2013年05月26日

新概念を学ぶ11~本能不全に陥った原猿

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前回は『実現論:前史ニ.サル時代の同類闘争と共認機能」から、外圧の変化から哺乳類が適応拡散し、原モグラが原猿へ進化、さらには原猿が樹上を支配するところまで明らかにしてきました。(新概念を学ぶ10~樹上逃避によって自然圧力と種間闘争圧力を克服した原猿
 楽園である樹上世界で豊富な食料を手にし、繁殖していったのですが、そのために原猿は深刻な問題に直面します。

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 前回に引き続き、実現論:前史 ニ.サル時代の同類闘争と共認機能 より引用します。

 そこで、彼らの最強本能たる性闘争=縄張り闘争の本能が問題化する。この本能は、激しい個間闘争によって敗退した大多数の成体が行き場を失って外敵に喰われ、あるいは餓死することを前提にしている。簡単に言えば、大多数が死んでくれることによって調和が保たれる本能である。確かに、半地下(ほぼ地上)であれば縄張り(言わば土俵)から敵を追い出すのは簡単である。しかし樹上には何本もの枝があり、降りれば地上があり、しかも縄張り内には何百本もの樹がある。この様な縄張り空間では、1匹の覇者が多数の敗者を縄張りから完全に追い出すことは不可能である。たとえいったん追い出したとしても、追い出された者は樹上逃避できるので、外敵に喰われることなく大多数が生き残る。そして、生き残っている以上、彼らは常にどこかの覇者の縄張りを侵犯していることになる。敵(=縄張りを持つ覇者)はメスの掠奪は許さないが、縄張り周辺でのエサの掠め取りまでは手が回らない。もちろん、首雄が恐ろしいので、彼らは概ね各縄張りの境界線上にたむろすることになるが、そこでは充分な食糧を得ることができない。

 かくして、樹上逃避機能を獲得したが故に死なずに、かといって縄張りもなく中途半端に生き残ることになった原猿たちは、本能が混濁して終う。しかも彼らは、絶えざる縄張り侵犯による過剰な緊張や怯えや飢えの苦痛など、全ゆる不全感に恒常的に苦しめられることになる。同じ性闘争本能を持つ肉食動物や草食動物がぶつかったのは本能の適応不足=限界であり、それは全ての生き物の本能が孕んでいる限界と同質のものであるが故に、彼らの限界も他の生物と同様に、無自覚のDNA変異によって克服されていった。しかし、原猿がぶつかったのは単なる本能の限界ではなく、絶えず生存の危機に晒され不全感覚が刺激され続けるという意識的な極限状態であり、しかも本能そのものが混濁するという本能の不全(縄張り闘争には勝てないのに、死なずに辛うじて生きている)故に、本能ではどうにもならない(従って本能を超え出るしかない)という未明課題だったのである。

 6500万年前の温暖化より、広葉樹分布が広がり、樹冠を形成するようになると、樹上に登った原猿は大繁殖し、樹上にひしめき合うようようになります。
 樹上には強敵の存在もなく、食料も豊富にあるので、縄張り争いに敗れた弱オスたちも死なずに生き残る状態になってしまうのです。
 ここで、「本能の混濁」が起こるのですが、「本能の混濁」と「本能の限界」はどのように違うのでしょうか。
 「本能の混濁」から新たに見いだされる機能(能力)は後々、人類が誕生する上で必須のものとなっていきます。

 重要なポイントですので、詳しく押さえて行きたいと思います。
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■【本能の混濁】と【本能の限界】の違い
【本能の限界】
●本能を超えた外圧に晒されると、そのままでは死んでしまう状態。

