまう。医療サービスという名の医療商品の内容は、保険会社が、こと細かく指定する。
保険会社がまず企業に保険を売る。保険料が安ければ安いほど、保険は売れる。契約する企業も安いほど助かる。保険会社は安く売るために、安い価格で医療サービスという商品を売ってくれる医療機関や医師を捜し出す。あるいは、薄利多売ということで、大量の契約(大量の患者)を提供できるシステムを作り出そうと、なるべく多くの企業や個人の保険契約者を確保しようとする。医療サービスという商品を提供する羽目に陥った医療機関は、医師の数、看護師の数、受付の数をぎりぎりまで減らそうとする。
こうして、医療内容が悪化する。市場競争にさらされれば、医療の効率が上がるというのは嘘だ。医療機関にとって巨大な保険会社は上得意である。大きな力を持つ大手保険会社の言いなりにならなければ経営が成り立たない。
日本は、国民皆保険である。これはすばらしい制度であり、日本の貴重な財産である。米国が逆立ちをしても真似のできない貴重なものである。それを日本政府は、医療費の高騰を理由に捨て去ろうとしている。医療に市場原理を導入するとして医療保険を民間会社に委ねようとしている。市場原理を口実として、「公」の世界を「私」の世界に開放しようという米国企業の圧力に押されて、日本の医療政策の大転換が起ころうとしている。
マネージド・ケアになれば、人々は個々に、医療保険を商品として提供する民間保険会社から購入しなければならない。従業員を雇う企業も、従業員福祉の一環として民間の医療保険会社と保険契約を交わし、従業員と保険料を折半しようとする。
このようなシステムが作り出されると大変なことになる。国民皆保険の場合は、治療の判断をするのは現場の医師である。公的に認可された医療内容であるという制約はあるものの、認可されているものであれば、どのような治療も許される。医師や医療機関が実際に講じた医療サービスの内容の保険点数を計算して、国、共済、企業の保険組合に申請して、料金を請求する。つまり、出来高払いである。こうした制度は、保険が公的なものだから可能になる。出来高払いであるために、医療機関はなるべく保険の点数を上げるために、多くの治療を施す。公の機関が、つまり、公的機関の保険担当部局が医療内容の適切さを監視する。あるいは、保険点数の見直しをする。もし、医療保険が民間で行われるようになってしまうと、医療費を支払う民間会社では業務の煩雑さに耐え切れなくなる。そもそも、出来高払いなど民間会社が許容できるものではないのだ。
民間会社に医療費の支払いを任せたら、医療機関による医療費の請求を管理し、請求される医療費を値下げするよう圧力を加えることになるだろう。
国民皆保険の制度では、患者が医療機関を選んでいた。民間医療保険システムという管理医療の下では、保険会社が医療機関なり医師を指定する。個人は治療を受ける医療機関を選択できなくなる。安くていいものが市場競争では勝つというのは神話である。医療に当てはめれば、安い医療サービスは、病院の維持コストを下げることによって、つまり、病院関係者の数を減らすことによって、そして、肝心の医師の給料を引き下げることによって、要するに、医療内容を著しく下げることによって、可能となるだけの話である。
医師にもいろいろな層がある。高度な医療は提供できないが、いろいろな患者を診ることのできる一般内科医がいるし、一般的なありふれた病気にはタッチせず、高度な技術を要する医療だけに専念する専門医がいる。管理医療体制が始まれば、まず、高度な医療のみを提供する専門医の収入は減るだろう。医療保険の販売価格を安くするために、大手保険会社が契約内容から高度医療を外してしまうことが多いからである。高額所得者対象の医療保険なら専門医の治療を認めているであろう。しかし、すべての患者に必要だと高額治療についても認めていた国民皆保険制度の下に比べると、管理医療システムの下では、高額治療を認められる患者が激減する。
金さえ払えば、どのような高度な治療をも受けられるというのは、一部の金持ちの特権である。貧乏人は顧客として留まることができない。結局、高額医療を提供できる専門医の患者数は総体として減少し、専門医の収入が激減するであろう。
一部の企業のウマミのために、アメリカのように医療格差が生まれ、治療をするのに大金がかかる病気になった時、どうしようもなくなるし、専門医も仕事が減ってしまう。
このような改革は、日本を悪くするだけとしか思えない。
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コメント7件
匿名 | 2007.11.12 19:45
コメントありがとうございます。
>通貨発行権の問題はアメリカの歴史と切り離せない重大なテーマですね。
仰る通りです。とりわけ戦後は、FRBが発行したドル紙幣の価値を維持するためにどうするかが、アメリカの外交政策を規定していると言っても過言ではありません。
>ベンジャミン・フランクリンも、独立革命の主な目的は英国王と国際資本家の手から通貨発行権を取り返すことだったと言ってますね。
これは初めて知りました。貴重な情報をありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
本郷猛 | 2007.11.12 19:45
コメントありがとうございます。
>通貨発行権の問題はアメリカの歴史と切り離せない重大なテーマですね。
仰る通りです。とりわけ戦後は、FRBが発行したドル紙幣の価値を維持するためにどうするかが、アメリカの外交政策を規定していると言っても過言ではありません。
>ベンジャミン・フランクリンも、独立革命の主な目的は英国王と国際資本家の手から通貨発行権を取り返すことだったと言ってますね。
これは初めて知りました。貴重な情報をありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
匿名 | 2007.11.19 3:33
そうなると、日本の造幣局の民営化というのは非常に危険な状況に日本を陥れる、ということになると考えていいでしょうか。
あ~ | 2009.06.10 3:54
>ロン・ポール議員が主張する政府紙幣の発行
一切していません。
それにこそ猛反対しています。
あ~ | 2009.06.25 11:30
>ロン・ポールという下院議員
>政府紙幣の発行を公約にしているらしい。
お願いですからこのデマを訂正してください。ロン・ポールと「政府紙幣」は水と油です。「社会のために(と称して)(政府が)お金を使う」『政府紙幣』に猛反対しているのがロン・ポールです。戦費をあがなうために、政府紙幣を刷ったリンカーンを全く評価していません。
hermes bags light coffee | 2014.02.02 20:51
hermes xxl 日本を守るのに右も左もない | 社会のためにお金を使う、それを実現するのが国家紙幣
sawarabi24 | 2007.11.11 22:16
ロン・ポールで検索してこちらにたどり着きました。
通貨発行権の問題はアメリカの歴史と切り離せない重大なテーマですね。ご存じのようにリンカーンだけでなくケネディも政府紙幣を発行しています(その後すぐ暗殺され、後任の大統領が発行を止めましたが)。ベンジャミン・フランクリンも、独立革命の主な目的は英国王と国際資本家の手から通貨発行権を取り返すことだったと言ってますね。私はMoney_As_Debt という動画で知りました:
http://video.google.com/videoplay?docid=-446781510928242771&hl=en
ロン・ポール候補はマスメディアの妨害を受けながらもTV討論では毎回1位です。11月5日には選挙資金キャンペーンでも記録を作りましたね。アメリカ市民社会の底力を感じます。日本にも大きな影響のある問題ですから、彼の主張がもっと知られてほしいと思います。日本語では次の動画が分かりやすいです:
http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=627588