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【世界の力を読み解く】~なぜ中央アジアが世界覇権獲得の要となるのか?~

最近では、ウクライナ東部をめぐるロシアと西洋諸国との対立が日々ニュースとなっています。
実力主義社会・民族自決の社会を目指す大国ロシアと、従来の資本主義社会・市場主義社会を貫かんとする西洋諸国との争いがいよいよ激化してきました。
西洋諸国と相対するのは、ロシアに加えて中国。そんな大国が今、自国の勢力図に加えようとしているのが、中央アジアです。

【世界の力を読み解く】シリーズでは、アジア中央部を土俵に繰り広げられる世界の覇権争いに着目をして記事を書いてきました。(過去記事1 [1]過去記事2 [2]

中央アジアを構成するのは、ウズベキスタン,カザフスタン,キルギス,タジキスタン,トルクメニスタン、そしてアフガニスタン。(アフガニスタンは、米軍撤退のニュースも記憶に新しいですね。
※ちなみに、「スタン」というのはペルシア語で「土地」の意味で、カザフスタンは「カザフ人の土地」という意味。アフガニスタンは、アフガン人の土地。といった感じです。

一方で、それ以外の国のことはなかなかニュースには出て来ません。
そんな国々が集う地域になぜ大国が注目しているのか。この地域にはどんなポテンシャルがあるのか。
なぜ世界覇権獲得の要となるのか?その真意に迫ります。

中央アジアの中でも今回着目したいのは、『カザフスタン』です。
日本ではあまり報道されませんでしたが、今年に入ってからデモ隊による暴動で多数の死者が出るなど混乱しているように見える国でもあります。
なかなか日本人には馴染みが薄いカザフスタンですが、実は国土面積が世界第9位と広大な土地を持つ国でもあります。※日本の約7倍!(グーグルマップ [3]
一方で、人口は1900万人ほどと、東京都と千葉県の人口を合わせた程度です。
ではなぜこの国がそれほど重要なのか?その秘密は彼らの持つ資源と立地にあります。

 

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アフガニスタンの立地(写真:世界史の窓 [5] より)

〇資源の国カザフスタン

カザフスタンにとっての主要産業、その一つが「ウラン」です。なんと世界一位の生産量を誇っています。
言わずもがな、ウランは原子力発電の燃料。原子力発電を推進する国にとっては貴重な原料供給国としての地位を保持しています。
そんなカザフスタンが生産するウランのうち半数以上は中国へ輸出しています。
さらに昨年は、ロシアの原子力公社との交渉にも入り、鉱物輸送のための船舶建造にも着手している。
カザフスタンの資源を、ロシア・中国が技術力で形にし、世界のエネルギー覇権・軍事力覇権を握ろうとしているのです。

〇中露にとってのカザフスタン

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一帯一路構想ルート(写真:朝日新聞デジタル [7]より)

中露の役割分担が進む中央アジア るいネット [8]より引用
>2022年1月、カザフスタンで起こった一連の混乱に対しても、露中両国は封じ込めの方向で利害が一致した。ただここでは「反テロ」という観点もあるものの、「カラー革命」の動きを鎮圧する方向で認識を共有した。1月6日、ロシア主導の軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)が部隊派遣を決めると、中国も鎮圧を支持する態度をとるようになった。

>結果的にロシアの行動は、カザフスタンの主権尊重という条件付きながら、中国の支持を取りつけた。ここで重要なことは、中央アジアを自国の勢力圏と見なすロシアが、カザフスタンにおける自らの影響力を中国に認めさせたことである。かつてロシアの裏庭とも言われた中央アジアには、近年中国が経済面で、そして一部安全保障面でも進出しつつあったが、今も安全保障面ではロシアが影響力を持つこと、また中国もそれを認めざるをえないことが明らかとなった。

>2021年後半から2022年の年初にかけて立て続けに起こった以上の2つの事案を経て、ロシアと中国は一層の協力関係に入ったように見える。この2つの事案は何を露中共通の脅威と見なすかにおいて多少の違いがあるが、「テロリスト」であれ、「カラー革命」を引き起こす勢力であれ、共通の脅威に対する共闘という文脈がますます強調されることとなった。

中国から見ると、新疆の安定に直結するアフガニスタン、カザフスタン情勢に対処する上で、ロシアが不可欠な存在であることが改めて明らかとなった。中国にとって、安全保障面での共闘者として、ロシアのプレゼンスは否応なく高まったと言えよう。
==引用終わり==

〇バランス感覚に長けた国家運営 FISCO [9]より引用

>カザフスタンの基本戦略は、ロシアを安全保障のパートナーとして喜ばせ、国内にいるスラヴ系住民を反乱(そしてロシアを招き入れ)させない程度に落ち着かせ、中国との経済を深めて、他の中央アジアの経済より上を行く成長を確保することが命題であろう。これの命題に沿ってこれまでの行動を見れば、今までのカザフスタンのバランス感覚は本物であることが見える(もちろん、ヌルスルタン・ナゼルバイエフ大統領の独裁体制抜きでは語れないが)。

>カザフスタンは上記の情勢のため、ロシアと中国の地政学的な動きに左右されてしまい、非常に面倒なバランス行動を取る必要がある。実際、ロシアと中国の影響力を巡る戦いは、印象としては現在ロシアが比較的中国に好きにさせているとしても、今後問題になることを想像することが難しくない。第三者、例えばアメリカがこの地政学的なパワーバランスに入って、カザフスタンを使用してロシアと中国の中央アジアにおける影響圏の計算を狂わせようとすることを考えたら、更に複雑になることも想像に難しくない。今後、カザフスタンと同国を巡る動きに注目することで、大国の思惑が見えると思われる。
==引用終わり==

以上のように、資源のポテンシャル・地政学的ポテンシャルがあることがわかりました。
カザフスタンをはじめとし、中央アジア各国のポテンシャル・政治的な動きを読み解くことで、大国の動きを解明していくことができます。
次回も更に、中央アジアの動きに深く迫ります。

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