 一般的に生物は常に外圧(外部世界)に対する適応態として存在しています。と同時に、完全なる適応態など存在しないので、全ての適応態は外圧(外部世界)に対する不完全さを孕んでいます。それために、より高い適応を求めて進化を続けています。
 例えば、白亜紀末(約6500万年前)に隕石が衝突し、急速に寒冷化した時期がありましたが、その時代に恐竜は絶滅し、小型爬虫類と哺乳類は生き延びる事ができました。
 このように気候の変化、植生(食料)の変化に対して、無自覚のDNA変異によって肉体改造する等の進化を遂げれば生き残り、そのままより高い適応が出来なければ、その種は絶滅します。(進化の形態は様々ですが)
 本能にとって、課題が明確であれば(ex.肉体改造することによって、気候の変動、植生(食料)の変化に対応する)、混濁せずに新たな可能性に収束して進化することが出来るのです。
 また、同じ性闘争本能を持つ草食動物のウマ・シカ・ウシ等は、親和本能を強化して集団化し、外敵に対抗し、生き延びました。このように、外観上の変化だけでなく、本能の行動様式を変化させて「本能の限界」から適応(進化)した事例も存在します。
 
【本能の混濁】
●本能では行動の判断基準が示せない状態。

 一般動物の外圧は自然や外敵ですが、原猿の場合は同類どうしの闘争(同類闘争)で、且つ首雄(縄張りを持つボス猿)vs個々の弱オスの闘いが主な外圧です。
 この闘いは、性闘争本能上の淘汰適応(強い個体のみ生き残る結果、種全体が強くなる)に則って行われるものですが、樹上逃避(3次元で逃げられる)でき、食料も死なない程度にあるので、生き延びてしまう状態に陥ってしまいます。
 この問題を解決するために、例えば無自覚のDNA変異によって肉体改造しても、同類闘争ですので(相対的な強さは変わらないので)、結局は同じ状態になります。
 また、他の哺乳類のように敵が同類なので簡単に集団化も出来ません。
 このように、本能では問題解決方向が見いだせない、つまり「本能の混濁」状況に追い込まれてしまうのです。
以上、まとめると、
【本能の限界】
●本能を超えた外圧に晒されると、そのままでは死んでしまう状態。

・限界状態となる時の外圧は、自然外圧or外敵闘争圧力。
・種全体が消滅しないためには、進化(無自覚のDNA変異で肉体改造等)して生き延びる。
・本能の足りない部分が明確であり(ex.逃げ足が遅い。力が弱い。気候変動に耐えられない等)、可能性収束先が明確。
【本能の混濁】
●本能では行動の判断基準が示せない状態。

・混濁状態となる時の外圧は、同類個間闘争圧力。
・淘汰適応を激化するためにできた性闘争本能の根幹は負けたら死ぬのが定めだが、樹上逃避(3次元で逃げられる)でき、食料も死なない程度にあるので、生き延びてしまう。
・本能の足りない部分が不明確であり、どこにも収束先が見つからない。
※【本能】:外圧に適応するための諸機能。
 一方、原猿の弱オスたちは「本能の混濁」状態に陥りますが、絶えず弱オス達に縄張り侵犯される首雄(縄張りを持つボス猿)はどのような状況なのでしょうか。
 
■首雄の状態は【本能の限界】なのか【本能の混濁】なのか
 性闘争本能を強化した哺乳類は、繁殖期には、縄張り・メスをめぐって激しく闘いをする種も多いですが、繁殖以外はお互いの縄張り境界をマーキング(臭い付け)をして、縄張り侵犯しないように無益な争いはしないようにしています。
 しかし、偶然に鉢合わせた時には、当然のことながら争い、追い払う行動を行います。(参考:魚類、両生類、爬虫類の性闘争と哺乳類の性闘争■ 現在のモグラの生態)
 原猿の首雄は絶えざる縄張り侵犯によって、過剰緊張状態にあったと思いますが、侵犯してくる敵を撃退するのは、頻度が高いといえども本能の行動様式に乗っ取って追い払っているだけなので、本能が機能不全を起こしてはいないと考えられます。
よって、当時の原猿の首雄の置かれた状況は「本能の混濁」にではなく、「本能の限界」状態と言えるでしょう。
 
 かくして、【本能の混濁】に陥った原猿弱オスたちは、その状態を脱するためにどのように適応・進化していったのでしょうか。
 困難な状況に陥った当時の原猿は現在も生息していますし(多少、姿かたちは変わっていますが)、原猿から真猿・人類に進化して新たな機能を見いだし、進化してきたのは事実です。
 次回は、その後の原猿の状態とその進化のしくみをさらに詳しく紹介していきたいと思います。

List    投稿者 ginyu | 2013-05-26 | Posted in 未分類 | No Comments » 

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